【書評:2011冊目】ニュースの“なぜ?”は地政学に学べ(茂木誠)

【国際情勢が動く裏に”地政学”あり!】
駿台予備学校世界史科講師・茂木誠氏が、『ニュースの“なぜ?”は地政学に学べ』と題して、ウクライナ戦争、米中対立、台湾危機など、その情勢を地政学の視点から解説する一冊。

■書籍の紹介文

なぜ、戦争や衝突はなくならないのか。
その理由を、あなたならどのように考えますか?

 

本書は、地政学を学ぶとニュースがよくわかるようになると提起し、ウクライナ戦争や米中対立を題材に、世界情勢を読み解く”地政学”の考え方を解説する一冊。

 

まず、地政学には基本原理といえるものが存在します。
<地政学の基本原理>
【1】隣接する国家間には対立関係がある
【2】国家は「海洋国家(シーパワー)」と「大陸国家(ランドパワー)」に分けられる
【3】「大陸国家」は「海洋国家」になることを目指す
【4】人類の歴史は「大陸国家」と「海洋国家」の闘争の歴史である

 

上記4つの基本原理を頭に入れて読み進めると、解説がスムーズに理解できます。
もちろん、各項目の詳しい説明は本書の中できちんとされているので安心してください。

 

ロシアは、なぜウクライナに侵攻したのか。
ウクライナは、なぜここまで徹底抗戦を続けるのか。

 

一見すれば、「けしからん!」「市民を犠牲にする抵抗に意味はない!」などとおもってしまいます。
ですが、ただそれを叫ぶだけでは”浅い”のだということが、地政学を学ぶと身に沁みます。

 

当然ながら、一刻も早くこの事態が収束することを切に願います。
しかし、その後ろに隠れている「地政学」「歴史」といった背景をきちんと理解しないと、支援が支援にならない可能性があることを知るべきです。

 

さらに、ウクライナ戦争のような衝突は、世界中の至るところに転がっています。
なかでも、わたし達が不気味さや不安感を一番感じるのは、やはり中国でしょう。

 

南シナ海の領有権問題、台湾への苛烈な圧力、尖閣諸島などへの領海侵犯・・・。
ビジネスにおいては、半導体問題、知的財産問題、サイバー戦争問題なども・・・。

 

中国を突き動かすものはなんなのか。
この深層も、地政学を理解していくうちに見えてきます。

 

読んでみて、地政学とは地球のプレートのようだなと感じます。
ご存じのように、プレートとプレートの圧力が限界に達すると、地震が起きますよね。

 

地政学も似てると感じ、国と国の圧力が拮抗している間は平穏(平和)な状態。
圧力がかかり続けて限界に達したとき、衝突なり戦争なりの形で破滅的な力の放出が起きるわけです。

 

地球が生きている限り、地震はなくなりません。
ゆえに、人類が存続する限り、歴史が証明するように戦争もなくならないのかもしれません。

 

ただ、ひとりでも多くの人が地政学の考え方を身につけていれば。
無用な衝突の発生リスクを未然に下げることはできるのでは、ともおもいます。

 

世界情勢のニュースを、「素晴らしい!」「けしからん!」と短略的な正義感だけで消費することのないように。
少しずつ、地政学の考え方を身につけていきたいものです。

 

◆地政学が分かると世界情勢が見える!

ニュースの“なぜ?”は地政学に学べ
茂木誠 SBクリエイティブ 2023-4-29
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■【要約】15個の抜粋ポイント

ドイツ国会は、2022年11月、「ホロドモール」を「ジェノサイド(大量虐殺)」と認定しました。
スターリン時代のソ連は、飢餓と抑圧によって、独立運動だけでなくウクライナの文化と言語を抹殺しようとしたと指摘しています。
(略)
ウクライナの人々は、自分たちの両親や祖父母から、ロシアに支配されたらどんな目にあうのかを聞かされて育ってきたのです。
いま、国民の犠牲を払っても激しい抵抗を続けているのは、ロシアに降伏すれば、もっと恐ろしい目にあうだろうと考えるからです。
こうした歴史的背景を知らずに、安易に「人命を優先すべき」「抵抗するな」などと声高にいう人たちは、勉強不足で無責任だと思います。

 

しばらくは消耗戦が続くとみられます。
それと同時に、ロシアと欧州の緊張関係はさらに高まっていくことでしょう。
なぜ、そういえるかというと、緩衝国がなくなってしまったからです。
地政学では、対立する勢力の間にある国や地域のことを、緩衝国・緩衝地帯といいます。
緩衝国があることで、対立勢力の直接衝突の可能性が減少するのです。
(略)
緩衝国は、対立勢力に対して中立であることが望ましいわけですが、ロシアのウクライナ侵攻後、欧州から中立国がほぼなくなってしまいました。

