【書評:2040冊目】行動経済学が最強の学問である(相良奈美香)

【今、もっとも身につけるべきビジネス教養】
「行動経済学」博士・相良奈美香氏が、『行動経済学が最強の学問である』と題して、バラバラだった主要理論を3つに分類・体系化させて、有機的に行動経済学を解説する一冊。

■書籍の紹介文

行動経済学。
どんな学問か想像がつきますか?

 

本書は、ごく少数しか日本にいない「行動経済学」博士課程取得者である著者が、主要理論を3つに分類・体系化しながら、身につけたい行動経済学の本質と活用方法を解説する一冊。

 

『人間の「非合理な意思決定メカニズム」を解明する学問』。
行動経済学をひと言で説明すると、このようになります。

 

噛み砕くと、「なぜ、人はそう行動してしまうのか?」を理解する。
そのうえで、対策を講じたりビジネスに活用したりするための学問ということです。

 

いくら気をつけていても、「なんでやっちゃうの?」という失敗をよくしてしまいますよね。
ダイエット中なのにガッツリ飯を食べちゃったり、冷静になれば必要性がないモノを衝動買いしてしまったりなど・・・。

 

「意志が弱い」「ダラしない」などと自分を責めてしまう人もいるかもしれません。
ここへ「なぜなんだ?(どうして非合理な判断をしてしまうのか?)」と学問的に切り込んでいくのが行動経済学です。

 

行動経済学の観点から見ると、「非合理な意思決定メカニズム」には次の3つの要素が影響しているとされています。
◎認知のクセ
◎状況
◎感情

 

この3つの要素が影響し合うことで、人の非合理な判断は起こってしまいます。
裏を返せば、各要素やその影響を解明することができれば、「なぜ?」の答えに近づけるわけです。

 

これらを解明するために、行動経済学ではさまざまな理論が導き出されてきました。
しかしながら、まだまだ新しい学問分野のため、各理論が整理、体系化されていないというジレンマを抱えている状況です。

 

ここへ野心的に切り込み、行動経済学の主要な理論たちを、3つの要素ごとに分類して体系化を試みたのが著者。
そして、見事に試みを成し遂げてまとめあげたのが本書です。

 

たくさんの関連本が出版されて、日本でも注目が高まっている行動経済学。
ただ、主要理論だけでもかなりの数であるため、体系化されていない状況で学ぶのは困難をきたし、挫折した方もいることでしょう。

 

そんな方に、「ようやく用意された!」一冊といえるでしょう。
日本でも数少ない「行動経済学」博士課程取得者である著者が、見事に体系化してくれています。

 

行動経済学を学びたい人にとって、まさに”ガイド”となる完成度だとおもいます。
体系化されることで、本質が見えやすくなり、軸ができるのでブレることなく学習を深められます。

 

今、アメリカを中心にビジネス覇権を競う巨大企業がこぞって、行動経済学博士取得者をかき集めているとのこと。
つまり、今もっとも学ぶべき”ホットな”ビジネス教養こそ「行動経済学」だといえます。

 

「人の非合理な行動」を理解することができれば、個人でもビジネスでも活用範囲は無限です。
自分を、ビジネスを、社会を、よりよい方向へとつながる流れに乗せられるようになるからです。

 

よい流れは積極的につくり、わるい流れの渦には巻き込まれないように。
「行動経済学」という教養を、この機会に身につけましょう!

 

◆学びごたえのある良書。

行動経済学が最強の学問である
相良奈美香 SBクリエイティブ 2023-6-2
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■【要約】15個の抜粋ポイント

人間とは「非合理な行動(意思決定)」ばかりをしてしまう生き物。
そんな「非合理な人間が、なぜ非合理な行動をしてしまうのか」を理解するのが、行動経済学です。

 

人がついつい「非合理な意思決定」をしてしまうメカニズムには大きく3つの要因があります。
それが「認知のクセ」「状況」「感情」です。
この3つがあるからこそ、私たちは合理的ではない判断をしてしまうのです。

 

人間の脳は、情報処理をする際に2つの思考モードを使い分けていて、それを「システム1vsシステム2」と呼びます。
システム1は直感的で瞬間的な判断であることから「ファスト」、システム2は注意深く考えたり分析したりと時間をかける判断であることから「スロー」とも呼ばれます。
「認知のクセ」を生む理論のうち、最も基本となるのがこの「システム1vsシステム2」です。

 

