【書評:1960冊目】教養としての神道(島薗進)

【日本人にとって神道とは何なのか】
宗教学者・島薗進氏が、『教養としての神道』と題して、神道の歴史と、古代日本の神々の祭祀がなぜ現代まで生きのびているのかを考えながら、神道とは何かという本質を考察する一冊。

■書籍の紹介文

神道。
あなたは、どんなイメージ・知識をお持ちですか?

 

本書は、「神道はどのように現代まで生きのびてきたのか」に視点を置きながら、日本の(宗教)文化を自分なりに考える手がかりとして、神道を考察する一冊。

 

日本では、アニミズムや古代の神々の祭祀が、神道というかたちで生きのびています。
しかも、決して小さくない影響力を保ちながら・・・。

 

もちろん、日本以外にも似たような存在は世界中に存在します。
ただ、長い歴史の中で姿を消したり、現存していても影響力が小さかったりするものがほとんどです。

 

では、なぜ日本でだけ脈々と生きのびることができたのか。
なぜ、現在に至るまで、世界有数の国家である日本の社会で影響力を持ち続けられているのか。

 

この大いなる疑問から、本書の神道への考察ははじまっていきます。
客観的な視点を大事に論を進めているので、神道というものの全体像をつかみ取るのに適した、まさに”教養”の本です。

 

神道、広く言えば宗教について語ろうとすると、日本人の多くが「怪しい」などと警戒するとおもいます。
なかには、自分は無神論者だから神や宗教の話は関係ないとおもう人もいるでしょう。

 

ですが、まったく影響を受けずに生活している人は皆無です。
意識するしないに関わらず、日本社会の中に脈々と流れているからです。

 

それならば、その存在、流れを理解しておくことはとても大切です。
「神道とは何か」「神道は何をもたらしたのか」といったことを自分で考えられるようにしておくことは、日本人として日本の文化を語れることにつながるとおもいます。

 

自分で考えられるようになっておけば、良からぬ動きに迎合せずにすみます。
自分で考えられるようになっておけば、過度に警戒したり敵対したりせずにすみます。

 

宗教を考えたり語ったりするのが苦手な日本人。
まずは、この本を入り口にするのがいいかもしれません。

 

◆日本の精神文化に関する教養。

教養としての神道
島薗進 東洋経済新報社 2022-5-13
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■【要約】15個の抜粋ポイント

神道とは何かというとき、古神道的な古い時代から「神道」があったとするのか、あるいは律礼制度成立以降に成立したとするのかについては、さまざまな立場がありうる。
だが、いずれにしろ、近代の国家神道整備の際に「祭政一致」「神武創業」などといわれ、あるべき国家的神祇祭祀(じんぎさいし)の雛形が古代にあるとされたのは確かだ。
それとともに、それ以後の神道は国家的神祇祭祀の理念に限定されない、もっと古代的なものとも連続性があることになる。

 

日本の律令国家神道は、中国の神帝制、神聖王権のあり方を取り入れながら、それとは異なるものとして古代の日本で成立したという見方になる。
神道史をみる上で、参考にすべき観点だと考えられる。

 

神仏分離を掘り下げて理解すると神道の姿がみえやすくなるといえる。

 

現在の日本の神道、とくに神社神道においては伊勢神宮の存在が大きな位置を占めている。

 

一方に、古代に律令国家の祭祀制度の基礎となり、明治以降、国家神道の核となっていく、国家的な神道祭祀の中心としての伊勢神宮がある。
他方に、八幡信仰的なもの、また稲荷信仰的なものから発展していく神仏習合の中での神祇信仰がある。
両者の組み合わせという図柄の中で神道の歴史を理解していくことで神道史の理解が深まる。
伊勢神宮自身も神仏習合的な神祇信仰の影響を大きく受けたのだ。

 

諏訪大社の四社はいずれもそうだが、とりわけ上社には大和王朝の支配以前にさかのぼる国津神的な神信仰の要素がうかがえる。
御柱祭でも新たなものも含めて多彩な行事があり、そうした祭祀が諏訪地域に活性化をもたらしている。
原初的な信仰が更新され、現代にその息吹を伝えているようにも見受けられる。

 

仏教の影響力の増大にもかかわらず、神祇信仰は一定の自立性を保って神仏習合システムの中で生きのびてきた。
しかも、その中で地位を高めていく。
仏教の勢いが強い時代にも神道はその基盤を維持し、それなりの地位を存続してきた。
だからこそ近代になって、国家神道が成立する基盤になり、また一方で天理教や大本(教)が大きな勢力をもつ基盤にもなった。
その背景には伊勢神道、両部神道、垂加神道の存在もある。
神道の歴史の重要な要素だ。

 

日本神話では、神々に天津神(あまつかみ)系統と国津神(くにつかみ)系統があり、記紀神話の中に国津神という出雲系の神々が出てきて大きな役割をもっている。

 

江戸時代にしばしば使われるようになり、敗戦まで絶大な威力をもった「国体」とは、日本にしかない優れた国家体制という意味を含む用語だ。
(略)
この「国体」の観念が、近代の神道を考えるときには、きわめて大きな意義をもつ。

 

吉田神道は民間の神道の権威づけを助けた。

 

江戸幕府の体制になって、東照宮が建立されるとともに国家儀礼が新たに体制を形成していくことになる。
だが、徳川家は家康が神格化された東照宮を尊ぶとともに、あわせて朝廷も崇敬する。
日光例幣使は二つの神道的な儀礼的中心をつなぐものでもあった。

 

江戸時代に神道が勢力を増していく動きは、朝廷周辺でも幕府主導でも進み、儒学や国学思想によっても進んだが、神仏習合の民衆信仰のレベルでも進んだ。

 

明治維新で神道と日本の神々のあり方を大きく変化させたのは、神仏分離だけではない。
さまざまな政策が行われ、新たな制度がつくられていき、それらが組み合わさって、国家神道が形成されていった。

 

現在、神社神道と理解されているものを宗教教団としてとらえるとすれば、国家の導きのもと、このときはじめて神社神道が成立したといえる。

 

神社神道は国家との結びつきを絶たれ、民間の宗教団体として活動することとなった。
これは多くの神社と神職にとっては痛恨の事態だったが、ともかくまずは民間宗教団体としてのかたちを整えなくてはならない。
そこで、1946年の2月に発足したのが神社本庁である。
この神社本庁は自らを皇室の祖神である伊勢神宮を本宗とする宗教団体として位置づけ、天皇崇敬と結びつく団体であるがゆえに国家からそれにふさわしい特別な地位を得るべき存在だととらえている。
神社本庁はその後、皇室の神道祭祀や靖国神社と連携した国家的な祭祀としての地位を回復するための運動を続けていくことになる。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1960-1】「神仏習合」の歴史を学ぶ

【1960-2】「神仏分離」の歴史を学ぶ

【1960-3】「国体」について掘り下げて勉強する

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】教養としての神道
【著者名】島薗進著者情報
出版社東洋経済新報社
【出版日】2022/5/13
オススメ度★★★★☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養宗教社会
【頁 数】360ページ
【目 次】
第1章 神道の起源を考える
第2章 神仏分離の前と後
第3章 伊勢神宮と八幡神
第4章 天津神と国津神
第5章 神仏習合の広まり
第6章 中世から近世への転換
第7章 江戸時代の神道興隆
第8章 国家神道の時代の神道
第9章 近現代の神道集団

 

▼さっそくこの本を読む

教養としての神道
島薗進 東洋経済新報社 2022-5-13
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島薗進さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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