【書評:2009冊目】実施する順に解説!「マーケティング」実践講座(弓削徹)

【マーケティングで進路を定めよ!】
日本工業大学大学院教授・弓削徹氏が、『実施する順に解説!「マーケティング」実践講座』と題して、かけ声だけで終わらない、実際に現場で使えるマーケティング手法を解説する一冊。

■書籍の紹介文

マーケティング。
効果を実感できた経験を、どれだけお持ちですか?

 

本書は、現場に混乱を招くだけのマーケティングからの脱却を宣言し、「何をすればいいか」が具体的にわかる、”現場ファースト”のマーケティング手法を解説する一冊。

 

マーケティング。
この言葉自体も横文字ですが、関連する用語も文字通り、横文字のオンパレードです。

 

ゆえに、用語の定義・理解も曖昧なまま、各々がもっともらしくマーケティング用語を使って語り出す。
結果、現場に混乱を来たしただけで、得られた効果など望むべくもなく、雲散霧消・・・というパターンは枚挙にいとまがありません。

 

なんで、こうも下手くそな状況は生まれてしまうのでしょうか。
おそらくは、現場が自発的に求めたものではない、という意識から来るのだとおもいます。

 

経営者が、どこかで聞きつけた新しいマーケティング手法を「我が社も導入する!」というパターン。
コンサルタントが、これ見よがしに「御社にかけているのはマーケティングだ!」というパターン。

 

要するに、落下傘的に降ってきたものをやらされている。
現場の状況を鑑みず、マーケティングのフレームワークに業務を無理やり合わせることを求められるわけです。

 

これでは、面従腹背。
現場の士気は下がったまま、横文字だけが飛び交う虚しい状況に陥ってしまいます。。。

 

とはいえ、マーケティングそれ自体に罪はありません。
むしろ、さまざまな失敗や知見のもとに生み出された、利益をもたらす”武器”となるものです。

 

つまり、マーケティングという”武器”の使い方を正しく学ぶことではじめて、正しく生かすことができるのです。
そして、一番学ぶべきは、実際にそれを駆使して業務にあたる『現場』です。

 

そこで学びたいのが、本書。
「マーケティングは現場で生かせてこそ!」の信念のもと、大企業から中小企業まで、2200社超に実務的指導をしてきた専門家が著者です(「ノートパソコン」という言葉の生みの親でもあります)。

 

現場がマーケティングを実施する手順に沿って、全体像を網羅的に解説していきます。
1章から順に学び実践していくことで、現場での生かし方が自然と身につくようになっています。

 

横文字をそのままにせず、随所に”現場感覚”の言葉に置き換えて解説している点に信頼を感じます。
体系化して整理されているので、マーケティング用語同士の関係性もひと目で理解でき、苦手意識を持っている方にも学習しやすいでしょう。

 

「現場叩き上げのマーケティングコンサルタント」と「マーケティング論を教える大学院教授」。
著者のこの2つの肩書きが、見事にマッチした力作だとおもいます。

 

マーケティングを学ぶなら、まずはこの一冊から。
自然とそう思える、完成度の高い”教科書”です。

 

◆やるべきことがわかる!

実施する順に解説!「マーケティング」実践講座
弓削徹 日本実業出版社 2023-5-19
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■【要約】15個の抜粋ポイント

重要なのは、「何を、誰に、どう売るか」というシンプルな問いに答えること。
選んでもらうために構築すべき「顧客との関係のすべて」をどう考えるかなのです。

 

仮説を立てるとは、手の中にある情報という名の材料を見て矛盾のないストーリーを構築することです。
事実や現象、証言、エビデンスなどを集め、それらと整合性のとれるあり方を類推する。
つまり、目の前に並べた情報の断片が矛盾なく成立する道筋とはどのようなものかを考えるのです。

 

●マーケティング調査の手順
(1)調査の目的を決める
(2)調査の種別を決める
(3)調査項目を決める
(4)調査対象を決める
(5)調査を実施して分析する

 

