【己の弱さに開き直るな!】
哲学者・中島義道氏が、『善人ほど悪い奴はいない』と題して、傲慢と自虐の極致をゆくニーチェの人間学を引きながら、善人の暴力性に隠れている「弱さ」に毒されない生き方を指南する一冊。
もくじ
■書籍の紹介文
善人ほど悪い奴はいない。
この言葉に、あなたはどれくらい抵抗を感じますか?
本書は、弱くて卑劣で善良なニーチェの「善人批判論」の言葉を引きながら、善人の中に巣食っている『弱さ』に毒されない生き方を指南する一冊。
正義ばかりを振りかざす人への嫌悪感。
正論ばかりを振りかざす人への嫌悪感。
大なり小なり、あなたも感じたことがあるとおもいます。
この感情の源にあるのが、正義・正論を盾にした善人の中にある『弱さ』だと指摘します。
弱さを隠すために、正義・正論を盾にして「自分は善人である」と思い込む。
そして、この思い込みを崩すような対象が現れると、正義・正論のもとに徹底的に対象を攻撃して排除しようとするのです。
これが、善人ほど悪い奴はいない、に通ずる骨子です。
このことを、ニーチェの言葉を引きながら、冷酷かつ冷徹なまでに炙り出していきます。
「弱者であるわたしの気持ちがわかるわけがない!」
社会問題に関わる場面やSNSでの投稿など、いろいろな場面で聞きますよね。
こうした姿勢が、”善人の暴力性”というわけです。
問題なのは、善人(と思い込んでいる弱者)は暴力性を発揮しているとは露ともおもっていない点です。
そのうえ、善人は善人を呼び寄せて群れをなす性質があります。
ゆえに、暴力性は集団化して、度を越した誹謗中傷などへと発展する危険性を孕んでいます。
人間の中には、この『弱さ』が巣食っていることを自覚するために読みたい本です。
『弱さ』に毒されて、善人化して暴走しないためにも。
ニーチェの言葉と、著者の言葉と、かなり強烈な言葉が爆発しています。
ですが、読み始めると止まらなくなる劇薬のような一冊です。
◆オススメの一冊!
善人ほど悪い奴はいない ニーチェの人間学
中島義道 角川書店 2010-8-10
売上ランキング(公開時):47,936
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■【要約】15個の抜粋ポイント
われわれが生きている社会は、弱者をみんなで寄ってたかって甘やかす社会であるからこそ、もしわずかでも品位を持って生きることを望むなら、「弱いこと」をけっして生きる理由にしてはならない。
いかに弱者であることが理不尽であれ、自分の弱さにゆったり身を委ねてはならないのである。
善人という名の弱者は自分が属する共同体から排除されることを全身で恐れているがゆえに、いつの間にか、いかなるものであれ、自分が現に属している共同体の方針に加勢してしまうのである。
何もしないで、たえず文句ばかり、しかも紋切り型のきれいごとばかり語っているのが善人である。
そのことをわずかにも反省していない人、考えているふうでじつは何も考えていない人、これほど懇切丁寧に説明しているのに、こんな自分のどこが悪いのか全然わからない人、それが正真正銘の善人である。
善人は、安全という最高価値を守るためなら、他のあらゆる価値を踏みにじってもいいと思っている。
善人は、管理されることが大好きだから、こうしたバカ管理放送(「左側通行してください!」「マナーを守りましょう!」など)は聞き流す。
そこに、何の屈辱も侮辱も感じない。
といって、善人は鈍感であるわけではない。
少しでも弱者の味方をしない社会的強者の態度を見つけるや、差別発言を耳にするや、ただではおかないであろう。
善人はいつの時代でもどんな社会でも、「気を逸らすこと」によって社会的に「正しい」とされる以外の方向を認めない。
いや、そればかりではない。
「正しい」方向に進んでいかない者を見つけるや、ひっ捕らえ、唾を吐きかけ、鞭をなびかせて、調教しようとする。
とくに善人は「善意の嘘」の常習犯である。
相手を傷つけないために、相手を思いやって(と思い込みながら、じつは自分を守っているだけなのだが)、善人は膨大な嘘をつく。
カントは、すべての嘘を非難するが、とくに「善意の嘘」ほど人を腐らせるものはない、と言い切っている。
善人は弱いことを自覚しているからこそ、最も卑劣で姑息なやり方で権力を求める。
つまり、彼らは「数」に訴えるのである。
一人ひとりは弱いが、結束すれば、団結すれば、山をも動かし、巨悪をも打ち倒すことができよう。
中世の魔女裁判を支えたのは善人たちである。
2000年に及ぶユダヤ人迫害を支えたのは善人たちである。
戦前のわが国で戦争反対者を「売国奴!」と罵り足蹴にし唾を吐きかけたのは善人たちである。
そして、現代日本において、セクハラや痴漢行為に目をらんらんと光らせ、容疑者を捕まえるや吊るし上げ首を晒して葬り去るのも、折り紙つきの善人たちである。
強者は敵から逃げない。
敵が強ければ強いほど、敵をしっかり見定める。
敵との対決こそが人生の醍醐味だからだ。
だが、弱者はあらゆる敵から逃げる。
そして、敵のいない世界を望むのである。
ニーチェによると、同情とは、弱者が自分の「弱さ」にもたれかかり、ますます卑劣になり、ますます同情を求め、ますます弱さから抜け出せなくなるという恐るべき悪循環を産み出す。
ニーチェは人間の愚かさと残酷さをよく見ている。
不遇な者は、不思議な特権意識を持ち、自分より恵まれた者が自分にひれ伏すことを求めるのである。
不遇な者の物語を聞くと、恵まれた者は返す言葉がない。
ニーチェの学者に対する罵詈雑言は、初期の『哲学者の書』から『ツァラトゥストラ』まで続く。
ワグナーとの決別によって、ニーチェは決定的に人間不信に陥った。
彼は、選ばれた少数者でありたかった。
だが、そうでないことは彼が一番よく知っているのである。
■【実践】3個の行動ポイント
【1677-1】「弱いこと」を理由にしない
【1677-2】疑問には、きちんと向き合う
【1677-3】「正義」や「平等」を使って自分を救おうとしない
■ひと言まとめ
※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作
■本日の書籍情報
【書籍名】善人ほど悪い奴はいない ニーチェの人間学
【著者名】中島義道 ・ 著者情報
【出版社】角川書店
【出版日】2010/8/10
【オススメ度】★★★★★
【こんな時に】教養を伸ばしたいときに
【キーワード】哲学、自己対話、生き方
【頁 数】221ページ
【目 次】
第1章 善人と弱者
第2章 善人は安全を求める
第3章 善人は嘘をつく
第4章 善人は群れをなす
第5章 善人は同情する
第6章 善人はルサンチマン(恨み)を抱く
この本が、あなたを変える!
善人ほど悪い奴はいない ニーチェの人間学
中島義道 角川書店 2010-8-10
売上ランキング(公開時):47,936
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中島義道さん、素敵な一冊をありがとうございます。
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