【書評:1811冊目】マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ(斎藤幸平)

【資本主義の先にある社会とは…】
経済思想家・斎藤幸平氏が、『マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ』と題して、指南役を務めて話題となったNHK番組「100分de名著」での内容を丁寧に解説する一冊。

■書籍の紹介文

カール・マルクスの『資本論』。
あなたは読んだことがありますか?

 

本書は、社会問題が噴出している今こそマルクスの『資本論』を見直すべきだと提起し、NHK番組「100分de名著」での内容をベースに、『資本論』の世界をわかりやすく解説する一冊。

 

NHK番組「100分de名著」。
25分×4回=100分で、古今東西の古典・名著を読み解く番組です。

 

わたしの大好きな番組で、欠かさず録画しています。
読書が苦手という方は、こうした番組で本の世界を覗いてみるのもいいかもしれません。

 

その番組で取り扱い大きな話題となったのが、カール・マルクスの『資本論』。
本書の監修者である著者も、番組で指南役を務めていました。

 

この番組での内容を、まんが形式と要点をしぼった解説文でまとめたのが本書。
『資本論』の概要と、「カール・マルクス」の人物像に触れる良い機会となる内容です。

 

◎人々が平和で平等に暮らせる社会の姿を描き出そうとした人物
◎環境問題に関心を持ち、サステナビリティに基づく社会のあり方を深く思索した人物

 

カール・マルクスの人物像を眺めると、学生時代に学んだときのイメージと違った印象を受けます。
そのイメージは、共産主義や社会主義による一党独裁国家の思想的支柱となったという人物像からかけ離れています。

 

資本主義の本質的な仕組みこそが、人々を不幸にしていく。
そこから人々を救い出すにはどうすればいいか、考え続けた人物であることが理解できます。

 

そのため、貧富の格差、長時間労働、上がらない給料、増え続けるヘンな仕事…。
現代社会を蝕む状況も、マルクスの知恵を借りれば読み解けることを体感できます。

 

マルクスが憂いたとおり、資本主義の膨張によって社会の亀裂は深まる一方。
だからこそ、資本主義の先の未来を思索したマルクスの『資本論』に学ぶ必要があるように感じます。

 

マルクスの視点を抑えておくことで、未来の動向をみつめる助けとなるからです。
とはいえ、『資本論』の原著は難読本といわれています。

 

そこで、ぜひ本書を活用してみてください。
マルクス専門家の要点を抑えた解説と視覚イメージをつくりやすいマンガが、マルクスの横へとアナタを誘います。

 

◆さすが「100分de名著」の質。

マンガでわかる! 100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ
斎藤幸平 宝島社 2022-1-27
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■【要約】15個の抜粋ポイント

マルクスが指摘した資本主義の矛盾点は、200年以上経た今、より世界中であらわになり、多くの人を苦しめています。
『資本論』は、そうした時代を生きる私たちにとっても道標となる、社会変革に向けた”実践の書”といえます。

 

「労働」とは、ほかの生き物と明確に異なるかたちでの自然への働きかけのことです。
ただし、人間も自然の物質代謝の一部です。
物質代謝とは循環的であり、人間がどのように自然に働きかけたかで、地球のあり方も決まります。
(略)
この循環がマルクスの資本主義システムの理解にとって重要です。

 

わかりやすい例として、ペットボトルの水を思い浮かべてみましょう。
本来なら水は誰もがアクセスできる無料の資源だったのに、いつの間にかお金を出して買うものになってしまいました。
このように、社会の富が次々と商品として姿を変えていくことが、資本主義の特徴だとマルクスは述べています。

 

マルクスは、社会の富が商品化されることに危機感を持っていました。
世の中には、市場の競争やお金儲けに適さないものが、実はたくさんあることを認識しましょう。
多くの人が商品=富だと混同していますが、商品と富はまったくの別物です。
あらゆるものの商品化をこんなに進めていいのかと、問い直してもいい頃です。

 