自社の得意技術を、ほどよくニッチな市場のニーズを満たす商品にするためには、どのような開発をしたらよいかーーーこう考えることが事業分野選択の大きなカギとなります。

 

目の前にいないお客様の心情を思いやることがマーケティングであるなら、顧客の立場からの価値を問う4C分析のほうが基準として正しいといえるのではないでしょうか。

 

言葉では何とでもいうことができるけれど、行動には隠された本音が現れるものではないでしょうか。
「観察調査」とは、ユーザーが商品をどのように使用するか、売場でどんな行動をとるか、などを観察することからヒントを得ようとするものです。

 

商品コンセプトは、1文で商品の価値、キモとなる内容がズバッと伝わることが使命です。
そして、そのエッセンスを短いキーワードに変えることができれば、もうそれはネーミングだといってもよいでしょう。

 

●低価格にしてはいけない理由
(1)利益を出しづらくなる
(2)値引き競争になり会社が疲弊する
(3)安モノを売る会社と思われる
(4)客質が低下してクレームが増える
(5)ほかに低価格が現れればお客様は去る
(6)値下げをすると優良顧客が不満を抱く
(7)適正価格で売る努力や工夫が生まれなくなる

 

人は買物をするとき、商品価格に対する自分なりの基準点や相場観を持っています。
提示された価格がそれより安ければ「おトクかもしれない」と思いますし、高ければ「これを買うとソンをするのでは」と警戒をします。
このような基準価格のことをリファレンスポイント(参照点)と呼びます。
リファレンスポイントでは、損失を実質より強く受け止める心理的傾向があることがわかっています。

 

流通の主な機能には次の「3流」があります。
(1)商品の流れである物流
(2)代金の決済にかかわる商流
(3)情報の流れであるデータ流

 

●商品のバリューを考える
①商品のベネフィットは何ですか?
②お客様は誰ですか?
③ライバルはどこ(誰)ですか?
④本当のバリューは何ですか?
⑤それを明文化しましょう

 

私の考案した購買決定モデルとしては、「DESCOS」があります。
商品が誰かの不満・不足を解決するものであるとして、SNSなどで偶然出会う、または検索をして出会う、次に同様の商品と比較・検討し、購入に至る。
そして、その体験をレビューやSNSに投稿するのです。
D:Discontent(不満・不足)
E:Encounter(出会い)
S:Search(検索)
C:Comparison(比較)
O:Order(購入)
S:Share(共有)

 

内部的な用語など、どうでもいいのです。
直接、顧客が目にするキーワードがすべてなのです。

 

(ブランドとは)「顧客の心の中に、商品価値の居場所をつくること」

 

・Value(価値)
・Rareness(希少性)
・Imitability(模倣困難性)
・Organized(組織化)
こうした検討の中から、何を伸ばし、何を捨てるかという、選択と集中の根拠が見つかります。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2009-1】自分/自社の商品について、「何を、誰に、どう売るか」を明確にする

【2009-2】自分/自社の商品について、ユーザーの行動観察を丁寧に行う

【2009-3】内部的な要素は排除し、徹底的に顧客の目で物事を考える

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】実施する順に解説!「マーケティング」実践講座
【著者名】弓削徹著者情報
出版社日本実業出版社
【出版日】2023/5/19
オススメ度★★★★★
こんな時に明日のマーケティング力を磨きたいときに
キーワード稼ぐ力発想力準備力
【頁 数】356ページ
【目 次】
第1章 マーケティングの手順を知る
第2章 マーケティング調査でテーマを探す
第3章 新規事業・新商品を開発する
第4章 マーケティング調査を有効化する
第5章 選ばれるネーミングを開発する
第6章 もっとも有利な価格に決定する
第7章 流通チャネルを決める
第8章 プロモーションを実施する
第9章 キャッチコピーを書く
第10章 ブランドを育成する
第11章 その先のマーケティング技法で戦う

 

▼さっそくこの本を読む

実施する順に解説!「マーケティング」実践講座
弓削徹 日本実業出版社 2023-5-19
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弓削徹さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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