【書評:1793冊目】上流思考(ダン・ヒース)

【そもそも、どうすれば問題は起きない?】
デューク大学ビジネススクールのシニアフェロー/ダン・ヒース氏が、『上流思考』と題して、起きた問題への対処ではなく原因の根絶を目指す、新しい思考法を指南する一冊。

■書籍の紹介文

こんな問題、起きなければどれだけラクできたか・・・。
仕事をしていて、おもわず愚痴りたくなる瞬間はありませんか?

 

本書は、問題が起きてから解決する問題解決ではなく、問題が起きる前に解決する問題解決を目的とした、新しい思考法を指南する一冊。

 

問題には、必ず原因があります。
どうすることもできない不変的な法則です。

 

とするならば、原因を突き止めて先手を打てれば、問題が起きる前に”解決”することができるわけです。
これが可能になれば、問題が起きてから、後手後手に対応するときにかかる”あの”労力から解放されるのです。

 

”あの”労力を割いていた時間の分を、前向きな取り組みに振り分けることができる。
想像しただけでも、おもわず目頭が熱くなってきてしまいますよね。

 

この、問題が起きる前に”先手”を打って解決にあたることを『上流思考』と名づけたのが本書。
方々に散らばった下流域で問題解決せず、一本の源流が流れるだけの上流域で問題解決しようというアプローチです。

 

外国語の堪能さをめざすより、万能な自動翻訳機を考える。
有能なドクターをめざすより、そもそもドクターがいらない世界を考える。

 

たとえるなら、このように思考することが『上流思考』になります。
「それができたら苦労しない!」「できないから下流で頑張っているんだろ!」と反論されるかもしれません。

 

では、なぜ『上流思考』ができないのでしょうか。
著者は、人の思考を下流に押し戻し、上流思考の獲得を妨げる3つの要因があると指摘します。

 

その3つの要因を撃破し、思考をどんどん上流へと押し上げていくためにどうすればいいのか。
読者を置いてきぼりにすることなく、段階を踏んで解説、指南してくれる内容になっています。

 

東日本大震災をはじめ、”想定外”の問題に直面する機会が増えている昨今。
遭遇してパニックに陥るのではなく、ふだんから問題の芽はないか、構造の欠陥はないかという視点で考えることの重要性は増しています。

 

突如発生したようにみえる問題にも、必ず原因(兆候)があります。
それをいち早く感知するセンサーこそが『上流思考』なのです。

 

◆起きる前の問題解決。

上流思考
ダン・ヒース ダイヤモンド社 2021-12-15
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■【要約】15個の抜粋ポイント

「下流」活動は問題が起こってから事後的に対応するのに対し、「上流」活動は問題を未然に防ごうとする。

 

上流活動の見分け方は、「システム全体のことを考えているかどうか」がポイントになる。

 

上流活動の推進者はこう考える。
この問題を生み出したのは私ではない。
でも、それを解決するのは私だ。

 

誰かに要求されたからではなく、自分に解決できるから、解決する価値があるから、解決することを選ぶのだ。

 

回避すべき世界を回避するには、ここまで見てきた障害を乗り越えなくてはならない。
問題盲(問題が見えない/仕方がない)、当事者意識の欠如(それを解決するのは自分でじゃない)、トンネリング(いまは対処できない)。

 

上流活動を成功させるには「問題を包囲する」こと、つまりすべての重要な側面に対応できる多様な人材を引きつけることがカギとなる。

 

システム変革は、組織や社会などどんな規模で行われるものであれ、時間がかかる。
だが人々の人生の成功率を高めるには、システム変革が頼みの綱だ。

 

問題に寄り添うといっても、具体的に何をどうすればいいのだろう?
テコや支点になりそうなものをどうやって見極めるのか?
有効な支点を探すには、まず防ごうとしている問題の「危険因子」と「防御因子」を考えるとよいだろう。

 

早期警報は、次の2つの問いを念頭に置いて設計しなくてはならない。
「警報が鳴ってから有効な行動を取れるだけの時間はあるか?」(時間がないなら、警報を鳴らす意味がない)と、「誤検知率はどれくらいになりそうか?」だ。
どの程度までの誤検知率を許容できるかは、誤検知に対処する手間と、本当の問題を見落とした場合の悪影響とを天秤にかけて判断する。

 

人は自分の利害が何らかの数値にかかっているとき、自分に有利になるように数字を操作したい衝動に駆られる。

 

上流介入では複雑なシステムに働きかけるため、この本では直接取り上げない、ありとあらゆる反応や結果が起こることを覚悟しなくてはならない。
「水を調整」すれば、さまざまな影響が連鎖的に波及する。
つねにだ。

 

上流活動の成功は、謙虚さを持てるかどうかにかかっている。
どんなに単純な介入も、たちまち複雑になることが多い。

 

巨大システム内のほんの小さな変革が大きな効果を生むかもしれない。
力を合わせて上流に向かえば、健康維持が病気の治療と同じくらい重視される世界に近づくことができるのだ。

 

どんなによくできた訓練でも、たった一度行うだけでは十分な備えにならない。

 

●上流活動のための「3つのアドバイス」
1.「行動」は性急に、「結果」は気長に
2.「マクロ」は「ミクロ」から始まる
3.「薬方式」より「スコアボード方式」を

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1793-1】自分で解決できるものは、価値を見出し、自分で解決する

【1793-2】謙虚さは最後の最後まで絶対に失わない

【1793-3】訓練やシミュレーションにやり過ぎはないと心得る

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】上流思考
【著者名】ダン・ヒース
出版社ダイヤモンド社
【出版日】2021/12/15
オススメ度★★★★☆
こんな時に考える力を身につけたいときに
キーワード思考問題解決リーダー
【頁 数】376ページ
【目 次】
SECTION1 「上流思考」を阻む3つの障害
SECTION2 「上流リーダー」になれる7つの質問
SECTION3 さらに上流へ

 

この本が、あなたを変える!

上流思考
ダン・ヒース ダイヤモンド社 2021-12-15
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ダン・ヒースさん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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