【混迷の時代こそ意見の出し合いが急務】
コミュニケーションデザイナー・吉田幸弘氏が、『武器としての伝え方』と題して、仕事上の問題は伝え方の改善で解決できると提起し、仕事が円滑になる伝え方のコツを指南する一冊。
■書籍の紹介文
自分の意見を出すこと。
あなたは得意ですか?苦手ですか?
本書は、『言葉は武器にも凶器にもなる』と提起し、人間関係を壊すことなく、山積みのビジネス課題を解決へと導いていく、伝え方という”武器”を指南する一冊。
昭和・平成の時代は、なんとなく「こうすれば」という正解みたいものが通用しました。
だから、気づいたことや意見があったとしても、特に伝えずとも指示に従っていれば仕事は回っていたのです。
しかし、令和の時代はいよいよそれが通用しなくなります。
ビジネス環境が目まぐるしく変わる混迷の時代、指示を出す上司・先輩も、内心は「これで本当に大丈夫だろうか?」「他にいい方法があるのでは?」と不安を大きくしながら戦わざるを得ません。
そんなときに、「その案よりもこちらの方法が有効では?」「その案だとここで躓きませんか?」とあなたが伝えることができたら。
たとえ平静を装ったとしても、上司・先輩(取引先も)は「こ、心強いやつめ!」と喜んでくれることでしょう。
著者も繰り返し述べていますが、「意見」をぶつけ合うことは極めて正常な行為です。
むしろ、盲目的に語らず、上意下達、面従腹背で仕事をする姿勢のほうが異常と捉えるべきなのです。
ただ、これも著者が強調していますが、注意すべきは、SNS上で度々問題になるように、「意見」ではなく「人」を攻撃してはならないということです。
会社組織は人間関係で成り立っていますから、仲間同士で人間面を攻撃し合う事態は組織の破綻につながります。
そうならないためには、「伝え方」のマナーというか作法をきちんと身につける必要があります。
今まで寡黙だった人が、いきなりワァーっと意見を伝えても、周りはキョトンとしてしまうだけです。
思いつくままに伝えても、内容が整理されていないので相手に届きません(行動に移せません)。
やり方を心得ていないと感情に任せた言葉選びになるので、売り言葉に買い言葉の危険性をはらみます。
「あなたは間違っている!」ではなく、「その意見に対しては、私はこういう意見なのですがどうでしょうか?」です。
互いにカードを出し合い、どちらがいいか、または2つを合わせて全く別のカードを編み出すか、煮詰めていく行為が「伝える」ということなのです。
カードゲームで、配られたカードを一向に出さない人がいたら困りますよね。
それと同じで、自分のカード(意見)をきちんと出し合い、皆で勝負に勝てる最強のカード(案)を編み出すことが、一層重要な時代に突入しているのです。
ゆえに、ひとり一人が「伝え方」を身につけ鍛えることが急務です。
本書を参考に、「伝え方」を”武器”へと磨いていきましょう。
◆あなたの意見を仲間が求めている。
武器としての伝え方
吉田幸弘 自由国民社 2023-7-7
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■【要約】15個の抜粋ポイント
何となく「自分が一番伝えたいのはこれだ」と考えるだけでなく、「相手にどうなってほしいのか、どう動いてほしいのか」という観点で結論を決める必要があります。
「どう動いてほしいのか」が抜けてしまうと、聞き手は「それで、何が言いたいの?」となってしまいかねません。
相手に伝わらないのは、伝える内容が間違っているのではなく、伝える順番が間違っているからです。
状況・行動を時系列に描写していくと、相手はかえって何だか理解しづらくなる。
「いったい何を言いたいのか?」となってしまいます。
時系列ではなく重要度の順に話しましょう。
わかりにくい伝え方になる要因の多くに「伝える側の心の乱れ」があります。
わざわざ口頭で全部伝える必要はありません。
「読めばわかる」場合は、説明しなくてもいいのです。
後で詳しく見るために資料はあるのです。
「念のために」が癖になっていませんか?