消費者や従業員など対象となる人間を理解しようと思ったら「考察」には限界があります。
それよりも、「観察」をすることが大事です。
はたからこっそりと見て、人が無意識にどんな行動をしているかを知るのです。

 

脳、身体の他に人の意思決定に大きな影響を及ぼすのは、「時間による認知のクセ」です。
時の流れは一定であり、合理的に考えれば1日は24時間。
今日と明日は同じ価値です。
ところが人間には認知のクセがあり、時間についても非合理的な解釈をします。
(略)
人間には「今」により重点を置いて「将来のこと」が考えられない「現在志向バイアス」があり、さらに矛盾する非合理な性質が「双曲割引モデル」です。
双曲割引モデルは「近い将来を考える際は、少しの時間の差も気になるが、遠い将来を考える際は、時間の差が気にならない」というもの

 

人間は「自分で主体的に意思決定している」と思いたがるが、実は周りの状況に「決定させられている」場合が多い。
天気の良し悪しや周りに人がいるか否か、物や人の位置や順番など、まさか関係ないだろうと思っていることが、我々の判断に大きく影響を与えている。

 

「多すぎる情報は、人を疲れさせ、意思決定を妨げる」のです。

 

選択肢が多いほうが人は集まりやすい。
しかし、多すぎると今度は選択オーバーロードになり、どれも選べなくなってしまいます。

 

時間帯による変化を踏まえて、「ネット広告の時間帯」を考慮することも有効です。
例えば、住宅や自家用車、保険といった高額で慎重に考えて購入するものについては、人はシステム2で慎重に吟味するので、脳にエネルギーのある「朝」や「ランチ休憩」の後に配信する。
逆にファストフードの新製品や衝動買いを狙うファッションアイテムは、直感的に「ほしい」と思わせることが重要なので、消費者の脳が疲れている「夕方」から「夜」がいいとされています。
ついつい夜遅くにネットショッピングで無駄遣いしてしまうのもそうでしょう。

 

ほんの一瞬よぎる微妙な感情を、行動経済学では「アフェクト」と呼んで、「エモーション」とは分けて考えます。
というのも、人は頻繁に「はっきりとした感情」を抱くわけではないし、むしろ日々の生活の中で「淡い感情」を抱く機会のほうが多いからです。
ですから、感情が意思決定に与える影響を考える際には、より影響を与える頻度の高い「アフェクト」を理解する必要があるのです。

 

微々たるアフェクトでもかなり意思決定が左右されるので、自分でも普段仕事に関わっている単語を思い浮かべ試してみてください。
ポジティブならば、やる気が出て早く取りかかると思います。
一方、ネガティブならば、憂鬱な気分になって、できるだけ後回しにしようとするでしょう。
このように、アフェクトが意思決定に作用し、実際の行動にまで影響していることを実感できると思います。

 

行動経済学の観点から見た「幸せになるお金の使い方」を見ていきましょう。
(1)経験を買う
(2)稀なご褒美にする
(3)時間を買う
(4)先払いする
(5)人に投資する

 

自分の「心理的コントロール」を高めることは、仕事の満足度、幸福度を高める効果があり、また部下の心理的コントロール力の感覚を高めることにより、部下の頑張りやコミットメントを高め、さらに離職の防止にもなります。

 

自己理解と他者理解が深まれば、自分や他人がどのように意思決定をし、それがどう行動につながるかが分かります。
それを生かして、ビジネスや私生活でも自己を高めるために役立てられるでしょう。
さらに、「これからの世界で自分はどのように生き抜くべきか」という哲学的な課題にも、取り組めるようになるでしょう。

 

「どう改善すべきか」と対策を考える前に、「なぜそうなっているか」、人間の意思決定と行動を理解しなければならないということです。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2040-1】自分の「認知のクセ」を分析する

【2040-2】「なぜその行動をするのか」と顧客の消費行動をよく観察する

【2040-3】趣味や余暇などの消費は、「経験を買う」ことを意識してお金を使う

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】行動経済学が最強の学問である
【著者名】相良奈美香著者情報
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2023/6/2
オススメ度★★★★★
こんな時にビジネス理論を深めたいときに
キーワード行動科学教養ビジネス理論
【頁 数】368ページ
【目 次】
序章 本書といわゆる「行動経済学入門」の違い
第1章 認知のクセ
第2章 状況
第3章 感情

 

▼さっそくこの本を読む

行動経済学が最強の学問である
相良奈美香 SBクリエイティブ 2023-6-2
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相良奈美香さん、素敵な一冊をありがとうございました!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

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