【書評:1854冊目】頭のよさとは何か(中野信子、和田秀樹)

【学歴的な知性を求めるほど”バカ”になる!】
脳科学者・中野信子氏と精神科医・和田秀樹氏が、『頭のよさとは何か』と題して、頭のよさを知識量に求める日本教育への絶望を語りながら、本物の頭のよさを考察する一冊。

■書籍の紹介文

「頭のよさ」。
あなたはどのように定義しますか?

 

本書は、ともに東大OBである著者が、「東大に行ってもバカはたくさんいる」と放談しながら、知性とは何か、本物の”頭のよさ”とは何か、対談形式で考察する一冊。

 

「頭が良い」とは何か、「頭が悪い」とは何か。
こんなことを考えている時点で、日本教育に蔓延る学歴信仰などの価値観に毒されている。

 

この指摘がとても印象に残ります。
そのうえで、染みついてしまった価値観を一刻も早く捨て去り、「本物の知性を強化せよ!」と警鐘を鳴らしていきます。

 

では、両者が合意する「本物の知性」とは何か。
それは、『誰も知らない世界を知ろうとする熱意』です。

 

イメージとして浮かんだのが、こども時代の「なんで?」のひと言です。
「なんで?なんで?なんで?!!」と、親を困らせたという逸話はこども時代のあるあるだとおもいます。

 

そこにあるのは、純粋な”好奇心”だけです。
学ぶことで自分の知らない世界を知れた”楽しさ”、さらにもっと知りたいという”貪欲さ”

 

これにより、知性はどんどん磨かれて強化されていきます。
これこそが、『誰も知らない世界を知ろうとする熱意』=「本物の知性」なのです。

 

つまり、元来はだれもが「本物の知性」を持っていたことになります。
では、どこで置き忘れてしまったのでしょうか。

 

それが、両者が警鐘を鳴らす”日本の教育システム”。
必ず正解があることに対して、どれだけ満点に近づけるかを競う、クイズ番組のような教育システムです。

 

そして、このシステムのヒエラルキーの頂点が”東京大学”です。
したがって、両者とも東大OBですが煽りすぎな感があるほど、容赦なく斬り捨てていきます。

 

◎「コンテンツ的な学力」は、あてにならない
◎「変な人」との遭遇なしに、これ以上頭はよくならない
◎「空気」が自由を阻む

 

ふたりの中で進む討論のところどころに、ハッ!とさせられる言葉に目が止まります。
その言葉を頭の中で自由に巡らせることも、置き忘れた「本物の知性」を取り戻すことにつながるのだとおもいます。

 

この「本物の知性」を、一刻も早く、ひとりでも多くの日本人が取り戻すこと。
そうしないと、『本当に日本はヤバい!』とふたりが本気で憂いている姿に危機感を覚えます。

 

「知」に量を求めず、「知」に遊びを求める
「知」への姿勢を変えるだけで、「本物の知性」は見えてくるような気がします。

 

◆本物の「知」を取り戻せ!

頭のよさとは何か
中野信子、和田秀樹
プレジデント社 2022-3-31
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■【要約】15個の抜粋ポイント

一事が万事で、どうも日本人は前頭葉機能がうまく使えない。
前頭葉機能というのは、新規のことに対応する能力です。
そんな状態だから、AI新時代に対応できない。
高齢者だけでなく、日本社会全体が。(和田)

 

「やり方」を暗記して使う能力と、システムハックができる能力。
この2つはまったく別物です。
後者が本当の知性というべきものと私は考えていますが、それがないがしろにされているために、多くの問題が起きていると感じます。
「本当の知性」を強化しないとヤバい。
これから来る不確実性の時代に生き残っていくことが難しくなります。(中野)

 

「すごく頭がいい」プラス「脳の老化予防」を実現するための鍵は前頭葉が握っている、と考えているんです。(和田)

 

