【書評:1970冊目】地政学が最強の教養である(田村耕太郎)

【中国の隣で、このまま貧して老いるのか】
国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院兼任教授・田村耕太郎氏が、『地政学が最強の教養である』と題して、今こそ日本人に理解してほしい”地政学”を講義する一冊。

■書籍の紹介文

日本の地政学上のリスクを述べよ。
あなたはこの問題にスラスラ解答できますか?

 

本書は、世界中の出来事を理解するのに『地政学』ほど役立つものはないと提起し、厳しい情勢の今こそ、日本人に最低限理解してほしい『地政学』の基本を講義する一冊。

 

ひさしぶりにググッググッと引きつけられた本。
352ページをノンストップで、一気に読みきってしまいました(良い本はいつもこうさせてくれます!)。

 

日本は、アメリカ・中国・ロシアに囲まれた島国です。
しかも、長期の経済停滞、回復不能とまで言われる少子高齢化社会と、国の内側は危機的状況です。

 

そのなかで、わたし達日本人はどう生きていけばいいのか。
いや、生き残っていけばいいのか、そもそも、生き残っていけるのか。

 

この極めて困難な問題に立ち向かう武器として、『地政学』の教養を直ちに深めよ!
そう、熱量を最大にして著者が説くのが本書です。

 

ロシアによるウクライナ侵攻のゆくえも・・・
中国による台湾侵攻の可能性も・・・
いざというときアメリカは日本を守ってくれるのかも・・・

 

こうした気になる問題に対しても、地政学が身についていれば、自分の頭である程度正確に予測することができる。
『地政学』を知ることは、未来を予測するツールとして最適だと著者はいいます。

 

もちろん、最適だというだけで、完璧だとまではいっていません。
『地政学』は、未来に起きることを予測できるが、それが”いつ”起こるかまでは現状予測できないのです。

 

この点は、地震予測に似ていると感じます。
南海トラフ地震や首都直下地震は、近い未来に必ず起こると予測されていますが、”いつ”かは分からないのと近いでしょう。

 

大切なのは、予測できれば準備や対策が見えてくるということ。
将来確実に起こるのだから「今何をすべきか」を、高い解像度で考えるツールとして『地政学』は最強のツールだと著者は示します。

 

「またか、この地域は紛争がなくならないね」と他人事にコメントしても意味はありません。
なぜそこで起こるのか、なぜ何度も起こるのか、日本への自分への影響はないのか、と深掘りしてこそ、自分の知恵になっていくのです。

 

読み進めるごとに、世界のニュースから感じるモヤモヤが晴れていく感覚。
ぜひあなたにも感じていただき、『地政学』の教養を深めていってください。

 

◆この一冊はオススメ!

地政学が最強の教養である
田村耕太郎 SBクリエイティブ 2023-1-6
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■【要約】15個の抜粋ポイント

●地政学が最強の教養である理由
(1)世界情勢の解像度が上がる
(2)長期未来予測の頼もしいツールになる
(3)”教養”が身につく
(4)視座が変わる・相手の立場に立てる

 

あらゆる観察対象には、白も黒も同時に存在するのだ。
光と影があって立体的に物事が見えるのだ。
引力と遠心力が作用して今の場所にあるのだ。
白か黒か、竹で割ったような見方は絶対にしてはいけない。
この考え方を「オクシモロン(oxymoron)」という。

 

地政学とは「その国の元首となる”ロールプレイングゲーム”」である。
そして、「その国のトップの考え」に影響を与える要素に「地理」とその他「6つの要素」がある。
つまり、「『地理』と『6つの要素』にその国の条件を入れ込むことで、『その国のトップの考え』が決まる思考の枠組み」が「地政学の思考法」だ。

 

●地政学の思考法”6つの要素”
①気候
②周辺国
③民族性
④産業
⑤歴史
⑥統治体系

 

●「島国」の地政学の基本
基本1:守りやすく、攻められにくいが、兵糧攻めにあいやすい
基本2:まず一度はランドパワーとして成長する
基本3:ランドパワーを経てからシーパワーになる
基本4:政治リーダーは内政問題を重視する傾向がある

 

