【書評:1696冊目】とてつもない数学(永野裕之)

【これが本当の数学の姿だ!】
永野数学塾塾長・永野裕之氏が、『とてつもない数学』と題して、自然であれ、芸術であれ、人間が美しいと感じる裏には数学があることを紹介しながら、数学の楽しみ方を指南する一冊。

■書籍の紹介文

数学に感じる魅力。
どんなモノがありますか?

 

本書は、人類の歴史と数学の関わり合いをさまざまな角度から紹介しながら、難解だけれども魅了されるとハマる”数学の楽しみ方”を指南する一冊。

 

高校生のときに、授業で取り扱ってほしかった。
いや、いまからでもカリキュラムに組み込んでほしい。

 

そう感じるほど、数学の持つ魅力、数学を学ぶ意義、数学がもたらす可能性に満ち溢れた一冊。
数学への学習意欲をかき立てる”着火剤”として最適です。

 

数学というと、どうしても理性的な部分ばかりが強調されます。
もちろん、どこまでも理性的な部分を追求できる学問です。

 

しかし、数学にはどこまでも広がる理性的な部分と同じくらい、どこまでも広がる感性的な部分があります。
だからこそ、絵画・彫刻・建築・音楽などの芸術分野の天才たちも、数学に魅せられてきました。

 

「白鳥の湖」で有名な作曲家・チャイコフスキーもいいます。
『もしも数学が美しくなかったら、おそらく数学そのものが生まれてこなかったであろう』と。

 

テクノロジーが身近になり、ますます発展していく現代。
それは、誰もが数学とは無関係ではいられず、数学の恩恵を肌で感じる世界を生きることを意味します。

 

だからこそ、数学の学問としての奥深さ、美しさを体現する芸術性、実学としての社会への影響力など。
なんでもいいので、自分なりの数学のおもしろさを見つけることが大切になっていきます。

 

数式や計算だけが、数学ではありません。
ぜひ本書を読んで、本当の数学の姿を知ってください。

 

◆これが、数学だ!

とてつもない数学
永野裕之 ダイヤモンド社 2020-6-4
売上ランキング(公開時):617
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■【要約】15個の抜粋ポイント

地下鉄の構内や工事現場の近くでも音楽を味わえるノイズキャンセリングのヘッドホンは、負の数という概念のおかげで到達できたテクノロジーの1つである。
人間の手による負の数の発明は、その影響力の大きさから、数学界に起きた最大のパラダイム・シフトだったと言っても過言ではないだろう。

 

ぼやけた印象になりがちな大きな数字も、意味を添えてあげればイメージがしやすくなる。
そして、数字に意味をつけたいときにうってつけなのが、先ほども使った「〜あたり・・・」という単位量あたりの大きさである。

 

古代ギリシャのユークリッドが著したとされる『原論』という本をご存知だろうか?
『原論』は紀元前3世紀頃に編さんされた最古の数学テキストであると同時に、少なくとも100年前までは、高校の教科書として世界中でそのまま使われていた、驚異の大ベストセラーである。
聖書を除けば『原論』ほど世界に広く流布し、多く出版されたものは無いだろう。

 

ではなぜ『原論』はここまで広く、読まれたのだろうか?
それは、数学だけでなく、すべての分野に通じる論理的思考(logical thinking)の方法が書かれているからである。
質においても量においても論理的思考の手本が『原論』ほど見事に示されている類書は、未だに類を見ない。
これはつまり、論理力を磨くためには『原論』こそが最良であるということを意味する。
実際、現代においても、特に欧米のエリートたちにとっては、『原論』の内容は欠くことのできない常識になっている。

 

ノイマンの研究は本業の数学の他に、物理学・計算機科学・気象学・経済学・心理学・政治学などに大きな影響を与えた。
そんなノイマンの数々の業績の中でも特筆されることが多いのは、1926年に提唱した「ゲーム理論」である。
(略)
ゲーム理論は、誕生からわずか100年足らずの歴史の浅い理論であるにも関わらず、今日では経済学、経営学、政治学、社会学、情報科学、生物学、応用数学など非常に多くの分野で応用されている。

 

●数学に「美しさ」を感じる4つの理由
①対称性
②合理性
③意外性
④簡潔さ

 

「mathematics」の語源が、ギリシャ語で「学ぶべきもの」を意味する「マテーマタ」であることは興味深い。
古代ギリシャにおける「マテーマタ=学ぶべきもの」は次の4つの科目から成っていた。
・算術(静なる数)
・音楽(動なる数)
・幾何学(静なる量)
・天文学(動なる量)

 

「1対1対応」というのは、集合Aと集合Bがあるとき、Aのどの要素にもBのただ1つの要素が対応し、またBのどの要素にもAのただ1つの要素が対応することを言う。

 

数学は、数字が生まれる以前から「1対1対応」と共に発展してきた。
それだけに、「1対1対応がわかる」というのは「順序関係がわかる」「観察ができる」「抽象化できる」等と並んで、数学的能力の最も基本となる力である。

 

現代社会では、統計というフィルターを通して数字が判断と予測の根拠となる。
数字が社会を表し、数字が社会を変えていく。
統計は「数学なんて何の役に立つの?」という問いに対する1つの答えである。

 

二進法を使うコンピュータの世界では、電気の「オンとオフ」や電流の流れる向きの「右と左」などに「0と1」を対応させる。
そうする最大の理由は読み取り誤差が少なくなるからである。
十進法で信号を判断しようとすると、「0」〜「9」の10種類の信号が必要であるが、仮にそれを流れる電流の量で判別する場合、それ相応の精度が必要になる。
一方、二進法であれば、信号は「0」と「1」しかないので「無」か「有」かだけを判断すれば良い。

 

円周率はいわゆる無理数である。
無理数というのは(分子も分母も整数の)分数で表すことができない。
これは小数点以下に規則性のない数が永遠に続くことを意味する。

 

ギリシャのピタゴラスは「万物は数である」と言い、イタリアのガリレオ・ガリレイは「宇宙は数学という言葉で書かれている」と言った。
確かに数学の持つ厳密性や合理性は、宇宙の真理を解き明かすのにふさわしい。

 

19×19までの2桁どうしの掛け算は、
<手順1>一方の一の位を他方に足す
<手順2>手順1の結果を10倍する
<手順3>一の位どうしの積を加える
という手順で楽に計算できる。
少し練習すればすぐに暗算できるようになるので、ぜひ試してみてほしい。

 

第四次産業革命(AI、IOT、インターネット、ナノテクノロジー、自動運転といった技術革新があらゆる場面の産業に引き起こしている技術変革)が進行中の現代では、数学の存在感は益々大きく成っている。
これからは、数学と無関係なものは何もない、と言えるところまで拡大していくのではないだろうか。
そういう意味では数学の「とてつもなさ」は、今もなお発展中なのである。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1696-1】「1対1対応」の理解を深める

【1696-2】統計学の勉強をする

【1696-3】本書を再度読む

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】とてつもない数学
【著者名】永野裕之著者情報
出版社ダイヤモンド社
【出版日】2020/6/4
オススメ度★★★★★
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード数学的思考教養発想力
【頁 数】360ページ
【目 次】
1章 とてつもない数式
2章 とてつもない天才数学者たち
3章 とてつもない芸術性
4章 とてつもない便利さ
5章 とてつもない影響力
6章 とてつもない計算

 

この本が、あなたを変える!

とてつもない数学
永野裕之 ダイヤモンド社 2020-6-4
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永野裕之さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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