【書評:2047冊目】マンガで「なるほど名画」(山上やすお)

【西洋絵画がわかると西洋文化が見えてくる!】
美術解説員・山上やすお氏が、『マンガで「なるほど名画」』と題して、西洋絵画を7つのポイントに分けて解説しながら、絵画を通じて歴史・文化に触れる楽しさを伝える一冊。

■書籍の紹介文

『最後の晩餐』をはじめとした西洋絵画。
どんな絵画があり、どのような背景を持つか語ることはできますか?

 

本書は、絵画は「知っている」だけで大きく見え方が変わると提起し、ゆるめのイラストマンガを使って、西洋絵画の7つのポイントを分かりやすく解説する一冊。

 

◎『ヴィーナスの誕生』に描かれるヴィーナスは、なぜ貝殻の上に立っているのか?
◎『バベルの塔』に描かれる塔は、なぜ未完成の状態なのか?
◎『民衆を導く自由の女神』に描かれる女神は、いったい誰を描いているか?(ジャンヌ・ダルクではありません)

 

こうした問いかけてにスラスラ語ることができる人は、日本には多くないでしょう。
でも、欧米社会の中に入れば、多くの人が当たり前のように語ることができます。

 

なぜなら、これらの西洋絵画は欧米社会の文化・歴史の中で育まれ受け継がれてきたからです。
わたし達日本人が、『桃太郎』や『浦島太郎』の話をスラスラできるのと感覚的には同じなのです。

 

つまり、西洋絵画における名画の何が素晴らしいかをうまく語れない理由。
それは、その文化圏で育ってこなかったから「知らないだけ」なのです。

 

言い換えれば、知ることさえできれば、より深くより魅力的に世界的な名画を楽しめるようになるのです。
この楽しめる状態になることが、文化的教養を磨くということにもつながります。

 

名画に込められた、歴史的、文化的、宗教的な想いやメッセージ。
それらは、形や姿を変えながら、現在の欧米社会の価値観の根底に流れ続けています。

 

たとえば、ギリシャ神話の名画『メデューサの首』は、ハイブランド『ヴェルサーチ』のロゴとしても有名です。
このことからも、ビジネスやエンターテインメントにも多大なインスピレーションを与え続けていることがわかります。

 

だからこそ、名画を通して文化的教養を磨いていくことは、西洋文化の影響をうける現代社会を生きる上でも役立つのです。
まずは、ゆるめのイラストマンガでわかりやすく解説されている本書を活用して基礎のきを押さえておきましょう。

 

合わせて、わたし達のバックボーンである、日本絵画についての教養も磨いていきたいものです。
西洋絵画についてはスラスラ喋るのに日本絵画はサッパリでは、海外の人から怪訝な顔で見られてしまいますからね。

 

仕事で凝り固まった頭をリフレッシュするためにもオススメです。
「えっ?あの名画にそんな意味があったの?」と新鮮な発見がありますよ。

 

◆絵画を知れば、世界が見える!

マンガで「なるほど名画」
山上やすお SBクリエイティブ 2023-6-29
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■【要約】15個の抜粋ポイント

絵画は「知っている」だけで大きく見え方が変わるんです。
また「知らない」のは恥ずかしいことではありません。
知るきっかけがなかっただけなんです。

 

紀元前1400年頃に誕生したとされるギリシャ神話は、自然現象や歴史的な出来事にヒントを得て編まれた、神々と英雄の物語です。
(略)
単なる物語で終わらず、宗教的・文化的な共通認識となって古代ローマに引き継がれ、現代でも欧米などで大切な教養の一つとされています。
だから私たちは、この神話の名場面を、様々な時代の絵画で目にするのです。

 

●「ギリシャ神話」の代表的な絵
・ヴィーナスの誕生
・アポロンとダフネ
・ダナエ
・メデューサの首
・アンドロメダを救うペルセウス

 

