【書評:2045冊目】植物に死はあるのか(稲垣栄洋)

【人間はなぜ動き、植物はなぜ動かないのか】
植物学者・稲垣栄洋氏が、『植物に死はあるのか』と題して、”ある”学生の問いから始まる一週間を物語調で振り返りながら、生とは何か、死とは何か、命の本質を思索する一冊。

■書籍の紹介文

植物はなぜ動かないの?
子どもにこう聞かれたら、あなたはなんと答えますか。

 

本書は、”ある”学生のメールから始まる植物学者の一週間の苦悩を通じて、生きるとは何か、死とは何か、「生命」の本質を思索する物語調の一冊

 

人間(動物)も植物も、生と死が常に共存した存在なのだ。
だからこそ、与えられた生命を生き、与えられた死を受け入れることは、とても素晴らしいことである。

 

ここへ至るまでの植物学者の苦悩の思索を、物語調に追体験する内容に仕上がっています。
専門的でありながらも、けっして読者を置き去りにすることはなく、ふか〜い思索の森へとあなたを自然と誘っていきます。

 

植物は、その細胞内で葉緑体と共生することで、光合成によるエネルギー生成が可能なため、動かずとも生きていられます。
我々(動物)のように動き回ることは、植物にとってはエネルギーを浪費する無謀な行為というわけです。

 

こうした、小学校の理科で習ったような基本をおさらいしつつ、先ほどのゴールに向かって、怒涛の思索が始まります。
「生きるとは何だ?死とは何だ?」「そもそも生と死の分類に意味はあるのか?」「結局、生命はどんな存在?」などと、ジェットコースターに乗ったように頭の中がグワングワンと振り回されます。

 

教養的であり、哲学的であり、宗教的でさえある。
なんとも不思議な感覚に陥る、それでいて「もっと深く味わいたい」と求めてしまう、とても変な一冊(褒め言葉です!)です。

 

読み終わった後、庭の芝生を踏んだ際におもわず思案してしまいました。
答えがあるようでない、ないようである、不思議な世界にぜひ浸ってみてください。

 

◆悔しいけど、おもしろい!

植物に死はあるのか
稲垣栄洋 SBクリエイティブ 2023-7-6
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■【要約】15個の抜粋ポイント

空気と水だけで、自らエネルギーを作り出すことができるのだから、動き回る必要はない。
むしろ動かずにじっとしていた方が、作り出したエネルギーをムダ使いせずにすむ。
そのため、植物は動かないのだ。

 

「光合成」という仕組みは、その後の生命の進化の歴史に大きな影響を与えることになったのだ。

 

光合成を行なう小さな単細胞生物は、現在でも存在していて、シアノバクテリアと呼ばれている。
つまり、シアノバクテリアとの共生を実現した単細胞生物が、植物へと進化を遂げていくのだ。
このように、植物と動物は、その起源が明確に異なる。
つまり、シアノバクテリアを体内に取り込んだか、取り込まなかったか、それだけが植物と動物の違いなのだ。

 

植物と動物は違うように見えるが、いつどのように袂を分かつようになったのかは、明確にわかっているわけではないのだ。

 

木から草が進化をしたのだ。

 

木は何年も掛けて大きく育つ。
しかし、それでは環境の変化についていくことができない。
そのため、短い期間で子孫を残す草に進化することによって、スピードアップを図ったのである。

 

種子繁殖はコストが掛かるが、病気で絶滅をするリスクは回避できる。
そして、病気以外にも、環境の変化に対応することも可能となるのだ。

 

植物はつながっています。
たくさんあるとも言えますし、一つだとも言えます。

 

木の幹には年輪が刻まれている。
この年輪が、細胞たちが生きていた痕跡である。
こうして内側の細胞は次々に死んでいく。
そして死んだ細胞が蓄積していくことによって、木は大きくなってくるのだ。
(略)
私たちの体も生きている細胞と死んでいる細胞からできている。(略)
爪の細胞は生まれてから、しばらくすると、核を失い、死んだ細胞となる。
そして、死んだ細胞として、私たちの指先を守るのである。

 

木は死んだ細胞と生きた細胞でできています。
それは生きているとも言えるし、死んでいるとも言えます。
生きていることと死んでいることは、常に共存しているのです。
生きているということは、生と死がキメラになっていることなのです。

 

生物が死ぬのは当たり前ではない。
生物は進化して死ぬようになったのだ。

 

新しい命を宿し、子孫を残せば、命のバトンを渡して自らは身を引いていく。
この「死」の発明によって、生命は世代を超えて生命のリレーをつなぎながら、永遠であり続けることが可能になったのである。
永遠であり続けるために、生命は「限りある命」を作り出したのである。

 

私たち地球に生きる生物の体の構成物は、宇宙のどこか遠くで生まれたものなのである。

 

宇宙にあるすべてのものは、すべて死ぬ。
私たちは、そんな宇宙の片隅に生きるちっぽけな生命体だ。
そんなちっぽけな生命体が、生きることや死ぬことの意味を考えようというのは、ずいぶんとおこがましいことに思える。

 

生きることも不思議です。
死ぬことも不思議です。
でも、命ってとても美しい。
与えられた命を生きて、与えられた死を受け入れるってすばらしいことですね。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2045-1】物事は大きな視点で捉える

【2045-2】謙虚に振る舞う

【2045-3】流れに任せるように力まず生きる

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】植物に死はあるのか
【著者名】稲垣栄洋
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2023/7/6
オススメ度★★★★☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養サイエンス哲学
【頁 数】216ページ
【目 次】
月曜日 どうして植物は動かないのか?
火曜日 植物と動物はどこが違うのか?
水曜日 草って何?
木曜日 木は何本あるのか?
金曜日 木は生きているか?
土曜日 植物は死ぬのか?
日曜日 植物は何からできているのか?

 

▼さっそくこの本を読む

植物に死はあるのか
稲垣栄洋 SBクリエイティブ 2023-7-6
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稲垣栄洋さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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