「念のために」とリスクを恐れて伝えることを増やすたびに、かえって相手に伝わらなくなります。
そもそもあなたはいつでも10伝えられたら困りませんか?
説明しない勇気を持ちましょう。
解釈が複数以上ある、曖昧な表現は伝える時は避けるべきです。
もし正確に動いてほしいなら1通りの解釈しかできないものにしましょう。
(例)
「新規開拓を徹底しよう」→「毎日アポメールを5件出そう」
「メール対応の時間を減らそう」→「メールチェックは2時間に1回にしよう」
●固有名詞を使う3つのメリット
(1)説得しやすい
(2)印象が良くなる
(3)会話のフックになる
質問をすることには主に3つのメリットがあります。
(1)一方通行の防止になる(人間関係が良好になる)
(2)相手の情報を聞ける
(3)要望を通すことができる
Whyは「人」について聞かれているので、圧迫感を感じるのに対し、Whatは「モノ」や「事象」にあてた質問なので、自分と切り離して冷静に考えられる
相手に話を聞いてもらいたい、動いてもらいたいと思う時は相手目線で伝えていきましょう。
次の2点を意識していきましょう。
◎自分の提案を受け入れると「プラス」が得られる
◎自分の提案を受け入れると「マイナス」を埋められる(損失を回避できる、苦手を平均に克服できる)
●部下がやる気になる任せ方のポイント
・評価優先型:評価に直結する業務と伝える
・リスク回避型:リスクが小さいことを証明する/サポート体制を強調
・チャレンジ型:簡単な仕事ではないと伝える/将来を左右する仕事を伝える
・自由志向型:自分でできる裁量を大きくする
「叱る時は1対1、褒める時は全員の前で」とかつては言われていましたが、今は褒める時も1対1が好ましいです。
なぜなら、自分ばかり褒められて媚を売っている・調子に乗っているというように思われないかと気にする人も増えてきてるからです。
人は最後の印象が本当に大事です。
コンフリクト(衝突・対立)マネジメントは、チームや組織内で意見の対立が起きた時、それを避けようとするのではなく、逆にチームや組織の活性化や成長機会と捉え、積極的に対立を生かして問題解決を図ろうとする取り組みのことをいいます。
人間関係の対立は業務に支障をきたします。
人間関係の対立に発展させないためには、次の3点を意識するといいでしょう。
①相手軸に立って考えるように心がける
②自分自身ではなく「意見への否定」だと考える・伝える
③普段からコミュニケーションをとっておく
相手に恥をかかせない、コンフリクトの場面では特に気をつけたいことです。
コンフリクトは「お互いの意見を尊重し合ってベストな案を作る」のであって、お互いのアラを探したり、恥をかかせたりするのが目的ではありません。
この点がブレてしまうと人間関係の対立に発展しかねないため気をつけたいところです。
■【実践】3個の行動ポイント
【2030-1】伝える際、解釈が複数生まれるような曖昧な表現は避ける
【2030-2】質問は、人が対象になるWhyは避け、モノや事象が対象になるWhatで行うように心がける
【2030-3】「意見」の対立は成長機会と捉えて積極的に行う(但し、人間関係の対立に発展しないよう注意)
■ひと言まとめ
※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作
■本日の書籍情報
【書籍名】武器としての伝え方
【著者名】吉田幸弘 ・ 著者情報
【出版社】自由国民社
【出版日】2023/7/7
【オススメ度】★★★★☆
【こんな時に】伝える力を身につけたいときに
【キーワード】話し方、リーダー、指導力
【頁 数】304ページ
【目 次】
第1章 その伝え方は凶器です
第2章 伝えるべきことをシンプルに絞り込む
第3章 伝え上手になるための心得
第4章 伝わる表現にする
第5章 話を引き出す質問術
第6章 相手の心を動かす伝え方
第7章 武器になる褒め方・叱り方
第8章 有効的な対立にする伝え方(コンフリクトマネジメント)
▼さっそくこの本を読む
武器としての伝え方
吉田幸弘 自由国民社 2023-7-7
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吉田幸弘さん、素敵な一冊をありがとうございました!
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