【書評:1868冊目】超ざっくり分かるファイナンス(石野雄一)

【ファイナンスは万国共通の経営判断の道具】
株式会社オントラック代表取締役・石野雄一氏が、『超ざっくり分かるファイナンス』と題して、知識のない初学者でも無理なく習得できる、ファイナンスの基礎を解説する一冊。

■書籍の紹介文

会計とファイナンス。
あなたは、違いを明確に説明できますか?

 

本書は、ファイナンスとは「企業価値の最大化」のためにあると説き、知識のない初学者でも要点を吸収できることに力点を置きながら、ファイナンスの基礎を解説する一冊。

 

会計とファイナンスには、2つの明確な違いがあります。
(1)会計は「利益」を扱い、ファイナンスは「キャッシュ(現金)」を扱う
(2)会計は「過去」の数字を扱い、ファイナンスは「未来」の数字を扱う

 

さらに、会計の場合は、適用するルールによって”調整”ができます
国際会計基準、日本基準、米国会計基準など、いろいろな決算書のつくり方が存在します。

 

一方で、ファイナンスが扱う「キャッシュ(現金)」は、”調整”できません
どんなルールを適用しようが、キャッシュの残高は変わらない(変わりようがない)からです。

 

経営の格言でよく出てくる「キャッシュはウソをつかない」。
これは、ここからきているわけです。

 

「過去」の業績の結果、「現在」の数字があります。
「現在」の数字を元に、「未来」の数字を判断します。

 

要するに、会計だけ詳しくても、ファイナンスだけ詳しくても、ダメなのです。
両方の視点をしっかり持って、両者のバランスを考えなければビジネスは成り立っていかないのです。

 

とはいえ、経営者でも財務担当者でもないのに学べといわれても・・・、と思われるかもしれません。
たしかに、専門家レベルに深く習得する必要がある方は、そこまで多くないでしょう。

 

ですが、会計もファイナンスも、言ってみればコミュニケーションの道具。
それを理解すれば、だれもが共通認識を持つことができる優れたツールです。

 

理解ができていれば、経営者がなぜその判断をしたのか、より早くより理性的に把握できます。
これは、仕事を進める上でのアドバンテージにもなりますし、それは、自らの価値を高めることにもなります。

 

では、どれくらいのことを知っていれば、最低限のコミュニケーションができるのか。
それを突き詰めて完成したのが、本書です。

 

ファイナンスについて、ここだけは理解しておくべき!ことがまとめられています。
豊富な図解と、重要部分へのマーカーなど、視覚的にも理解しやすいように工夫されている点が、学習ストレスを軽減してくれます。

 

「うちの会社は大丈夫なのか?」「将来のリスクは?」と、不安を抱くこともあるでしょう。
そんなとき、ファイナンスの知識があれば、理性的に自分で検証することができますし、周りと会話することもできます。

 

一部の人のものと遠ざけていると、ある日突然、その一部の人から切り捨てられるかもしれません。
そうならないためにも、道具を整えておきましょう。

 

◆ファイナンスと道具を整えよう。

超ざっくり分かるファイナンス
石野雄一 光文社 2022-6-21
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■【要約】15個の抜粋ポイント

会計は「利益」を扱い、ファイナンスは「キャッシュ(現金)」を扱うということです。

 

いま重視されるのは営業利益です。
企業において「本業で儲ける力」を表す利益だからです。

 

ファイナンスは3つの意思決定に役立つ
①投資をするか否かの意思決定
②資金調達の意思決定
③リターンの配分に関する意思決定

 

教授がスライドに「危機」という漢字を映し出し、「リスクというのは、この東洋の漢字が一番その本質を表しているよ」と説明しました。
つまりリスクというのは危険、つまりデンジャー(=Danger)と、機会、つまりオポチュニティ(=Opportunity)の両方を表しているということなのです。
実際、とくにファイナンスで扱うリスクには、危険もあれば機会もあります。
つまり、プラスもあればマイナスもある。
言い換えると、何が起こるか分からない、将来の「不確実性」を表しているのです。

 

資本コストこそが、ファイナンスの中でもっとも重要な考え方のひとつといえます。

 

WACC(加重平均資本コスト)をどう考えればいいかというと、資金提供者(投資家)の要求に応えるために企業が資産を活用して生み出すべき最低限の収益率、ということができます。

 

「お金の時間価値」とは、簡単にいうと、「明日のお金より、いまのお金のほうが価値がある」ということです。
この考え方を理解することは、企業価値の最大化にとって、とても重要です。

 

現在価値に(1+要求収益率)を掛けると、将来価値になります。
将来価値を(1+割引率)で割り算すると、現在価値が求められます。
ここでは、要求収益率=割引率です。
たとえば、5年先のお金を現在価値に割引くという話になると、(1+割引率)が(1+割引率)5乗に変わることに注意してください。

 

事業価値に、非事業資産の価値を加えると企業価値が求められます。
そこから、債権者の取り分である有利子負債(債権者価値)をマイナスすると、株主の取り分である株主価値を求めることができます。
そして、その株主価値と、株式の時価総額(株価×発行済株式数)、つまり現在マーケットが付けている価格とを比較してみるわけです。
そうしてはじめて、理論株価(株主価値/発行済株式数)に対し、マーケットが付けた株価が割安なのか割高なのかを判断できるのです。

 

投資判断の決定プロセスは以下の4つです。
①プロジェクト(事業)から生み出されるキャッシュフローを予測する
②投資判断指標の計算を行う
③その計算結果と採択基準とを比較する
④❸の結果、基準を満たしていれば投資を行い、基準を満たしていなければ投資を見送ります

 

世の中の経済活動は、すべて「価格と価値との交換」です。
価格とは私たちが差し出すもの、価値とはその代わりに手に入れるものです。
つまり、支払う価格よりも価値の高いものを常に手に入れ続けることが、経済的に豊かになるということなのです。

 

With-Withoutの原則とは、事業などへの投資を判断をする際、「投資をする場合(With)」と「現状のまま、投資をしない場合(Without)」とを比較してどれだけキャッシュフローが変化するかに基づいて判断すべきであるという考え方です。
投資判断をするときのキャッシュフローは、With-Withoutの原則に基づいて予測する必要があります。

 

ファイナンスでは、「レバレッジをかける」などとよくいいます。
これは、「借入をする」ことを意味し、いわゆる銀行借入や社債などの、有利子負債を活用することを指します。

 

少ない資本で大きなリターンを得られるところがレバレッジ効果の「正の側面」で、反対に、損失額が膨らみやすいところが「負の側面」であるといえるでしょう。

 

ファイナンスは正解を導き出す道具ではなく、英語と同じように万国共通のコミュニケーションの道具なのだということです。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1868-1】専門用語は、定義を正確に理解する

【1868-2】専門用語を会話に用いる場合は、相手と理解度を常に意識する

【1868-3】継続してファイナンスの勉強をする

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】超ざっくり分かるファイナンス
【著者名】石野雄一著者情報
出版社光文社
【出版日】2022/6/21
オススメ度★★★★☆
こんな時に明日の仕事力を磨きたいときに
キーワードファイナンス教養ビジネス理論
【頁 数】184ページ
【目 次】
1時間目 これが「会計とファイナンスの違い」です
2時間目 これが「ファイナンスの基本」です
3時間目 これが「お金の時間価値」です
4時間目 これが「企業価値」です
5時間目 これが「投資判断の考え方」です
6時間目 これが「お金の借り方・返し方」です

 

この本で、あなたは変わる!

超ざっくり分かるファイナンス
石野雄一 光文社 2022-6-21
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石野雄一さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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