世界経済フォーラムも認めたように、日本の観光力は世界一なので外国人観光客の受け入れから外貨を稼ぎ、多様性に慣れていってほしい。
国を開いて外国人を取り入れていくしか日本が国力を取り戻す現実的な手法はない。
数学的生物学的に見て、オーガニックな人口増加(純粋な日本人による人口の自然増)は望めないのだ。

 

●「内陸×大国」の地政学の基本
基本1:厳しい気候の広い国土が恐怖と苦労を助長する
基本2:少数民族封じ込めのためにも強権的になる
基本3:一度侵略したら独立させられないワケ

 

中国政府が台湾への作戦で最優先すべきは、犠牲者を最小限に抑えることだという。
「戦わずして勝つ」くらいの情勢にしないと中国は台湾侵攻に踏み切れないと言われる。
またはサイバーやドローンを中心に戦闘員をできるだけ使わず、成果を出す作戦に集中すると言われる。
当然だが、中国政府も国民感情の変化は十分に理解している。
その結果、以前のようにそう簡単に戦争を仕掛けることはできない。
一人っ子政策が軍事作戦にまで影響を与えるという興味深い事例である。

 

スンニ派とシーア派の間には宗教的対立はない。
「誰をムハンマドの後継者とするのか」についての考え方の違いだけである。
キリスト教のカトリックとプロテスタントのような教義対立はないのだ。
(略)
覇権争いや石油利権争いの政争に、両派が派閥として利用されているだけである。

 

地政学的にはインドもシーパワー。
シーパワー同士は相性がいいと言われている。
「遠交近攻」の理論から考えても、日本とインドは地政学的に組みやすい。
中央集権的な強権国家ではなく、両国とも自由民主主義国家であることも、ビジネスを進めやすいだろう。

 

ASEAN市場の情報集めにはシンガポールが適している。
東南アジア各国の財閥リーダーは簡素で低税率でかつ教育や医療が優れているシンガポールに居住している人が多い。
現地に行かなくともシンガポールで東南アジア各国の財閥とビジネスの話ができる。

 

地政学に大きな影響を与えるのは地理だけではない。
「地理が変われば気候が変わる」と説いてきたが、地理が変わらなくても気候が変わる時代が来るからだ。
それをもたらすのは「気候変動」だ。
気候変動の研究者に言わせると、今の地球の気候変動は下手をしたらそのフィードバックシステムが機能しないほどの破壊力を持つかもしれないとも言われる。

 

地政学は世界の未来の方向を読むのにとても役立つが、絶対の運命ではない。
それを乗り越える術はある。
国家は人でできている。
一人一人が違う地政学上の制約を受けながら育ってきた人々について、さらに深い理解ができた時に、地政学を乗り越え始められるのではないかと私は信じたい。

 

国力を落とせば、ユーラシアのランドパワーに囲まれる我が国の地理的条件からして、深刻な安全保障問題に直結するのだ。
国家の存亡に関わると言っても過言ではない。
ビジネスどころではなくなるかもしれない。
今だからこそ、日本のビジネスリーダーたちに「ジャングルの掟」を学んでほしいと思う。

 

「世界の多くの国は自国の課題を認識できず窮地に陥る。日本は違う。優秀だから政府も国民も、課題も解決策も全部わかっている。なのに、誰も行動を起こさない。それがとても残念だ」(リー・クアンユー/シンガポール初代首相)

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1970-1】地政学を継続して勉強する

【1970-2】気候変動に関する情報への感度をあげる

【1970-3】白黒付けようとせず、相手の主張をきちんと聞く

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】地政学が最強の教養である
【著者名】田村耕太郎著者情報
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2023/1/6
オススメ度★★★★★
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養グローバルリーダー
【頁 数】352ページ
【目 次】
第1章 なぜ地政学が最強の教養なのか?
第2章 「地政学の思考法」を授けよう
第3章 「島国」の地政学 アメリカ・日本
第4章 「内陸×」の地政学 中国・ロシア
第5章 その他の地政学
第6章 未来の地政学
第7章 日本がやるべきことは

 

▼さっそくこの本を読む

地政学が最強の教養である
田村耕太郎 SBクリエイティブ 2023-1-6
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田村耕太郎さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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