【書評:2086冊目】1フレーズ経営学(三谷宏治)

【まずはフレーズで全体像をつかめ!】
早稲田大学ビジネススクール客員教授・三谷宏治氏が、『1フレーズ経営学』と題して、経営学の基礎項目を5つの分野に分類し、各項目の本質を印象に残る1フレーズで解説する一冊。

■書籍の紹介文

経営学の知識。
どれほど身についていますか?

 

本書は、経営学の基礎項目を「経営戦略/マーケティング/オペレーション/人・組織/会計・財務」の5つの分野に分類し、各項目の本質を初学者でも印象に残る1フレーズで解説する一冊。

 

ところどころ用語は知っているけど、具体的に活用できているかと問われると自信がない。
学部やMBAで学んだ以外の人の多くが、このような認識ではないでしょうか。

 

経営学とは、その名のとおり、経営者が学ぶべきことの集合体です。
経営に関わるすべての専門領域が守備範囲ですから、学ぶべき範囲はとてつもなく広いです。

 

しかも厄介なのが、多くの人にとって、経営は実体験がなく実感がわきにくいということです。
結果、自分の業務に関わる範囲の関連知識を少しかじった程度となり、いまいち良く分からない状態に陥りやすいわけです。

 

では、せっかく興味を持ち学びたいという人はどうすればいいのか。
そこに答えるために書かれたのが本書です。

 

48項目の経営学の基礎を解説していきます。
一番の特徴は、タイトルにもなっている「1フレーズ」化にあります。

 

無機質な専門用語と横文字のオンパレードで、頭に入っていかない(そして、残らない・・・)。
こんな悲惨な状況を回避すべく、各項目の本質を凝縮した「1フレーズ」でズバッと言い切ります。

 

つまり、48フレーズを頭に叩き込めば、経営学の必修理論の要点を吸収できるわけです。
さらに、関連する解説文も、図解と企業事例が豊富に収録されており、フレーズの理解定着を助ける構成になっています。

 

もちろん、あくまで「入門書」「基礎ガイド」を目的とした書です。
肝心なのは、強く印象に残ったフレーズを足がかりに、より深く学んでいく姿勢となります。

 

ですが、全体像が見えなかったり、各項目の関係性が分からないと学習意欲も維持しにくいものです。
ここを解消してくれる役割として、本書は有用なものだと感じます。

 

経営者のものではあるけど、自分の仕事ひいては生活に大きく関わってくる経営学。
本書を入り口に、知識を深めてみてはいかがでしょうか。

 

◆どのフレーズが秀逸!

1フレーズ経営学
三谷宏治 SBクリエイティブ 2023-10-31
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■【要約】15個の抜粋ポイント

戦略とは集中すべきことを明確にするということ、そしてそれは同時に「何かを捨てる」ということなのに、われわれはそれが非常に苦手です。
戦略レベルでの失敗は、その下のレベルで挽回なんてできません。

 

自社への正解を自動的に出してくれる正しい経営戦略論なんてないのです。
でもひとつ選んで磨いていくしかありません。

 

他社に自社技術を公開・提供するオープン戦略と、自社の強みや技術を秘匿化するクローズ戦略を組み合わせるオープン&クローズ戦略による「ビジネス」をつくり上げることで、知財の価値は何倍にも高まるのです。

 

STPはセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング。
セグメンテーションはただ顧客群を年齢・性別・住所で細かく切り分けるのではなく、何で切るかが勝負です。
誰のどんなニーズを攻めるのかを決めるのがターゲティングで、そのとき競合とどう差別化するのかがポジショニングでした。
このSTPがしっかりしていなければ、すべてのマーケティング活動はムダに終わります。

 

人の満足・不満足は実際の価値が事前の期待を超えたかどうかで決まるので、認識価値を無闇に高め過ぎてはいけないのです。

 

IDEOによる「デザイン思考」こそが、現代を代表するマーケティングプロセスといえるでしょう。
それは徹底的な観察と手軽な試作品による評価の繰り返しでした。

 

ERPを導入するということは、業務の標準化(他社と同じにする)というビジネスプロセス改革を進めるということでもあるのです。

 

CRMは単なる情報システム重視のケイパビリティ改革(DBマーケティングなど)ではありません。
ターゲットやバリューを定め直し、そこでの利益向上機会を明確にすることから始まる全社改革です。

 

1940〜90年代は、徹底したボトムアップのQC活動で品質管理とコストダウンに成功した日本企業と、トップダウンの全体活動(TQC、 TQM、BPR)や他業界からも学ぼう(ベンチマーキング)とした欧米企業との戦いの時代でもありました。

 

そのヒトの生産性はモチベーション次第であり、そのモチベーションを左右する最大の要因は、賃金でも労働時間でもなく、人間関係だとされています。

 

もっとも重要な共通言語は、部門ごとの専門的なそれでなく、全社員が共通に使うものでしょう。
その筆頭が「論理的思考(Logical Thinking)」です。

 

新規事業では、まずは何を学ぶべきか、を徹底的に議論しましょう。

 

お金を巡ってビジネスが直面する問題には主に3種類あります。
①赤字
②黒字倒産
③投資不足

 

固定費が大きく在庫が利かないビジネスでは、隙間をみっちり埋める売上向上策が利益もアップしてくれるのです。

 

BEP(損益分岐点)分析の目的は、まずはこの見極めです。
どの程度、何を変えればBEPに達するのでしょうか。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2086-1】目的が不明確なまま物事を進めない

【2086-2】職場で飛び交う専門用語が、共通言語になっているか注意して観察する

【2086-3】本書紹介の1フレーズを、手帳やノートに書き留めておく

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】1フレーズ経営学
【著者名】三谷宏治著者情報
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2023/10/31
オススメ度★★★☆☆
こんな時にビジネス理論を深めたいときに
キーワードビジネス理論働き方リーダー
【頁 数】288ページ
【目 次】
1章 経営戦略:事業の方針を示す
2章 マーケティング:商品と売り方のデザイン
3章 オペレーション:企業の主活動
4章 人・組織:最強のリソース
5章 会計・財務:すべてをお金で測り回す

 

▼さっそくこの本を読む

1フレーズ経営学
三谷宏治 SBクリエイティブ 2023-10-31
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三谷宏治さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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