【書評:1930冊目】生まれが9割の世界をどう生きるか(安藤寿康)

【自分だけの遺伝子×社会的な環境=いまの自分】
行動遺伝学者・安藤寿康氏が、『生まれが9割の世界をどう生きるか』と題して、不平等な社会を諦めることなく、遺伝学の観点から、幸福に生きるヒントを伝授する一冊。

■書籍の紹介文

自分の遺伝的要因。
あなたはどのように捉えていますか?

 

本書は、遺伝と環境がもたらす不平等な社会を嘆いたり諦めたりせず、幸福に生きていくためのヒントを、行動遺伝学の観点から伝授する一冊。

 

「親ガチャ」という言葉が、コロナ禍の2021年に広まりました。
親の良し悪しで子どもの人生が決められてしまう、という意味です。

 

この言葉をうけて、行動遺伝学者の立場で著者はいいます。
『世界は遺伝ガチャと環境ガチャでほとんどが説明できてしまう不平等なもの』だと。

 

言い換えれば、誰もがガチャのもとで不平等であるという意味では平等といえます。
このことを、まずはきちんと理解して認めることが大切だと、著者は説きます。

 

不平等であることにおいて、みんな平等である。
であるなら、選択肢は限られます。

 

ひとつは、不平等だと嘆き諦め生き続ける道。
もうひとつは、不平等において平等なら、チャンスはあるはずと前向きに生きる道。

 

あなたの気持ちが、前者に傾いているなら本書を読む必要はありません。
ですが、「諦めたくない」「見返したい」という気持ちが少しでもあるなら、本書は光明のひとつとなることでしょう。

 

遺伝子に抗うことはできません。
ですが、いまの自分は、遺伝子と社会的環境の”掛け算”でできています。

 

つまり、どう掛け合わせるかという部分で戦える余地があるわけです。
そして、最適な掛け合わせ方を見つけることこそが、「生きやすい人生」につながっているのです。

 

◆これはおもしろい!

生まれが9割の世界をどう生きるか
安藤寿康 SBクリエイティブ 2022-9-6
Amazonで探す Kindleで探す 楽天で探す

■【要約】15個の抜粋ポイント

遺伝とは、トランプや麻雀などのゲームで最初に配られた手札のようなものだと思えばよいでしょう。
あなたという人間を内側からあなたらしい独特な形で作り上げる潜在性のパイ、それが遺伝です。

 

身体だけでなく、知能や学力、パーソナリティといった能力面、心理面も含めて、ほとんどの形質は30〜70%の遺伝率があります。

 

遺伝的素質というプリズムを通してしか、人間は環境と関わることはできません。
どんな環境であっても、そこには必ず遺伝と環境の相互作用が生じます。

 

才能というのは、人の持っている能力のうち、社会的に傑出していると見なされるもののことです。

 

生物学的なメカニズムに基づいて、ある人が何らかの一定の行動を示し、それを社会が評価した時、そこに「能力」が立ち現れるのです。
一方、生物学的なメカニズムに基づいて何らかの一定の行動を示したとしても、社会にそれを評価する目がなければ能力として認知されることがないーーー。
これは重要なポイントですから、よく覚えておいていただきたいと思います。

 

学校の差が生徒の学力や知能に与える効果量が小さいことは、行動遺伝学の研究でも証明されています。

 

あらゆる能力に関して言えることですが、自分が「得意」、「好き」と感じるのであれば、大なり小なりそれについての遺伝的能力が発揮されていると考えてよいでしょう。

 

集中力というのは独立した能力ではなく、行動の結果

 

子どもが興味を持って自分でやっていたこと、あるいは何となく始めた習いごとが遺伝子的な素質とマッチしたのであれば、「もっとうまくなりたい」、「高度なテクニックや知識を学びたい」、「同じ興味を持っている人たちと仲間になりたい」という欲求がいずれ湧いてくるはずです。
本格的にお金をかけるのは、そうした才能の片鱗が現れてからでも十分ではないでしょうか。

 

いまの環境に苦痛を感じていて、なおかつ別の環境にポジティヴなイメージを持てるというのは、あなたの「予測脳」が働いているという見方もできます。

 

子どもの知能や学力に効果がありそうな要因を2つ挙げることができます。
それは「静かで落ち着いた雰囲気の中で、きちんとした生活をさせること」と「本の読み聞かせをすること」です。

 

脳の発達過程や予測脳の話をもとに推測するに、没頭の対象については2つの基準を考えることができそうです。
一つは、対象が学習性のある素材であるか、それともただ消費するだけのものに没入してしまっているか。
もう一つは、本物につながっているか、それともインチキなものか。

 

知能などの能力調査でも、男性と女性の間にほとんど違いは見られません。
男女の賃金格差は遺伝的な能力差ではなく、社会的な環境によって作られていると考えられます。

 

私たちは能力の個人差の問題から絶対に逃げられません。

 

興味を持ったことを学んでいく中で、社会における自分の役割を見出す。
同時に、他者の持つ素質を見出し、学んだことを伝えていくーーー。
それこそが、はるか未来でもAIにはできない、人間の役割ではないでしょうか。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1930-1】得意なこと、やっていて楽しいことを整理する

【1930-2】得意なこと、やっていて楽しいことに没頭できる環境づくりを考える

【1930-3】興味を持ったことは積極的に学ぶ

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】生まれが9割の世界をどう生きるか
【著者名】安藤寿康
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2022/9/6
オススメ度★★★★☆
こんな時に生き方に迷ったときに
キーワード教養社会子育て
【頁 数】224ページ
【目 次】
第1章 遺伝とは何か
第2章 学歴社会をどう攻略する?
第3章 才能を育てることはできるか?
第4章「優生社会」を乗り越える

 

この本で、あなたは変わる!

生まれが9割の世界をどう生きるか
安藤寿康 SBクリエイティブ 2022-9-6
Amazonで探す Kindleで探す 楽天で探す

安藤寿康さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

■お知らせ

▼書評ブロガーの読書術を公開中!

▼【仲間大募集中!】101年倶楽部

▼「いいね!」応援をありがとうございます!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

ページ上部へ戻る