【書評:1617冊目】ベストセラーの値段(水野俊哉)

【ベストセラーは、才能より仕掛けが生む!】
作家・水野俊哉氏が、『ベストセラーの値段』と題して、ベストセラーはお金をかければ作ることができると提起し、再現性のある出版マーケティングの手法を解説する一冊。

■書籍の紹介文

ベストセラーはつくられている。
こう聞いて、どういう気持ちを抱きますか?

 

本書は、出版業界の現状や仕組みをあきらかにしながら、出版不況の中でもベストセラーを生み出す、再現性のある出版マーケティングの手法を解説する一冊。

 

「お金をかければベストセラーはつくり出せる」がテーマの本です。
「お金をかければ出版できる」ではありませんので、認識違いしないように注意しましょう。

 

つまり、一冊の本をどうやってたくさん売るか、本をどう本業に活かすか。
その戦略を考えるマーケティングを学ぶために書かれています。

 

出版に関わっている人にとっては、ごく自然な内容。
出版業界を知らない人にとっては、暴露、裏事情と感じる内容だとおもいます。

 

書籍とは、著者自身が一文字一文字に魂を込めて書き上げるもの。
ベストセラーとは、みんなが認めた結果論であり、仕掛けの影響などないもの。

 

多くの人が、こうした尊くて崇高なイメージを書籍に持っています。
しかし、紛れもなく出版はビジネスです。

 

出版社も著者も、いい書籍を多くの人に届けたい(=売りたい)とおもって取り組んでいます。
だから、そこにマーケティング戦略が存在するのはあたりまえのことなのです。

 

それを、崇高なイメージを壊されたくないと、固定概念に固執しても意味がありません。
正当な方法ならば、むしろ積極的に活用するのが本来の姿勢です。

 

出版社は「こんな本を世に出したい」という考えがあり、その基準で企画を精査するのが基本です。
その上で売れるかどうか(採算が合い、儲けが出るか)も熟慮して出版を決めています。

 

◎企画書をとおすためのアプローチ
◎出版社の出版決定へのハードルを下げるアプローチ
◎ベストセラーへの流れをつくるためのアプローチ
◎出版後の流れをつくるためのアプローチ

 

これらすべてが、本書で書かれている”出版マーケティング”になります。
出版を考えている人にとって、少なくない気づきを与えてくれる内容だと感じます。

 

出版する権利をお金で買おう、ベストセラーをお金で買おう、という話ではありません。
ベストセラーにつながる、販促マーケティングにお金を投資しようという話です。

 

次のヒット商品を目指して、あらゆるビジネスがCM・広告などの販促に投資しています。
それと同じことを、書籍だけがしてはいけないということはありません。

 

個人的には、ごくごく普通に行われていることだと感じます(出版関係者と接する中での肌感覚として)。
ビジネスとして出版を考えるのなら、最低限理解しておくべき仕組みです。

 

◆才能以上に仕掛けが大事!

ベストセラーの値段
水野俊哉 秀和システム 2020-1-24
売上ランキング(公開時):181,227
Amazonで探す 楽天で探す

■【要約】15個の抜粋ポイント

ひとつひとつの書籍はあまり売れないが、月々の支払いをこなすためにたくさんの種類を作ることでなんとか埋め合わせているのです。
もし出版するものがなくなったり、取次からのお金が払われなくなったらその瞬間に経営が立ち行かなくなる、大手出版社でさえそんな究極の「自転車操業」が行われているのが出版業界です。

 

ここ数年ベストセラーになっている書籍というのは、そのほとんどが戦略的なマーケティングに基づいたものです。
あえて過激な言い方をするならば「お金で作られたベストセラー」なのです。

 

「本の売り方」「マーケティング力」で勝負しなければならない、というのが現代の出版業界です。

 

本を出している人=その道の専門家である、これはほとんどの人が幼少期から自然と刷り込まれている価値観と言って良いでしょう。

 

著者のある先生、という肩書きが、まるでその人の背中から光が差しているように、見る者の行動に影響を与える心理傾向が「ハロー効果」(背光効果)です。
だから自分の持っている能力、商品の素晴らしさを有効に伝えるための肩書として、多くの経営者が「出版」という方法を選んでいるわけです。