マルクスは、資本を「運動」と捉え、「価値増殖の運動」として定義しました。
ドイツ語で貨幣を意味する「ゲルト(Geld)」と、商品を意味する「ヴァーレ(Ware)」という言葉を使ったマルクスの説明を紹介します。
マルクスは、資本の運動を「G-W-G’(ゲー・ヴェー・ゲー)」と表現しています。
つまり、資本家は元手となるお金(G)で商品(W)を生産し、価値をつけて市場で売って、利益(G+α=G’)を得ます。

 

「価値」が生産目的の社会では、資本家だろうが労働者だろうが、すべての人間をこの価値増殖の運動に巻き込んでしまう。
そこにゴールはないのです。

 

労働時間を増やせば増やすほど絶対的剰余価値も増えるため、簡単に利益を増やしたい資本家にとっては、「長く働かせる」ことが、いちばん簡単な手段なのです。

 

マルクスに言わせれば、賃上げが実行されたとしても、十分な睡眠時間や家族と過ごす時間、読書や音楽など好きなことに使える時間がないままでは、本当の意味で豊かになったとはいえません。
私たちに必要なことは、「労働時間を短縮すること」なのです。

 

ケインズは、資本主義の発展によって生産力が向上すれば、人々の労働時間は短くなるだろうと予測していました。
「2030年には労働時間が週15時間になるかもしれない。21世紀の人類は、いかに余暇をやり過ごすか、毎日何をして過ごそうかと頭を悩ませるだろう」と予想したのです。
あの数年もするとその2030年ですが、皆さんの周囲はそうした余暇、退屈をやり過ごす遊びで溢れているでしょうか。

 

資本主義は、人間から生き物としての喜びを感じる機会を奪い、荒んだ生活を当たり前にしてしまうのです。

 

「労働力の価値」は、労働者が生活に必要な金額で決まります。
日給1万円もらわないと暮らしていけなかったのに、ファストファッション、ファストフードで安く、1日8千円で生きていけるのであれば、資本家は日給を8千円にできます。
あなたはファストフードを好まないかもしれませんが、同じ仕事で8千円で生きていける、働いてくれる人がいるならば、資本家はあなたではなく8千円の人を雇用するでしょう。

 

資本は、人間からだけではなく、自然の豊かさも一方的に吸い尽くします。
その結果、人間と自然の物質代謝に取り返しのつかない亀裂を生み出す、とマルクスは警告していました。

 

都市が農村に、先進国が新興国に代償を負わせる、こうした様を「外部化」といいます。
今の世代が問題を先送りにして次世代へ負担を負わせることも含みます。
資本主義は価値の増殖を無限に求め、世界中を商品化していきます。
「自分たちがよければ関係ない」と言っても、地球は有限です。
例えば、気候危機が日本ではスーパー台風や酷暑として現れるように、地球上にいる限り、無関係な場所は在りません。

 

意外に思われるかもしれませんが、マルクスは「社会主義」や「共産主義」といった表現は、あまり使いませんでした。
彼が未来社会を論じる際によく使っていたのは「アソシエーション」(自発的な結社)なのです。
アソシエーションには、例えば、労働組合や現代ではNPOなども当てはまります。
マルクスは人々の自発的な相互扶助や連帯を基礎とした社会を目指していました。

 

①環境のリミットを超えず
②社会的基盤が適正に保たれていれば、
⇒人々は安全で、公正な暮らしを送ることができる

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1811-1】『資本論』を読む

【1811-2】自然科学に関する本を読む量を増やす

【1811-3】相互扶助や共同体に関する本を読む量を増やす

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】マンガでわかる! 100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ
【著者名】斎藤幸平著者情報
出版社宝島社
【出版日】2022/1/27
オススメ度★★★☆☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養社会グローバル
【頁 数】192ページ
【目 次】
第1章 資本主義に本質は「商品化」にあった
第2章 効率化しても労働時間が減らないのはなぜか
第3章 イノベーションが人間から働きがいを奪う
第4章 「脱成長」にこそ真に豊かな未来がある

 

この本が、あなたを変える!

マンガでわかる! 100分de名著 マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ
斎藤幸平 宝島社 2022-1-27
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斎藤幸平さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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