【書評:1900冊目】韓非子 悪とは何か(加地伸行)

【悪との向き合い方を知る】
文学博士・加地伸行氏が、『韓非子 悪とは何か』と題して、始皇帝が中華統一に用いた思想であり、激動の現代にこそ読んでおきたい「悪の論理 90編」を豊富な視点から解説する一冊。

■書籍の紹介文

韓非子。
あなたは、読んだことがありますか?

 

本書は、『人間の性(さが)は悪である』という性悪説の立場から、悪への対処の仕方を説く「韓非子」の教えを豊富な視点から解説する一冊。

 

人間とは何か。
ここに真正面からぶつかり、傷だらけになりながら考え続けた結果に生み出されたもの。

 

それが、韓非子なのだと感じます。
秦の始皇帝が「著者に会えたら死んでもいい」というほど感動したという逸話もある古典の名著です。

 

始皇帝が心酔するほどなので、現代のリーダーに通ずる教えが詰まっています。
悪を認め、悪を逆手にとって法で組み伏せる、全編気が抜けない、好戦的で張り詰めた内容です。

 

悪に襲われないために、自分も権謀術数を張り巡らせて対抗する。
ダークなイメージがある権謀術数を、正当な対抗手段と捉えよと説きます。

 

わたし達日本人は、なにかと性善説で考えがちです。
人は「善」であるという考え方です。

 

そのため、性善説に立って説く『論語』が大好きです。
書店に行くと、「論語」を題材にした書籍がたくさん並んでいるのがその証拠です。

 

しかし、性善説だけでは解決できない問題が噴出しています。
おもわず「考えられない!」と声にしてしまうような問題・事件を目にする機会が増えています。

 

そんな時代だからこそ、『論語』の対極である、性悪説に立って説く『韓非子』が効くのです。
表と裏、善と悪など、この世の中は常に二つの要素によってバランスが保たれています。

 

したがって、性善説ではバランスが崩れていると感じるなら。
バランスを保つために、性悪説にあたることが必要というわけです。

 

アクが強い分、教えを消化するのは容易ではありません。
そんなときは、専門家の解説をガイドにするのがオススメです。

 

◆右手に『論語』、左手に『韓非子』。

韓非子 悪とは何か
加地伸行 産経新聞出版 2022-7-15
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■【要約】15個の抜粋ポイント

君主のありかた
道とは、万物の根源、是非判断のかなめである。
であるから、明君はこの根源(道)を守りとおして、万物の根源を理解し、かなめを治め、成功や失敗の原因を知る。

 

一〇 己を知る道
世の中には、さだめというものが三つある。
一つは、人知ではおよびもつかない事
二つは、力が強くても持ち上げることができない事
三つは、強くても勝つことができない事

 

一九 儒家・墨家の偽り
愚か者やペテン師の主張する学説、雑然として矛盾の多い行動は、賢明な君主ならば決して受けつけはしないであろう。

 

二三 政治は世相とともに変化する
物事は世相によって変化し、その対応も世の事情に適ったものでなくてはならない。

 

二五 統御術の重要性
世間でいう賢とは、節操固く信義に厚い行為によるものである。
知とは、奥深いものごとの道理を追究する言説によるものである。
奥深い道理は、よほどの知者でも理解にしくいものである。

 

二九 利で人を動かす
人主が大きな利を心に抱いて下をおさめれば、官に任ぜられたものは能力にふさわしい仕事を与えられ、その賞罰には私情がない。
このことをはっきり判らせてやれば、かれらは死力をつくして懸命になる。
そうすれば功績をたてることができ、それによって地位と俸給とを得ることができる。

 

三四 沈黙する者にも責任を
言うにも黙るにも、どちらにも責任があるのだ。

 

四三 君主は考えや感情を表に出さない
名君のつとめは秘密を保つことである。

 

四四 君主は臣下の名と実とを把握せよ
ことばというものは、多数意見が信用されるものだ。
まちがったことがらでも、十人が同じことを言ったぐらいではまだ疑うが、百人が同じことを言えば「そうかもしれない」と半信半疑になり、それが千人となるとすっかり信じこんでしまって、まちがいを解こうにもできなくなる。
また訥弁の者が言えば信用されず、能弁の者が言えば信用される。

 

四八 人を信ずれば、人に制せられる
君主を襲う禍いの種は、人を信ずることにある。
人を信ずれば[その]人に制せられる。

 

五〇 公私のけじめ
すぐれた君主の政治は、必ず公私のけじめというものをはっきりさせ、法制を明白にして、私情をさしはさまないものである。
命令したことは必ず実行され、禁止したことは必ず止む、というのが君主の公義(共通のルール)である。

 

五五 相手の心を見抜いて意見を述べよ
説得の難しさは、相手の心を正確に見抜き、自分の意見をそこに合わせることにある。

 

七二 利を以て人を使う
人が何か事業を行ったり施しをする場合、相手にも利益があるようにと思ってやれば、親しくない者とでもうまくつきあえる。

 

七七 子供に冗談は通じない
今もし子供をだますようなことをすれば、それは子供に人をだますことを教えることになる。

 

八四 自分のものは自分で
他人を頼みにするよりも、自分自身を頼みにするほうがよい。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1900-1】古典を読む

【1900-2】相手を信じるために、疑う姿勢を忘れない

【1900-3】何事も、まずは自分自身を頼る

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】韓非子 悪とは何か
【著者名】加地伸行
出版社産経新聞出版
【出版日】2022/7/15
オススメ度★★★☆☆
こんな時に明日のリーダー力を磨きたいときに
キーワード哲学教養リーダー
【頁 数】272ページ
【目 次】
韓非子
『韓非子』とは何か
韓非伝
中国における『韓非子』
日本における『韓非子』

 

この本で、あなたは変わる!

韓非子 悪とは何か
加地伸行 産経新聞出版 2022-7-15
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加地伸行さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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