【書評:1981冊目】教養としてのコーヒー(井崎英典)

【コーヒーと日本文化の相性は完璧だった?】
世界的バリスタ・井崎英典氏が、『教養としてのコーヒー』と題して、コーヒーは歴史を動かしてきたと提起し、つぎの一杯がもっと美味しくなるコーヒーの世界を解説する一冊。

■書籍の紹介文

コーヒー。
あなたにとって、どんな存在ですか?

 

本書は、『コーヒーは歴史を動かしてきた』と提起し、コーヒーの起源から現在に至るまでの拡がりを明かしながら、飲むだけではない”コーヒーの教養”を解説する一冊。

 

コーヒーを一杯淹れて飲む。
香りに癒される感覚、口に運んで「ホッとする」感覚、飲み終わりの気持ちが落ち着く感覚。

 

これは世界共通の嗜好である。
人種、宗教、政治、国籍、言語などの理屈なしに、共通の安らぎを得ている。

 

コーヒーは、それだけ大きな力を宿している。
このことを、コーヒーの起源から紐解きながら、知っておきたいコーヒーの教養にまとめて解説していきます。

 

・コーヒーの貿易取引総額は、石油に次いで2番目に多い
・コーヒー、紅茶、ココアを合わせて、世界三大嗜好飲料と呼ぶ
・保険の仕組みは、コーヒーハウスから生まれた
・日本は、消費量世界4位のコーヒー大国である

 

こうした、社会人として知っておきたい知識的な教養から。

 

・コーヒーの果たす役割は「精神の解放」にある
・おいしい一杯の欲求が「学ぶことの楽しさ」を教える
・コーヒーの未来を考えることは「違いを生む力/違いを乗り越える力」を養う

 

このような、コーヒーを嗜むことで育まれる内面的な教養まで。

 

コーヒーの奥深さに通ずるかのように、とても読み応えを感じる一冊に仕上がっています。
初心者でもできる「おいしい一杯の淹れ方」まで収録されていて、満足度も高いです。

 

もちろん、ビジネス面の情報もびっしりと詰まっています。
コーヒービジネスを通して、現在のビジネスの問題点、今後のトレンド、将来の可能性までを鋭く示しています。

 

嗜好の一環としてコーヒーの世界を広げたい人。
ビジネスとしてコーヒービジネスのヒントが欲しい人。

 

どちらの切り口から入っても、期待を裏切らない濃い内容の一冊。
お気に入りの喫茶店で、コーヒーを嗜みながら楽しんでください。

 

◆茶道に通ずるコーヒー道。

教養としてのコーヒー
井崎英典 SBクリエイティブ 2023-3-1
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■【要約】15個の抜粋ポイント

コーヒーノキはエチオピア原産で、やがて対岸のイエメンに渡ったと考えられます。
実はコーヒー文化が花開き、それを広めたのは、エチオピアではなくイエメンを含むアラビア世界でした。
アラビア世界には文字があったので、コーヒーの利用についての記述も確認できるのです。
もともとコーヒーノキが自生していたエチオピアで、文献には残っていないだけで実はコーヒーが飲まれていたのか、あるいはコーヒーノキが伝播したイエメンで初めてコーヒーという飲み物があらわれたのか。
難しい議論で、それゆえにコーヒー発祥の地はエチオピアともイエメンとも言われています。

 

16世紀初頭になると、コーヒー専門店「カフェハネ」がイスラム教の聖地、メッカに登場します。

 

17世紀になると、コーヒーはついにヨーロッパへと伝播します。
17世紀初頭には、地中海を通じてアラブ世界と交易を行っていたイタリアのヴェネツィアに伝わったとされています。

 

インドを中心にイギリスのアジア貿易を担った東インド会社が、当地の茶に関心を寄せた影響で、イギリス国内で大々的にお茶が宣伝され、イギリスは紅茶文化に置き換わっていったのです。
イギリス本土が紅茶文化に置き換わっていく一方、イギリスのコーヒー文化の性格を残したのが、イギリス移民が開拓したアメリカです。

 

