【書評:1674冊目】経済成長なき幸福国家論(藻谷浩介、平田オリザ)

【いつまで登山を続けるのですか?】
地域エコノミスト・藻谷浩介氏と劇作家・平田オリザ氏が、『経済成長なき幸福国家論』と題して、成長はしないけれど貧乏にはならない、下り坂時代の幸福国家論を考察する一冊。

■書籍の紹介文

競争社会という山。
あなたはどこまで登山を続けますか?

 

本書は、「人口減少時代の勝ち組は東京だけ」は幻想であると指摘し、成熟した日本社会がこれから目指すべき『幸福国家論』を考察する一冊。

 

成熟した日本社会は、たとえるなら、気候も住み心地もバツグンの軽井沢やスイスのような”高原”地帯です。
目の前を楽しむだけで、楽しく幸せな生活を送ることができる幸運な環境に住んでいるのです。

 

それにも関わらず、経済成長、グローバル競争など、さらに上を目指そうと国は躍起になっています。
理想的な”高原”に暮らす国民に対して、「そこでは生き残れない!エベレストの山頂を目指せ!」と大号令をかけているようなものです。

 

タチが悪いのは、
・多くの国民が、国の大号令を正しいと思い込んでいる
・目指せ!というのに、登り方(教育)は教えてくれない
・山頂を目指さない人は負け組であるかのような刷り込みがされている
といった空気に、国中が覆われていることです。

 

この空気の影響で、多くの人が田舎を捨てて東京を目指す。
そして東京で、99.9%の人が登ることのできない山頂を目指し続けているのです。

 

この覆われた空気を払うために、「幸福国家論」を提唱しているのが本書です。
対談形式でまとめられているため、立場の違う意見が共存していて立体的に考えることができます。

 

単なる、東京一極集中反対!や地方礼賛!と叫ぶだけの本ではありません。
当然、国が進める地方創生とも明確に一線を画しています。

 

×田舎は仕事がない
○島根県よりも東京のほうが失業率が高い

 

×都会のほうが生産性が高い
○田舎の農業のほうがはるかに生産性が高い

 

こうした、自分で調べればすぐにわかる”事実”をもとに議論を進めています。
”事実”だけが、理想的な”高原”に暮らしていることを認識させてくれる唯一の薬だからです。

 

あとは、自分をどこで生かすか、自分で考えるだけです。
そのときの1つの視座として、一読の意義のある一冊だと感じます。

 

◆下り坂も楽しめる。

経済成長なき幸福国家論
藻谷浩介、平田オリザ
毎日新聞出版 2017-9-21
売上ランキング(公開時):85,600
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■【要約】15個の抜粋ポイント

損をしたくないのであれば、もっと虚心坦懐に歴史に学び、事実はどうなっているのかを見極め、道理の筋を通して、危険を回避しなくてはいけません。

 

日本はとてつもなく中途半端にでかい国で、人口5000万人以上の国で教育や文化を中央集権で支えているのは社会主義だったロシアと共産主義の中国、そして日本だけです。
ドイツでは州政府が教育文化をになう。
アメリカはもちろん、文科省の役割は各州が持っている。
1.2億人を1つの教育文化政策で統治するのはもう無理だから、分権した方がいいだろうと思います。

 

先行逃げ切りはありません。
常に楽しみながら工夫し努力できることが、下り坂の時代の処世術なのだと思います。

 

「お金の効率」だけが物差しだけの議論を続けていくと、最後は「資源もない、天災の多い日本列島で工業国をやっているのはやめて、アメリカに移れば」という話になりかねません。
人はお金の効率のために生きているのではない。
現実として、「効率がいい」「生産性が高い」とされる首都圏では生まれる子どもがどんどん減っています。
東京はある意味、人間という生物種の存続が難しいところまで、いろいろやりすぎてしまった場所なのです。
人が自足して楽しく生き、同じ数の次世代が生まれ続けている海士町のようなところこそ、存続すべきです。

 

実際問題、畑一枚耕しているだけで老後の安心度は全然違うのです。

 

