【書評:1949冊目】デマの影響力(シナン・アラル)

【その判断、あなたの本当の判断ですか?】
科学者/シナン・アラル氏が、『デマの影響力』と題して、ソーシャル・メディアの内部を解き明かしながら、危険性への警告とともに、明るい未来への可能性を考察する一冊。

■書籍の紹介文

今日、スマホで目にした無数の情報。
そのうち、真実の情報は何パーセントくらいありましたか?

 

本書は、人間がいかにデマに弱い存在であり、ソーシャル・メディアがいかにデマを感染させる存在であるかを明かしながら、身を守る方法を考察する一冊。

 

フェイク・ニュース、フェイク動画、ディープフェイク・・・。
フェイク(嘘)、つまり、デマに関する警告を目にする機会が急増しているように感じます。

 

自分は騙されないから大丈夫。
そんなお気楽な精神論では生きていけないほど、今のデマは恐ろしいほどに強敵な存在になっている。

 

この本で語られる生々しい内幕を目にし、痛切にそう実感させられます。
あまりの影響力に、デマがデマでなくなり、デマが真実であることを疑わないまま、世界が進行していく恐怖が湧き上がってきます。

 

では、なにが、いままで局所的だったデマに、世界をひっくり返すほどの影響力を与えたのか。
いうまでもなく、ソーシャル・メディアです。

 

TwitterやFacebook、メッセージアプリなど・・・・。
巨大なSNSプラットフォームの出現によって、デマの感染力・攻撃力は絶望的に増したのです。

 

さらに、ソーシャル・メディアの背後にある経済原理、テクノロジー、行動心理といった数々の構成要素。
それら一つ一つの武器も進化することで、デマの影響力は人間がコントロールできないほど増大してしまっているのです。

 

このような状況下で、どうやって自分の身を守るのか。
どうやって制御不能のモンスターと化したソーシャル・メディアを、より良い未来のために手懐けることができるのか。

 

この点を深掘りしながら、今理解しておくべきことを指南してくれます。
自分の行動や思考が、得体の知れない存在に支配されないためにも読んでおきたい一冊です。

 

何十年か後になって、2022年にこういう警告の書が出ていたいのに・・・。
そのような後悔をする未来がこないことを願うばかりです。

 

◆警告の書であり、教養の書である。

デマの影響力
シナン・アラル ダイヤモンド社 2022-6-8
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■【要約】15個の抜粋ポイント

現代のように、ソーシャル・メディアによる人々の結びつきが過剰に強くなった時代には、情報の操作によって大勢の意見を意図的に操作することや、社会の雰囲気を短期間で意図的に変えることも比較的容易にできてしまう。
ソーシャル・メディアをうまく利用すれば、多くの人々の日々の意思決定、行動、関心の方向などを思いどおりに操作することもできるのだ。
私は、こういう今の時代を「ニュー・ソーシャル・エイジ」と名づけた。

 

人間は、自分の目で見たものを信じやすい動物である。
動画のフェイク・ニュースの悪影響は、従来のものとは比較にならないほど大きいだろう。

 

ハイプ・マシン(誇大宣伝機会というような意味)は、経済、技術、規範、法律という四つの要因の影響を強く受ける。
つまり、ハイプ・マシンを扱うには、まず、ビジネス・モデルや経済的誘因について慎重に考える必要があるということだ。

 

人間は「自分と他人のあいだに好みの違いがあるのを知ると不安を感じ、その不安が原因となって、違いをなくすよう好みを変える」ということだ。

 

ネットワーク効果は諸刃の剣である。
好循環を生むことも多いが、反対に悪循環を生んでしまうこともある。
好循環によって、一〇年のあいだにユーザー数二〇億人という巨大ソーシャル・メディア・プラットフォームができることもあるが、いったん悪循環が起きると、同じくらいの速度でプラットフォームが収縮してしまうこともある。

 

実のところ、デジタル広告は、宣伝されているほどには効果がないのだ。
その効果は大幅に誇張されていることが多い。

 

大衆説得の個人化を実現するには、ターゲティングが必須になる。
しかし、ハイプ・マシンには、他のマーケティング・チャネル、コミュニケーション・チャネルとは一つ根本的に違っているところがある。
それは、私たち人間の社会性を容赦なく過度に高めてしまうところだ。

 

ソーシャル・メディアとその他のメディアの違いは、ソーシャル・メディアの場合、私たちは広告による直接の説得にのみ影響を受けるわけではないということだ。
それだけではなく、自分の友人、知人、群衆からの社会的信号、そしてその幾分耳障りな残響によっても揺れ動くことになる。
それは、ハイプ・マシンの影響を増幅、強化し、拡散させる。

 

現代の消費者(有権者、市民)は完全にネットワーク化されている。
私たちは、この過剰なほど社交的になった世界に対応するためのまったく新たな戦略を必要としている。

 

一人のマイクロインフルエンサーの影響力の届く範囲は狭い。
しかし、その範囲にいるフォロワーは強く引きつけることができる。
フォロワーあたりのエンゲージメントは高く、しかもコストは安い。

 

誰にでも通じそうな平均的なメッセージは、ソーシャル・メディア上ではあまり意味を持たない。
それよりは、特定の人にだけ強く響く極端なメッセージのほうが重要になる。
ソーシャル・メディアについて知るうえで、全体の平均を見ることにあまり意味はないのだ。
ソーシャル・メディアは、個々に大きく違った人たちの集合体であり、メッセージも誰に向けられたものかで大きく違ってくる。
個々の違いをよく知ったうえで全体について考える必要がある。

 

適切な条件さえ整えれば、現在のハイプ・マシンのような、交流がさかんで相互依存性が時とともに高まるようなネットワークは、人類にとって決してマイナスではなく、大きなプラスになり得るということだ。

 

相関関係と因果関係は厳密に区別する必要がある。
(略)
つまり、ハイプ・マシンはチャンスを作っているのではなく、その人がどのくらいチャンスに恵まれているかを反映しているにすぎないのかもしれないということだ。

 

簡単に事実を歪曲できる時代だからこそ、倫理と哲学の重要性が増しているとも言える。

 

四つの要素、資金、プログラム・コード、社会規範、法律がすべて揃えば、未来は私たちの望むようなものになるだろう。
消費者がこぞって現状の変革に関心を持ち、変わろうと努力する企業にだけ資金が流れ込むということになれば、企業は嫌でも変わらざるを得なくなる。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1949-1】マーケティング手法の勉強をする

【1949-2】全体の平均で語られる話には注意する

【1949-3】倫理と哲学の勉強をする

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】デマの影響力
【著者名】シナン・アラル
出版社ダイヤモンド社
【出版日】2022/6/8
オススメ度★★★★☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード社会心理学SNS活用
【頁 数】592ページ
【目 次】
第1章 ニュー・ソーシャル・エイジ
第2章 現実の終わり
第3章 ハイプ・マシン
第4章 脳とソーシャル・メディア
第5章 ネットワークの引力はその質量に比例する
第6章 大衆説得の個人化
第7章 過剰な社交
第8章 社交的すぎる世界を生きるための戦略
第9章 アテンション・エコノミーとトレンド独裁
第10章 群衆の知恵と狂気
第11章 ソーシャルメディアの可能性と危険性
第12章 より良いハイプ・マシンを作る

 

この本で、あなたは変わる!

デマの影響力
シナン・アラル ダイヤモンド社 2022-6-8
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シナン・アラルさん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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