【書評:2052冊目】ライティングの哲学(千葉雅也、山内朋樹、読書猿、瀬下翔太)

【人はなぜ、苦しみながらも書くことをやめないのか】
千葉雅也・山内朋樹・読書猿・瀬下翔太の四氏が、『ライティングの哲学』と題して、書けない悩みをさらけ出しながら、「書くとは何なのか?」と執筆論を語り合う一冊。

■書籍の紹介文

文章を書く手が止まったとき。
あなたは、どんな感情におそわれますか?

 

本書は、4人の執筆家が各々抱える「書けない悩み」をさらけ出しながら、どうすれば書けるのか、どうしたら書き終えられるのかなど、『書くことの本質』を探求するように語り合う一冊。

 

書店には、多くの文章術に関する書籍が並んでいます。
どの書籍も、いかに書くかと有用な知識をたくさん教えてくれます。

 

そうした書籍を読んでいるとき、たまに思うことがあります。
「この本の知識を生かすところまでたどり着けないときは、どうしたらいいんだろう?」と。

 

大抵の場合、この疑問は通り雨のように消えていきます。
「どうしたらいいんだろう?って悩まないために読んでいるんだろうが!」という、正しいのか間違っているのかよく分からない自己ツッコミとともに。

 

ただ、ごく稀にどうしようもない嵐に襲われることがあります。
「書きたくないなら書かなきゃいい!」「無理して書いた文章なんて役に立つのか!」「なんで自分から苦しみにいっているんだ!」「でもとにかく書かないと!」といった不協和音が脳内に鳴り響き続けるのです。

 

そして、ふいに訪れます。
白紙の状態を前にした、完全なるフリーズの時間が。。

 

もし、あなたも似たような”沼にハマった”経験を一度でもあるのなら。
本書はとても楽しめる内容だとおもいます。

 

書くことを生業にする執筆家も、自分と同じような悩みを抱えているんだという共感。
「書けない」ことへの備えに、プロはこんなことをしているんだという技術。

 

もちろん、こうしたことも学べます。
ですが、一番の気づきは「なんだかんだ言っても、人間は書き続けるんだ」という達観にも似た感覚です。

 

あっちへこっちへ自由に話が飛ぶ4人の座談会。
ラジオを聴くように聞き耳を立てているうちに、「書く」ことの本質が見えてくる気がします。

 

◆中毒性高し!

ライティングの哲学
千葉雅也、山内朋樹、読書猿、瀬下翔太
星海社 2021-7-23
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■【要約】15個の抜粋ポイント

「制約の創造」こそがとにかくテーマ

 

「よくわかんないな」とか「モヤモヤするなあ」とか「イライラするなあ」とか思って文章が書けないときには、そのモヤモヤやイライラのことも一緒に書いてしまうのも手なんですよ。
後でその部分をカットすればいい。
だから「書けないなあ」とか「これ、よくわかんないんだけど」とか語りおろしみたいに書いてしまって、すると途中から実質的な内容が始まったりする。

 

真似って自分のなかのストックを呼び出すためのトリガーみたいなもので、自分のなかにはストックがたくさんあるんだけど、なんのトリガーもなしに出してくださいって言われても出ない。

 

頭のなかで選択肢をこねくり回すのではなく、具体的に書いてしまうことで、必要ない選択肢が自然に切られていく感覚はあります。

 

使い捨てる「買い物メモ」だと思うから、単語一語か時には略語、順番もバラバラ、何を書いてもいいので、何でも書ける。
気楽に書き捨てられる。

 

次のことは認めなくてはならない。
実のところ、自分に対する要求水準の上昇は、執筆に対する高い意識がもたらすのではなく、ただ<完成させることを引き延ばす>という病の一つの症状にすぎないのだ。

 

フリーライティングで大事なのは、いわば「凝縮的に書こうとしない」こと。
無駄なくコンパクトに整えて書こうとしない。
「えーと」とか「まあそうだな」とか間投詞的なものや、迷いやイライラみたいな情動もそのまま書いてしまう。
冗長な要素も出るに任せて書いていると、アイデアはそのあいだに出てくる。

 

人間は必ず個性的なのであって、何を真似しても当人のスタイルに変形される。

 

無際限な可能性に制約をかけ、具体的なトピックを立ち騒がせて執筆の流れをつくりだすことは、プロジェクトを開始するという点できわめて大事なことだ。

 

よくわからない文章を書いてしまう。
書きながらなにが言いたいのか、いや、むしろこの言葉たちがなにを言いたいのかが、かろうじて見えてくる。

 

苦しい「執筆」を「メモ」の生成に置き換える。

 

「メモ」の分量が最終的に書かなければならない字数の二倍くらいになった段階で、少しずつ「構成」を始める。

 

〆切こそ最高の執筆術だなと。

 

筒井康隆『富豪刑事』は、お金持ちが大量の金を使うことで事件を解決しますよね。
原稿も同じで、情報量を事前にたくさん用意すればどうにかなると考えています。

 

文章を書くときも罪の意識がつきまとう。
1回なにかやらかしたとしても別にいいっていうか、罪責感と結びつけないようにと考えているんですが。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2052-1】文章が書けないときは、その時の情動をそのまま書き出してしまう

【2052-2】頭のなかで選択肢を思案せず、選択肢を具体的には書き出して考える

【2052-3】文章を書くときは〆切を設定する

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】ライティングの哲学
【著者名】千葉雅也著者情報
【著者名】山内朋樹著者情報
【著者名】読書猿著者情報
【著者名】瀬下翔太著者情報
出版社星海社
【出版日】2021/7/23
オススメ度★★★★☆
こんな時に書く力を身につけたいときに
キーワード哲学文章力思考
【頁 数】272ページ
【目 次】
座談会その1:挫折と苦しみの執筆論
断念の文章術 読書猿
散文を書く 千葉雅也
書くことはその中間にある 山内朋樹
できない執筆、まとめる原稿ー汚いメモに囲まれて 瀬下翔太
座談会その2:快方と解放への執筆論

 

▼さっそくこの本を読む

ライティングの哲学
千葉雅也、山内朋樹、読書猿、瀬下翔太
星海社 2021-7-23
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千葉雅也さん、山内朋樹さん、読書猿さん、瀬下翔太さん、
素敵な一冊をありがとうございました!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

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