【書評:1891冊目】22世紀の民主主義(成田悠輔)

【諦めではない、蜂起のための書!】
イェール大学助教授・成田悠輔氏が、『22世紀の民主主義』と題して、若者の政治参加で治るほど日本の症状は軽くないと指摘し、これからの民主主義を考える”燃料”を投下する一冊。

■書籍の紹介文

日本の民主主義システム。
あなたが感じている問題点は、どんなものがありますか?

 

本書は、民主主義がかつてないほど劣化、重症化していると指摘し、付け焼き刃の対処ではなく、ルール自体をどう作り変えていくべきか考えるための”燃料”を投下する一冊。

 

「超超マイノリティが超マイノリティになるだけだ。」
昨今叫ばれている、若者の政治参加率が上がったとして、若者の政治的な地位がどうなるのか。

 

その答えがこれです。
このように、冒頭から頭をガツンとやられたような衝撃から、著者の議論ははじまっていきます。

 

経済といえば、「資本主義」。
政治といえば、「民主主義」。

 

わたし達は、この2つのシステムを両輪として社会を形成しています。
勝者を徹底的に勝たせる「資本主義」と、弱者に声を与える「民主主義」。

 

危うくも微妙なバランスを保って存立してきたのがこれまでの日本。
ただ、多くの人が感じているとおり、いま、「民主主義」が激しく傷んでいます。

 

それにより、格差は拡大し、弱者はより弱者へと追いやられる一方で、勝者は一層大きく勝つようになっています。
微妙なバランスが崩れたことで、社会の歪みが増え、亀裂は深まっているのです。

 

では、なぜ傷み、どうして重症化の一途を辿っているのか。
データ科学者らしい語り口で、まずは現状の問題点、症状を明らかにしていきます。

 

そのうえで、対処療法ではなく、今後数十年をかけて抜本的にルールを作り変えていく。
そのために考えるべきことを、ドラスティックに投げかけています。

 

一笑に付して終わりとするか。
著者の考えを”燃料”に議論を広げて深めていくか。

 

どちらを選択するかで、タイトルにある『22世紀』に日本が存続しているかが決まる。
そういってもいいくらいに、いまの日本は”重症”だ。

 

◆ゲームチェンジのとき。

22世紀の民主主義
成田悠輔 SBクリエイティブ 2022-7-6
Amazonで探す Kindleで探す 楽天で探す

■【要約】15個の抜粋ポイント

若者が選挙に行って「政治参加」したくらいでは何も変わらない。
今の日本人の平均年齢は48歳くらいで、30歳未満の人口は全体の26%。
全有権者に占める30歳未満の有権者の割合は13.1%。
21年の衆議院選挙における全投票者に占める30歳未満の投票者の割合にいたっては8.6%でしかない。
若者は超超マイノリティである。
若者の投票率が上がって60〜70代と同じくらい選挙に行くようになっても、今は超超マイノリティの若者が超マイノリティになるだけ。
選挙で負けるマイノリティであることは変わらない。

 

これは冷笑ではない。
もっと大事なことに目を向けようという呼びかけだ。
何がもっと大事なのか?
選挙や政治、そして民主主義というゲームのルール自体をどう作り変えるか考えることだ。

 

重症の民主主義が再生するために何が必要なのだろうか?
三つの処方箋が考えられる。
(1)民主主義との闘争
(2)民主主義からの逃走
(3)まだ見ぬ民主主義の構想

 

人類を突き動かすのは主義(ism)である。
経済と言えば「資本主義」、政治と言えば「民主主義」。

 

民主主義の敗北に次ぐ敗北。
21世紀の21年間が与える印象だ。
『民主主義の死に方』『民主主義の壊れ方』『権威主義の魅惑:民主政治の黄昏』といった本が、ふだんは控え目な見出ししか付けたがらない一流学者たちによって次々と英語圏で出版されたこともこの印象を強めている。

 

