【書評:1683冊目】虫とゴリラ(養老孟司、山極寿一)

【自然から離れるほど危機に瀕する!】
解剖学者・養老孟司氏と霊長類学者・山極寿一氏が、『虫とゴリラ』と題して、崩壊の危機にある地球を救うべく、自然に敏感で和を尊ぶ日本人の感性を呼び覚ませと提唱する一冊。

■書籍の紹介文

自然に関して今感じていること。
どんなものがありますか?

 

本書は、虫に魅せられた学者と霊長類に魅せられた学者が、虫と霊長類の立場から人間世界を語り合いながら、これからの時代に向けた生き方を提唱する一冊。

 

人間は急速に自然を忘れていっている。
海岸線を破壊して護岸工事をしたり、都市緑化といいながら好き勝手に自然を弄りまわしたりしながら・・・。

 

果たしてこうした行為は、人間社会を本当に豊かにしているのか。
この根源的なテーマを考える本です。

 

もちろん、2人の学者は「否」と説きます。
本来の自然を理解せず破壊する度に、人間は人間性を失っていると指摘します。

 

現に、自然を破壊し発展してきた現代社会は行き詰まりをみせています。
同時に、破壊され続けてきた地球環境も限界に達しつつあり、天変地異も頻発しています。

 

SDGsをはじめとして、ようやく危機を自覚し、危機を脱しようという動きが本格化しています。
これらを新たな破壊の動きにしないためにも、本書の対談は示唆に富んでいます。

 

なかでも、社会の営みが、人間を人間でなくしているという視点はおもしろい。
さらに、インターネット上に自分をデータ化することで、現実世界の自分はノイズでしかなくなったという指摘は秀逸です。

 

人間は地球に生きる生物の一種です。
そのことを忘れてしまった先に、未来はありません。

 

社会の営みの足元には、常に自然(地球)があります。
これからの生き方を考えるのに、知っておきたい虫とゴリラからの提言をぜひ。

 

◆今こそ、自然を感じる感覚を。

虫とゴリラ
養老孟司、山極寿一
毎日新聞出版 2020-6-2
売上ランキング(公開時):2,043
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■【要約】15個の抜粋ポイント

自然が変わってきたのは、虫を見ているとよくわかります。
虫というのは、いろいろなことのサインになる。
象徴になるんですよね。

 

人間の歴史が始まってから、サルは大きな変動を受けました。
だから山奥に逃げ込んだんです。
そこに戦後しばらくまで、人前には姿を現さないっていう事情があった。
でもこの数十年で、あっという間にサルは身近な存在になっちゃった。
なおかつ今、サル以上に恐ろしいのは、シカとイノシシでしょう。
どれだけ捕まえてもどんどん増えている。
日本列島は野生動物が跋扈する時代を迎えた。

 

日本人は明治以降、西洋の形だけ真似て、技術だけを真似て、それでも「和魂洋才」っていって、和魂というのは残してきたと思うんです。
それが戦後、空っぽになっちゃって、技術だけで、すべてを行うようになったというのが、僕は大きかったんじゃないかと思うんですよ。

 

人間の身体の信頼性というのは、触覚、味覚、嗅覚、聴覚、視覚の順で薄れていく。

 

人間の進化の歴史は、「弱みを強みに変える」ということを繰り返してきました。
じつは、人間は弱い動物なんです。
それを人間の社会力の源泉にしたからこそ、これほど大勢の人が寄り合いながら、類人猿にはない高い結束力を持ち得ることができたんだと思います。
「情報社会」はそこから始まってるというふうに思います。

 

虫にしても、動物にしても、小さい頃から自然に接していないと、つき合い方もわからない、つまり、自分でコントロールできるものばかりとつき合っていると、「共鳴」が生まれないんですよね。
これは、予想できない動き方をするものに対して、呼応できる身体をつくる、重要なトレーニングです。

 

学習というのは「自習」と「対話」だと思います。

 

人間っていうのは、じつは情報を交換したいという欲求があった。
なぜかというと、人間同士がつながり合いたかったわけです。
つながるためには、情報が必要であり、つながりを拡大したかった。
ところが、情報化されてしまうと、今度は情報によって人が動かされるっていう時代になった。
情報が信頼をつくるのではなく、情報自体がその信頼を裏切り、自ら一人歩きをして、人間個人を支配していくという話になる。

 

「私」という主体が、データ化されて、それが人間の価値を決めるっていう時代が、迫っているわけです。

 

今や、システム化された情報世界の中に入っているのが本人であって、現物の本人は何かっていうと、ノイズですよ。
システムからは扱えないんだから。

 

日本の島というのは海上交通、水上交通のいろんな中継地になって栄えたんですよ。
それがなくなっちゃって、みんな廃れた。
もう一度、水上交通が発達すれば、これ時間の問題なんですけどね、低コストでかなり重たい荷物が運べる。
しかも地上のインフラは要らないし、山を切り崩す必要もなければ、埋め立てる必要もない。

 

これだけ正確さを求め、科学を発達させて、いろんなものを分析して、物事のメカニズムというのを知ろうとし、加速度的によくわかり始めているのにもかかわらず、自然を壊して、生命の危機にすら瀕している。
人間の無謀性と言いますかね。

 

「社会脳」っていう仮説があるんですよね。
今の人間の脳みそは、150人ぐらいの集団で生きるのに適しているというんです。
150人という数の中で、人の顔を覚え、共感を高めて、いろんな人たちとそれぞれ違う関係を結ぶということが、脳の記憶量を高める作用をしたんだろうって、単純に考えていますけどね。

 

いまの日本社会は、「感じない人」を大量生産しているんじゃねえか、っていう気がしてしょうがない。

 

こぼれ落ちていくものほど、価値がある。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1683-1】弱みを強みに変える方法を考える

【1683-2】学習するときは、「自習」と「対話」を意識する

【1683-3】土(自然)に触れる機会をもつ

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】虫とゴリラ
【著者名】養老孟司山極寿一
出版社毎日新聞出版
【出版日】2020/6/2
オススメ度★★★★☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養生き方自然科学
【頁 数】240ページ
【目 次】
プロローグ 共鳴する世界
第1章 私たちが失ったもの
第2章 コミュニケーション
第3章 情報化の起源
第4章 森の教室
第5章 生き物のかたち
第6章 日本人の情緒
第7章 微小な世界
第8章 価値観を変える
エピローグ 日本の未来像

 

この本が、あなたを変える!

虫とゴリラ
養老孟司、山極寿一
毎日新聞出版 2020-6-2
売上ランキング(公開時):2,043
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養老孟司さん、山極寿一さん
素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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