旧約聖書は、ユダヤ教の「聖書」です。
(略)
そこには、ユダヤ教の理念や生きていくうえでの指針となる話が、様々な形で記されています。
中でも、特に絵画に描かれたのは、信徒が語り継ぐ、世界の始まりと祖先の歴史。
「アダムとイブ」「ノアの箱舟」など、映画化されるほど有名で、ダイナミックなエピソードのオンパレードです。

 

●「旧約聖書」の代表的な絵
・アダムの創造
・楽園追放
・アララト山に到着したノアの箱舟
・バベルの塔
・ホロフェルネスの首を斬るユディト

 

キリスト教の創始者、イエス。
その生涯や言葉を、地域や時代を超えて世に知らしめたのが、新約聖書です。

 

●「新約聖書」の代表的な絵
・受胎告知
・キリストの降誕
・キリストの洗礼
・最後の晩餐
・磔刑
・キリストの復活

 

かつて世界の多くの国には、王や皇帝が君臨しており、その一家、一族は自分たちの輝かしい歴史や伝統を誇っていました。
しかし、これらの王室は、権力の座を巡る殺人や裏切り、スキャンダルがうずまく場所にもなり、長い歴史の中で物語の宝庫となっていったのです。
そんな王室は、画家にとって、格好の画題でした。

 

●「王室史」の代表的な絵
・レディ・ジェーン・グレイの処刑
・皇女ソフィア
・ラス・メニーナス
・カルロス4世の家族
・サン=ベルナール峠を越えるボナパルト

 

18世紀後半に起こったフランス革命で、世界のあり方は大きく変わりました。
それはただ横暴な王様を追い出した、というだけの話ではなく、それによって自由を手にした市民たちは、自分が本当に求めるものが何なのかを知りました。
(略)
そんな「近代都市生活」を描いた作品は、まさにその時の社会のあり方や自らの考え方を表明するものであり、その中に、彼らが生きた激動の時代を感じることでしょう。

 

●「近代都市生活」の代表的な絵
・民衆を導く自由の女神
・落ち穂拾い
・雨、蒸気、速度ーグレート・ウエスタン鉄道
・草上の昼食

 

19世紀半ば、保守的な絵画を重んじるフランス美術界に対し、新しい感覚を持った画家たちが立ち上がりました。
それはマネに感化された、若い画家たちの集団で、どうあがいてもサロンで評価されないことにしびれを切らし、自分たちの力で展覧会を開催して、新しい絵画を見てもらおうとしたのです。

 

●「印象派」の代表的な絵
・印象・日の出
・ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会
・エトワール(踊りの花形)
・睡蓮(または睡蓮の池)
・イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢
・夜のポツダム広場

 

印象派は目に見える世界の「印象を留める」という点では新しかったのですが、「目に見える」世界を描くという点では過去の絵画と同じでした。
それに不満を抱いた画家たちは、「目に見えない」人間の精神や感情、心理、魂などを描き出すことに注力したのです。

 

●「表現主義」の代表的な絵
・じゃがいもを食べる人々
・ムーラン・ド・ラ・ギャレット
・日没の種まく人
・ひまわり
・星月夜
・叫び

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2047-1】美術館や絵画展に行く習慣をつける

【2047-2】気になる絵画を見つけたら背景の歴史を学ぶ

【2047-3】著者のYoutube『こやぎ先生の美術ちゃんねる』を閲覧する

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】マンガで「なるほど名画」
【著者名】山上やすお著者情報
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2023/6/29
オススメ度★★★☆☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養グローバル勉強法
【頁 数】192ページ
【目 次】
第1章 神々のドタバタ劇「ギリシャ神話」の絵
第2章 スケールがデカすぎる「旧約聖書」の絵
第3章 イエスはスーパースター! 「新約聖書」の絵
第4章 血で血を洗うドロドロの「王室史」の絵
第5章 一見地味だけど胸熱な「近代都市生活」の絵
第6章 綺麗な景色で炎上? 「印象派」の絵
第7章 ゴッホの絵はなぜ名作なのか? 「表現主義」の絵

 

▼さっそくこの本を読む

マンガで「なるほど名画」
山上やすお SBクリエイティブ 2023-6-29
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山上やすおさん、素敵な一冊をありがとうございました!

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