 

私は、米中新冷戦は、アメリカの”宣戦布告”によって始まったとみています。
その宣戦布告は、2018年10月4日に行われました。
この日、当時の副大統領だったマイク・ペンスは、米保守系シンクタンクであるハドソン研究所で演説を行いました。
(略)
演説のタイトルは、「中国は米国の民主主義に介入している」です。

 

アメリカの外交政策の根幹には、対立矛盾する2つのイデオロギーがあります。
それが、「モンロー主義(孤立主義)」と「ウィルソン主義(国際介入主義)」です。

 

ウクライナ戦争で見せた、武器は売りつけるが兵士は送らない、というアメリカの態度は、今後の台湾危機でも繰り返されるでしょう。
中国を挑発はしても、戦う気は毛頭ない。
戦うのは台湾軍だけ。
そう見切った習近平が、実際に行動を起こすハードルはかなり低くなったと私はみています。

 

どこかの国が台湾を国家として認め、正式な外交関係や軍事同盟を締結すれば、中国は台湾を分離・独立させる事態とみなすでしょう。
「一つの中国」という基本的立場も否定されるからです。

 

「力の論理」を振りかざして中国が南シナ海を狙う理由は、地政学上の要衝であるチョークポイントが存在しているからです。
東南アジア最大のチョークポイントは、南シナ海からインド洋に通じるマラッカ海峡です。

 

グレーゾーンを徐々に広げ、既成事実を積み上げていくという中国の手口が、南シナ海でも尖閣諸島周辺でも着実に実行されているのです。

 

台湾当局も半導体生産能力が安全保障に直結していることを十分意識しており、これを「半導体の盾(シリコンシールド)」と呼んでいます。
中国が侵攻してきたときは、「台湾の半導体の生産設備を守るため、アメリカが台湾を見捨てるはずがない」と考えているのです。

 

台湾人の独立に関する意識は、「統一」の声が急速にしぼみ、「現状維持」から「独立」へと傾きつつある、とみていいでしょう。
「どちらかにいえば独立」を含めると、8割以上の人が中国との統一を望んでいないことになります。

 

ハンガリーのオルバン政権(2010年〜)、イタリアのメローニ政権(2022年〜)など、反グローバリズム政権がヨーロッパ各国で生まれています。
これは「国境なきヨーロッパ」という美しく、壮大な実験の「負の遺産」を背負わされた人々の、必死の抵抗なのです。

 

イギリスにとっての悪夢は、ランドパワー同士のロシアとドイツが手を組むことです。
その意味で、ノルドストリームは邪魔であり、ウクライナ戦争でドイツがウクライナに兵器を供与し、戦争が長期化するのは、歓迎すべきことなのです。

 

対中政策を大きく転換したイギリスと日本が、今後、具体的にどういった連携を実現できるのか、注目に値します。

 

インドの全方位外交は、自国の利益を最大化するため、直面する問題ごとに連携する相手を変えるという現実主義的なものです。
ただし、そこには、「敵の敵は味方」「隣国同士は敵」という、典型的な地政学の考え方が明白に反映されているということなのです。

 

現在の中東における対立の図式は、かつてのような「イスラエル」vs「アラブ諸国」ではありません。
「イスラエル+アラブ諸国」vs「イラン」なのです。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2011-1】紛争や衝突の裏にある、歴史的背景を調べる癖をつける

【2011-2】正義感だけで判断せず、当事者の意見をしっかり聞く

【2011-3】地政学に関する本を、さらに1冊読む

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】ニュースの“なぜ?”は地政学に学べ
【著者名】茂木誠著者情報
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2023/4/29
オススメ度★★★☆☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワードグローバルインプット社会
【頁 数】224ページ
【目 次】
第1章 地政学で読み解く「ウクライナ戦争」のゆくえ
第2章 「米中新冷戦」で変わる国際秩序
第3章 これから、「米国の外交政策」はこう変わる!
第4章 中国は、本当に台湾に侵攻するのか?
第5章 台湾の「シリコンの盾」はどこまで有効か?
第6章 ウクライナ侵攻で動揺する欧州
第7章 存在感を増すインドとイラン

 

▼さっそくこの本を読む

ニュースの“なぜ?”は地政学に学べ
茂木誠 SBクリエイティブ 2023-4-29
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茂木誠さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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