【拡大から戦略的縮小へと思考を入れ替えろ!】
人口減少対策総合研究所理事長・河合雅司氏が、『未来の年表 業界大変化』と題して、これから猛烈な速度で起こる日本社会の変化を描きながら、成長モデルを考察する一冊。
もくじ
■書籍の紹介文
あなたの日常生活。
20年後はどうなっているとおもいますか?
本書は、「人口の減少」と「労働/消費人口の減少」の”ダブル減少”によって起こる日本社会の変化を描きながら、国を前に進めていくために必要な成長モデルを考察する一冊。
人口が減少すれば、働く労働者も減少する。
人口が減少すれば、物を買う消費者も減少する。
すると、企業は労働者一人あたりの生産性を高める必要があり、消費者へは付加価値(高利益)の高い商品を提供しなければならない。
この至極真っ当な戦略を徹底する必要性が、これでもかと描き出されています。
そして、著者はこれらの流れを集約してひと言にまとめています。
それが『戦略的に縮む』です。
人口減少は確実にやってきます。
であるなら、座して待つのではなく、人口減少しながらも経済成長できる方法を見出し実行していく。
いい加減、頭の中の発想を入れ替えなさい!
淡々とした論調にあっても、著者の熱い檄を感じる内容になっています。
構成は、二部構成。
第一部では、現状のまま進んだ先にある主だった業界の未来予想が描かれています。
製造業/物流業の若手不足が招く悲惨な未来の姿や、医師不足ではなく患者不足が起きる医療業界など・・・。
おもわず文字をなぞる目を止めてしまうフレーズが、たくさん出てきます。
第二部では、『戦略的に縮む』ための10のステップが提言されています。
経営者や政治家の将来に向けた発言と比較しながら読むと、ご自身の思考が深まっていくとおもいます。
大切なことは、自分事として考え行動を起こしていくこと。
「国がなんとかするだろう」といった他力本願や、「うちは大丈夫」といった現実逃避では、これから猛烈な速度で起こる変化には耐えられません。
まずは、本書で未来の姿を覗いてください。
受ける影響を少しでも減らしていくために。
◆”炎”を消さないための戦略を今。
未来の年表 業界大変化
河合雅司 講談社 2022-12-15
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■【要約】15個の抜粋ポイント
少子高齢化や人口減少がもたらす製造の現場の若手不足は、日本の「ものづくり」のみならず日本経済にとってのウイークポイントである。
経産省などの「IT人材需給に関する調査」(2019年)が厳しい調査を示している。
IT人材は2018年の103万1538人から2030年には113万3049人にまで増えるものの、この年に想定される需要を満たすには44万8596人足りないと見積もっているのだ。
もしIT需要が想定される中で最も大きくなれば、最大約78万7000人不足するとしている。
これまでの農産物や加工食品は「おいしさ」や「見栄え」が価値を向上させる大きな要件となってきたが、これからは、そうした要素に加えて長期にわたって鮮度が落ちないようにする革新技術が必須となる。
東京一極集中は弊害も多く、地方移住政策を否定するつもりはない。
どこに住むかは個々人の判断であるが、税金を使ってまで将来的な過疎地を拡大するような政策には首を傾げざるを得ない。
鉄道の赤字ローカル線の存廃問題は、過疎地域においてさまざまな生活必需サービスが維持できなくなってきている現実を突き付けただけではなく、人口減少社会における「多極分散」の限界の危うさも教えている。
日本全体で見ると「患者不足」に転じるタイミングはそんなに遠くない。
厚生労働省の資料によれば、2024年度から開始予定の医師の働き方改革に合わせて労働時間を週60時間程度に制限するなど業務の見直しをした場合には2029年頃に約36万人で、週55時間程度とした場合でも2032年頃に約36万6000人で需給が均衡し、その後は医師が過剰となる。
国内マーケットが急速に縮小する社会において、パイの奪い合いをしても誰も勝者にはなれない。
二重の意味で縮んでいく国内マーケットと勤労世代の減少という「ダブルの変化」に対応するためには、追い込まれる前に戦略性をもって自ら組織のスリム化を図ることである。
それが「戦略的に縮む」ということの意味だ。
マーケットが縮小する以上、GDPや売上高が減るのは仕方ない。
それをカバーするには、製品やサービス1つあたりの収益性を高めることだ。
「薄利多売」から「厚利少売」(販売する商品数を少なく抑える分、利益率を大きくして利益を増やすビジネスモデル)へのシフトである。
これまでの多くの日本企業に見られるような、経営の結果として企業価値が創造されるという考え方ではなく、企業価値を創造するためにどういった経営をすべきかという「企業価値創造」の視点が求められる。
外国人労働者の来日に過度に期待し、人手として当て込むことはかなり危険だ。
もはや勤労世代が減ることを前提として企業活動を機能させていく術を考えなければならないのである。
勤労世代の減少規模を考えると、従業員1人あたりの労働生産性の向上を図るほうが賢明である。
「戦略的に縮む」過程において不要部門をリストラしたことで生じた余剰人材を、「残す」と決めた部門にシフトし、戦力として活用すべくリスキリングすることが喫緊の課題となる。
勤労世代が減るということは、従業員一人一人に求められる責任が重くなるということでもある。
働く全員が戦力となることを目指し、それぞれの能力に応じて経営戦略に基づくミッションを着実に達成していくしか、日本経済を成長させる策はない。
人口減少社会においては「分散」は”禁止ワード”だが、とりわけ数が少なくなる若者をバラバラにしてはならない。
「多極集中」というのは聞き慣れない言葉だが、具体的には全国各地に「極」となる都市をたくさん作ろうという考え方である。
(略)
人口規模で言うと周辺自治体も含め10万人程度が想定される。
国交省の資料によれば、人口10万人であれば大半の業種が存続可能となるためだ。
この10万人商圏を生活圏とし、中核的な企業や行政機関を中心として雇用を維持しながら、海外マーケットと直接結びつくことで経済的に自立させるのである。
人口減少が進む日本にとって、外国との関係強化は死活問題となる。
政府間交流も含めて、いまから人口激増エリアの国々へアプローチしなければならない。
■【実践】3個の行動ポイント
【1955-1】自分が関わる業界の将来予測を調べる
【1955-2】生きる上でこれだけは譲れないというものを書き出す
【1955-3】人口激増エリアの国を旅行してみる
■ひと言まとめ
※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作
■本日の書籍情報
【書籍名】未来の年表 業界大変化
【著者名】河合雅司
【出版社】講談社
【出版日】2022/12/15
【オススメ度】★★★☆☆
【こんな時に】明日の仕事力を磨きたいときに
【キーワード】教養、社会、働き方
【頁 数】240ページ
【目 次】
序章 人口減少が日本にトドメを刺す前に
第1部 人口減少日本のリアル
第2部 戦略的に縮むための「未来のトリセツ」(10のステップ)
▼さっそくこの本を読む
未来の年表 業界大変化
河合雅司 講談社 2022-12-15
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河合雅司さん、素敵な一冊をありがとうございました!
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