21世紀の最初の21年間の一体何が、民主国家を失速させたのだろうか?
先ほどの21世紀の回想とデータからヒントが浮かび上がってくる。
インターネットやSNSの浸透に伴って民主主義の「劣化」が起きた。
閉鎖的で近視眼的になった民主国家では資本投資や輸出入などの未来と他者に開かれた経済の主電源が弱ったという構造だ。

 

民主主義が意識を失っている間に、手綱を失った資本主義は加速している。
ただの猿のイラストに六本木のタワマン以上の値段がつくNFT。
売上ゼロの会社が時価総額1兆円で株式上場するSPAC。
身元不明者やヨレヨレのTシャツの若者がゼロから書いたコードに十年余りで時価総額数十兆円がついてしまう暗号通貨。
すべてが資本主義になるかのような勢いだ。

 

求められているのは今のままの民主主義でもなければ、反動としてのカリスマ/狂人依存の専制でもない。
民主vs.専制の聞き飽きた二項対立を超えた民主主義の次の次への脱皮だ。

 

すぐに考えられる対策はこうだ。
政治家の目を世論より成果へと振り向けるため、政策成果指標に紐づけた政治家への再選保証や成果報酬を導入するのはどうだろう。

 

老いるのは政治家だけではない。
誰しも、有権者も、老いる。
とすれば、政治家への定年や任期を考えるなら有権者についても考えるのが自然だろう。
選挙全体の脱皮と若返りのためだ。

 

民主国家ほど経済成長が停滞しているという第1章「故障」で示した事実は、民主主義的な政治制度がその市民に税をかけている状況になぞらえられる。
とすれば、タックス・ヘイブンがあるように政治的「デモクラシー・ヘイブン」もありえるのではないか?

 

マイノリティとマジョリティの逆転も視野に入ってくる。
国全体を見れば超マイノリティでしかありえない若者も、大挙して特定の自治体に押し掛ければ、その場所ではマジョリティになれる。
マイノリティとマジョリティは局所的に逆転できる。

 

選挙なしの民主主義は可能だし、実は望ましい。
そう言いたい。
選挙なしの民主主義の形として提案したいのは「無意識民主主義」だ。
センサー民主主義やデータ民主主義、そしてアルゴリズム民主主義と言ってもいい。
これは数十年をかけて22世紀に向けた時間軸で取り組む運動だ。

 

現状と対比した無意識データ民主主義は、民意を読みながら政策パッケージをまとめ上げる前の段階をもっとはっきり可視化し、明示化し、ルール化する試みだとも言える。
そして、ソフトウェアやアルゴリズムに体を委ねることで、パッケージ化しすぎずに無数の争点にそのまま対峙する試みとも言える。
その副産物として、政党や政治家といった20世紀臭い中間団体を削減できる。

 

無意識民主主義では、私たちはもはや意識的には決めない。
無意識民主主義はしたがって、民衆をいったん諦めている。
だが、無意識データ民主主義は、反民主主義ではない。
民主主義の自壊を喝采して石を投げる独裁的強者の意識的意思ではない。
石を積んで民主主義に新たな道を与えようとする民衆の無意識の意思である。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1891-1】政治・社会制度に対する不満を書き出す

【1891-2】【1】の不満に対する改善案を実現性を度外視して考える

【1891-3】【2】で考えたことを、周りに話してみる

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】22世紀の民主主義
【著者名】成田悠輔著者情報
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2022/7/6
オススメ度★★★★☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード社会考える教養
【頁 数】240ページ
【目 次】
第1章 故障
第2章 闘争
第3章 逃走
第4章 構想

 

この本で、あなたは変わる!

22世紀の民主主義
成田悠輔 SBクリエイティブ 2022-7-6
Amazonで探す Kindleで探す 楽天で探す

成田悠輔さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

■お知らせ

▼書評ブロガーの読書術を公開中!

▼【仲間大募集中!】101年倶楽部

▼「いいね!」応援をありがとうございます!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

ページ上部へ戻る