 

本質的にはあらゆるビジネスにおいて「著書がある」というブランド価値はプラスになりえますが、それが特に大きいのは不動産、コンサルタント、セミナーや講演活動、ウェブビジネス、クリニックの5種類だと思っています。

 

書店買取といったプロモーションも行っていたと聞きますが、この『ゼロ』が40万部のヒットとなったことで、堀江氏は一躍「すべての出版社が本を出したい著者」になりました。
40万部売れたあとならば、多少不調でも数万部は売れるだろう、という判断をどこの出版社もするわけです。
そうして様々な出版社からのオファーを受け、毎月のように本を出すことでビジネスの専門家という「肩書」と、そのメッセージに共感したファンたちからの「信用」を築くことができました。

 

著者がお金をかけてベストセラーを作り本業でその費用を回収する、という出版マーケティングの原型を作ったのが2005年に出版された『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の山田真哉さんです。

 

基本的に世の中は「売れているものがさらに売れる」ようにできています。

 

ビジネス書の初版部数はたいていが3000部〜5000部といったところです。
これの2〜3割と考えて1000部の自己買取ができるのであれば、出版社側もかなりあなたの本を出しやすいと言えるでしょう。
1冊1500円とすれば1000部で150万円。
もちろん、企画の内容など他の要素にも左右されるものではありますが、これがあなたが著書を出したいと思ったときに用意すべき金額と言えるでしょう。

 

音楽であれ漫画であれ、分業制で作品を作ることはよくあることです。
そう考えれば書籍だけが「ゴーストライター」などという表現で、分業するのが後ろめたいことであるかのような表現を使っているのがおかしい、とすら感じます。
というわけで、経営者がマーケティングのために出版を使うのであればライターを起用するのがオススメです。

 

普通の人が持っていない何かしらの経験やノウハウを持っていれば良いわけです。
その著者が持つコンテンツを素材として、あとはそれを編集者やライターといった専門家がおいしい料理に仕上げる、というのが現在多くの書籍の制作現場で見られる分業体制です。

 

一番最初の売上、すなわち初速で「この本は売れている本である」と認識されるかどうかが、その後長期間の売上を左右する、ということです。

 

1つだけどんな著者にもできて、それでいて高い効果を誇る方法があります。
それは、書店買取、すなわち自ら書店をめぐって自分の本を買うという方法です。
この方法の信者は意外に多く、誰もが名を知るベストセラー著者も、デビュー作では「現場の空気を動かせ」という編集者の指示のもと、大型書店を回っては数冊ずつ自分の本を買ったといいます。
この伝説のため、発売直後に山手線をぐるぐると何周もする著者の姿を今でも見かけることができます。

 

「仕掛けを正しく利用すれば誰でも成功できる」ということです。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1617-1】自分独自のコンテンツをつくる

【1617-2】自分独自のコンテンツにつながる発信を継続的に行う

【1617-3】出版を個人戦ではなくチーム戦と捉えて販促を考える

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】ベストセラーの値段
【著者名】水野俊哉著者情報
出版社秀和システム
【出版日】2020/1/24
オススメ度★★☆☆☆
こんな時に明日のマーケティング力を磨きたいときに
キーワードアイデアセルフブランディングSNS活用
【頁 数】189ページ
【目 次】
第1章 出版業界に未来はあるのか
第2章 投資としての出版ビジネス
第3章 作られたベストセラーたち
第4章 ベストセラーの作り方 出版のやり方編
第5章 ベストセラーの作り方 効果的な販促編

 

この本が、あなたを変える!

ベストセラーの値段
水野俊哉 秀和システム 2020-1-24
売上ランキング(公開時):181,227
Amazonで探す 楽天で探す

水野俊哉さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

■お知らせ

▼書評ブロガーの読書術を公開中!

▼【聴いてね♪】書評ラジオ番組
「米山智裕のBook of the Week」

▼【仲間大募集中!】101年倶楽部

▼「いいね!」応援をありがとうございます!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る