近年の世界の国別消費量を見ると、1位EU、2位アメリカ、3位ブラジルに次いで4位が日本です。
意外なことに、最大の産地ブラジルや、コーヒーを歴史的に楽しんできた欧米に続いて、日本はコーヒーの一大消費国なのです。
日本に初めてコーヒーが入ってきたのは江戸時代初期と言われています。
鎖国中の1640年代に、長崎の出島にオランダ商人によってもたらされたという説が有力です。

 

「焙煎した豆から抽出したコーヒー」の飲み方の元祖は、トルコ式コーヒー(ターキッシュコーヒー)です。
オスマン帝国でコーヒーが広がり始めた16世紀初頭にその製法が確立されたようで、現地での実態は17世紀フランスでも伝えられています。

 

ドリップコーヒーには茶道や禅に通じるところがあると思っています。
ドリップでコーヒーを淹れる動きには、儀式的な要素を感じることができるからです。
飲む前にゆっくりと決まった動きをすることで、心が落ち着き、目の前のものに集中できるのです。
スーフィーの儀式での使用、コーヒーハウスでの自由闊達な議論などの歴史を見ても、コーヒーの本質的な価値は「精神の解放」にありました。
日本のドリップ式コーヒーは、カフェインの覚醒作用に加えて、面倒な手順を追うことで精神の解放に到達できる貴重な体験だと考えています。

 

アイスコーヒー同様、コーヒーゼリーも日本で生まれたものとされています。

 

コーヒーノキ栽培に最適なエリアは、赤道をはさんで北緯25度〜南緯25度の熱帯・亜熱帯で「コーヒーベルト」と呼ばれています。

 

●コーヒーの一般的な分類
・スペシャルティコーヒー:品質が最も高い
・プレミアムコーヒー:比較的品質が高い
・コモディティコーヒー:大量生産型の一般流通品

 

日本のコンビニコーヒーのクオリティは、バリスタの私から見ても素晴らしいです。
100円で提供できるなんてありえないレベルです。
海外にも安いコーヒーはありますがクオリティが違います。
美味しいプレミアムコーヒーがこの安さというのは見たことがありません。

 

コーヒーを味わう体験をプロデュースできることがバリスタの価値になるはずです。
コーヒーは高い豆を使えば美味しいというわけではありません。
焙煎、抽出、パッケージ、コーヒーカップ、味わう空間や環境などによって、体験が変わるはずです。
それらを適切に編集することができる人であるべきだと思うのです。

 

思うに、「なぜ」に答えられないプロはいないと思うのです。
楽しいから、美味しいコーヒーを淹れたいからというだけなら、アマチュアです。
一流は、自分がなぜそれをよいと思うのかを言語化できます。
だから他人にも伝わり、評価されるのです。

 

これからの時代に求められるのは、「よいものに適切な付加価値をつけて売る努力」だと思っています。
良質なコーヒーは今後収穫量が下がり、価格も上昇するかもしれません。
だからこそバリスタは、高品質な原材料を素晴らしい技術、接客、空間演出を持って美しく提供する努力をしなければいけないと思っています。

 

コーヒーを突き詰めるあまり、水に帰ってくる。
取るに足らないと思われているものにこそ気を使う。
これこそが「コーヒー道」の精神ではないでしょうか。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1981-1】バリスタが経営するコーヒー店を探訪する

【1981-2】(自分の仕事に置き換えて)適切な付加価値をつけて売る努力のために必要なことを書き出す

【1981-3】「なぜ?」と徹底的に突き詰めて考える

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】教養としてのコーヒー
【著者名】井崎英典著者情報
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2023/3/1
オススメ度★★★★☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養働き方ビジネスモデル
【頁 数】256ページ
【目 次】
はじめに できる人はどうしてコーヒーなのか
第1章 コーヒーをたどると世界史が見える
第2章 コーヒーの飲み方の奥深い歴史
第3章 コーヒーが届くまでの裏側
第4章 知る人ぞ知るコーヒーの現在
第5章 コーヒーが教えてくれるビジネスの心得
おわりに コーヒーの未来
付章 コーヒーの嗜み、まずはここから

 

▼さっそくこの本を読む

教養としてのコーヒー
井崎英典 SBクリエイティブ 2023-3-1
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井崎英典さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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