地域文化、企業文化を早い時期に刷新したところが、生き残っていくのではないかと思います。

 

いくら高齢化を極めようとも「ある年代から下の数は一定」という状況を作り出せると、その後数十年かけて総数の減少も止まっていきます。
自己決定をして田舎を選んだ人のDNAが多く残れば、日本人自体の気風もそういう傾向になっていくでしょう。

 

もちろん日本は立派な先進国です。
住みよい、暮らしやすい、安定した国です。
ただ、唯一ではなくなった。
そのことくらいは認めないと、話が先に進まないと思うのです。

 

これからは、それをイノベーションと呼ぼうが地域創生と呼ぼうが構わないのですが、とにかく何かの付加価値をつけていくしか日本に生き延びる方法はない。
付加価値は、他者との違いです。
それは、長期記憶の組み合わせからしか生まれない。

 

地方ほど生産性の上昇が激しいというのは、多くの人が丸暗記している知識には反するけれども事実です。
農業なんて一番そうなのですが、高度成長期の前には数十人でやっていたことを、今は効率よく一人でこなせる。
工場も同じです。
ところが大都市にある得体の知れない各種サービス業は、最後まで非常に効率の悪いことを人数をかけてやっている。

 

2015年の完全失業率を比較すると、東京は3.6、これは世界的にみれば非常に低い数字なんですが、北海道の方が3.4と低い。
島根になると2.8、和歌山は2.6、福井に至っては1.8。
つまり地方の方が失業率は低いんです。
これは一般の人がイメージしている「田舎=仕事がない」とは真逆ですが、ずいぶん前からの事実です。

 

いまは想いが強い子ほど社会貢献したいと思ってますから。
ありがとうと言われることに飢えている。
社会人になって転職したいと思ってる若者も同じですよ。
ところが大人の社会がそれを拒んで古い価値観を強要するから、若者たちがすごく悩むんです。
大人こそ改心しないと、若者たちが自由になれないと思います。

 

いま、多くの発展途上国も皆日本のシステムを真似しています。
日本礼賛本では、「だから日本スゴイ!」ってことになるわけですが、逆の見方をすれば、日本の教育システムはいまも発展途上国段階でとどまっているということですね。

 

多数決の結果と真実が一致することはめったにありません。
(略)
観客が少なくても、視聴率が低くても、いいものはいい。
ものの価値は民主主義では決まりませんよ。
学力も同じで、会って話せば、「あ、この人は頭の回転が速いな」とか、「考えが深いな」とかすぐ分かる。
一緒に仕事をすれば、現場対応力の程度や向き不向きも歴然と分かります。
その際に学歴なんて確認はしません。
そんな情報を評価軸に使うと、かえって判断を誤って効率が落ちます。

 

人口が半減の方向に向かって減っていて、エネルギーと食料が足りる方向に向かっている日本の将来は、本当は明るいわけです。
自信を持って、堂々と自己決定をして、コミュニケーションしながら仲間をつくって暮らしていけばいい。
そういう展望がないから、都会で無駄な昇進を競う。
地方の駅前に、廃墟になるのが必然のビルなんかを建ててしまう。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1674-1】家庭菜園を行って食物の収穫を体験する

【1674-2】自己決定力を磨く

【1674-3】評価よりも自分の直感を大事にする

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】経済成長なき幸福国家論
【著者名】藻谷浩介平田オリザ著者情報
出版社毎日新聞出版
【出版日】2017/9/21
オススメ度★★★★☆
こんな時に生き方に迷ったときに
キーワード生き方考える社会
【頁 数】192ページ
【目 次】
1章 上り坂から下り坂へ、時代の節目を生きる
2章 地方の活力に学べ
3章 下り坂か、高原か
4章 おもしろい生き方ができる、おもしろい国

 

この本が、あなたを変える!

経済成長なき幸福国家論
藻谷浩介、平田オリザ
毎日新聞出版 2017-9-21
売上ランキング(公開時):85,600
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藻谷浩介さん、平田オリザさん
素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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