持っている知識は多少少なくなるかもしれないけれど、むしろ「加工能力」なり「応用能力」なりを磨いて、知識を生かして新しいことを思いついたり、発信できたりすることのほうが、ずっと「頭がいい」と思います。(和田)

 

野心がないというのは、勉強への意欲も薄いということです。(中野)

 

昔話ではなくて、「今度これをやる」とか「こういうことしたい」とか、そういう話をする人じゃないと魅力は感じないですね。(中野)

 

この国は変な国で、「若い人の意見を取り入れたい」などと言いながら、ちっとも取り入れてあげないし、若い人が個性的なことを言ってもあまりウケない。
ところが、年寄りが個性的なことを言うとまあまあ聞く耳を持つんです。(中野)

 

型にはまらない世界に触れることも教育だと思うんです。
変なことをする経験、人と違うことを言う経験、全然意見の合わない人と一緒にいる経験、そして喧嘩する経験もね。
上下関係もなく、どちらが正しいか間違っているかもなく、「それもあり」「これもあり」という経験を重ねることが。(和田)

 

はっきり言えば、賢いかバカかの違いは、「きちんと要求するか」「何も知らずに泣き寝入りするか」にあるといえます。(和田)

 

知っているか知らないかの格差もあるのですが、それと同時に「みんなが気づいていないことに気づく力」の有無も大きいと思います。(中野)

 

知識は材料としてあってもいい。
けれど、それは「レゴブロックで何を作ろうか?」みたいな次元の話で。
たしかにレゴブロックをいっぱい持っていたら持っているだけ作れるものも増えますが、そもそも「何を作るか」を発想するのは、また別の能力です。(中野)

 

発想を変えて、「少なくとも昨日より賢くなろう」とか、「1週間前より賢くなろう」と思うようにしたんです。
以前と比べて自分の考えや発想が変化していく部分が何かあれば、それが「正しい進歩」かどうかはわからないけれど、少なくとも生きていて楽しいし、刺激的。(和田)

 

そもそも「頭がいい」「頭が悪い」というのにこだわること自体、ある種の価値観に毒されている証拠かもしれません。
それより、「知を楽しめるか」ということのほうがずっと大事なのかなと思う。(和田)

 

どんな分野であれ、それまで見えなかった構造を解き明かしていくことが、「知」としての本当のキュレーション(情報を選んで集めて整理すること)の妙というか。
発見する力を持ったほうが楽しいよ、と提案したい。
それができるのが、本当の「賢さ」かなと思います。(中野)

 

常識を疑えばいいのに。
自分が楽しいか楽しくないかとか、我慢しているか我慢してないかとか、そういうことをメルクマールにしていいような気がするんですよね。
別に我慢していいことなんてあるわけない。
だから、我慢しないために工夫しないといけないわけですよ。
そうしたひとつひとつの工夫が、ひるがえって人間の頭をよくする可能性は高いと思います。
だから、僕は言いたいわけですよ。
「愚かな知識人より、飢えた知恵者を目指せ」って。(和田)

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1854-1】評価したり推測したりする前に、一度経験すると決めて行動する

【1854-2】毎日新しい発見を1つするつもりで生活する

【1854-3】「したいこと」「やりたいこと」を発信する

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】頭のよさとは何か
【著者名】中野信子著者情報
【著者名】和田秀樹著者情報
出版社プレジデント社
【出版日】2022/3/31
オススメ度★★★☆☆
こんな時に学ぶ力を身につけたいときに
キーワード発想力教養社会
【頁 数】232ページ
【目 次】
序章 本物の「頭のよさ」を考える
第1章 「ど根性勉強」は学歴の高いバカしか生まない
第2章 女性・若者が絶望する国ニッポン
第3章 「知ること」は武器になる、「知らない」と騙される
第4章 知性とは、誰も知らないことを知ろうとする熱意である
第5章 愚かな知識人より、飢えた知恵者を目指せ

 

この本で、あなたは変わる!

頭のよさとは何か
中野信子、和田秀樹
プレジデント社 2022-3-31
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中野信子さん、和田秀樹さん
素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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