【書評:1661冊目】棄民世代(藤田孝典)

【氷河期世代、いまや棄民世代に…】
ソーシャルワーカー・藤田孝典氏が、『棄民世代』と題して、就職氷河期世代が中高年化し始める社会に警鐘を鳴らすべく、これから顕在化するさまざまな社会問題を考察する一冊。

■書籍の紹介文

自分の老後生活。
楽観していますか?悲観していますか?

 

本書は、就職氷河期世代を「政府の犠牲になり見棄てられた世代=棄民世代」と名づけ、日本社会でこれから顕在化するさまざまな社会問題を考察する一冊。

 

就職氷河期世代とは、つぎの人達を指します。
・1971年〜74年の団塊ジュニア世代
・1975年〜84年のポスト団塊ジュニア世代
・人口は約2310万人(男性1170万人、女性1140万人)
・生産年齢人口の約3割を占める

 

派遣、非正規雇用という大きな波を、まともに受けた最初の世代です。
この世代が今、社会の中核とも言える、中高年に差し掛かり始めました。

 

若者の就職難という問題から、日本全体を蝕む社会問題へと、病巣は根深く深刻になっている。
このことを、統計情報や社会を揺るがした事件を題材に、激しく警鐘を鳴らす一冊です。

 

なんとも言っても、『棄民世代』という言葉がすべて。
仮に、政治や政策が好転したとしても、救済には間に合わないという意味です。

 

ゆえに、政治に見”棄”てられた世代の国”民”、棄民というわけです。
目にしただけで気分が暗くなるこの言葉が、ことの深刻さを見事に表現しています。

 

なぜ、こんなことになっているのか。
なにが、この状況を生み出したのか。

 

真っ正面から問題を直視するための本。
現在の立場に関係なく、他人事には決してできない”危機”について考えるために読みたい内容です。

 

政治がなんとかしてくれる望みは、限りなく低い。
そんな政治に、このまま人生を翻弄されてもいいのでしょうか?

 

◆棄民よ、立ち上がれ!

棄民世代
藤田孝典 SBクリエイティブ 2020-4-7
売上ランキング(公開時):22,119
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■【要約】15個の抜粋ポイント

現在の日本における高齢者の貧困率(相対的貧困率)は19.4%と諸外国と比べてもかなり高いのだが、氷河期世代が高齢者になる頃には、この数字が30%くらいまで上昇していても全くおかしくないと私は予想している。

 

「秋葉原通り魔事件」や派遣切り、「年越し派遣村」が起きた2008年からの10年間で、氷河期世代の就労状況はなにか変わったのだろうか。
氷河期世代の非正規雇用者数を2008年と、10年後の2018年で比較すると、2008年においては氷河期世代(当時25〜34歳だった世代)の正規雇用者は916万人、非正規雇用者は315万人いた。
それが2018年になると、正規雇用者は915万人とほとんど変わりがない一方、非正規は371万人と増加している。

 

非正規で働いている男性のうち、本当は正規雇用への転換を希望しているが心ならず非正規雇用に甘んじている「不本意非正規雇用者」は21万人おり、これは男性非正規全体の32.3%にあたる。
同様に女性の不本意非正規雇用者は28万人で、これは女性の非正規全体の9.1%である。

 

35〜44歳の男性の年間収入の平均をキャリア別に見ると、「正社員定着」が最も年収が高く平均530.7万円であるのに対して、「他形態から正社員」は400.7万円と実に130万円もの差があるという。

 

氷河期世代では男性だけでなく、女性の未婚率も過去と比べれば高くなっているということである。
これまでの結婚観や家族観に固執しているわけではないが、世帯形成ができなかったということは、これまでの日本社会で老後のモデルとされてきた、「自分の子どもに面倒を見てもらう」老後のあり方が成立しなくなるということだ。

 

加入者は貧困層なのに、負担がますます大きくなると、国保という制度に存在意義があるのか疑わしくもなっていくるが、日本においてこの割合が下がることはあり得ず、今後も負担は上がり続けていくだろう。

 

ギグ・エコノミーとは、要するに日本社会のそこかしこに日雇い労働者を大量発生させるということ、そして日本全体が東京の山谷や大阪の釜ヶ崎のような「寄せ場」化していくということである。

 

もっとも「最後のセーフティネット」である生活保護にしても、その支給額はずっと下がり続けているのが現実だ。

 

まずは政府が政府として独立し、企業任せにしないということが最低限のスタートラインなのであり、それに取り掛からねば何も始まらない。
いざスタートしても、そこから一直線に物事が進んでいくということはなく、幾度も失敗しながら経験を積み重ね、少しずつ社会全体が成熟していく以外にないだろう。
だがその社会的な成熟を待つだけの時間的余裕は氷河期世代にはもはやない。
私が氷河期世代を棄民世代と呼ばなくてはいけないと考えるのは、彼らがもはや「間に合わない世代」だからなのである。

 

女性の権利侵害も相変わらず横行していた棄民世代の失政を総括しなければ、今後も女性や若者に対する支援施策は絶対に拡充しないし、同じ苦しみを下の世代に引き継いでしまうことになる。

 

バブル崩壊から現在までの日本の社会病理や社会問題の多くは、雇用の破壊と崩壊に端を発しており、その意味では全ての社会問題がこの竹中平蔵から発生してきていると言い切ってよいとさえ私は思っている。
少なくとも棄民世代を作り出した最大の責任は間違いなく竹中平蔵と小泉政権にある。
こればかりはしっかりと総括しておきたい。

 

棄民世代が老後を迎える頃には、日本の人口バランスが今以上にいびつになるがゆえに、棄民世代の老後を支える現役世代の負担もきわめて大きくなると考えられる。

 

人間は誰しも、傷つけられたり、排除されたりした、経験が無意識のうちに蓄積されていくものだ。
「自分なんか生きていてもしょうがない」「自分は社会に必要ない」と思わせてしまう風潮は、それこそ「無敵の人」を大量生産してしまう温床になりうる。

 

棄民世代を救済するために本来行われるべきなのは、政府が行おうとしている正社員化促進策よりも、むしろ正規・非正規に関係なく、生活に必要な最低限の給与(リビング・ウェッジ)を保障する政策だろう。

 

本書を通じて、少しでも自己責任の呪縛から解き放たれる人が出てきて、人々や組織に居場所を見出し、社会連帯を通じた取り組みが始まることになれば幸甚である。
具体的には、労働組合、協同組合への理解や参加も期待したいし、社会に働きかけていく人が増えると状況も好転していくだろう。
政府が棄民政策を続けていても、私たちは相互に結束を強めて、助け合う精神を忘れずに生きていきたいと思う。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1661-1】統計数字を確認する習慣を持つ

【1661-2】ねんきんネットで現状を把握する

【1661-3】社会問題に取り組む団体の情報をフォローする

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】棄民世代
【著者名】藤田孝典著者情報
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2020/4/7
オススメ度★★★☆☆
こんな時に社会貢献を考えるきっかけに
キーワード社会考える生き方
【頁 数】224ページ
【目 次】
序章「棄民世代」とは何か
第1章 データから見えてくる就職氷河期世代の過去と現在
第2章 棄民世代はこれからどうなる
第3章 「就職氷河期世代支援プログラム」を批判する
第4章 棄民世代を生み出したのは誰か
第5章 棄民世代が日本を滅ぼす?
第6章 提言・彼らを本当の棄民にさせないために

 

この本が、あなたを変える!

棄民世代
藤田孝典 SBクリエイティブ 2020-4-7
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藤田孝典さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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