【書評:1791冊目】NEO HUMAN ネオ・ヒューマン(ピーター・スコット-モーガン)

【愛のために限界を超える科学者】
科学者/ピーター・スコット-モーガン氏が、『NEO HUMAN(ネオ・ヒューマン)』と題して、難病ALSの発症からサイボーク化へ歩みはじめるまでを語る現在進行形の自叙伝。

■書籍の紹介文

ある日突然障害を発症したら・・・。
そのとき、あなたは何を考えるとおもいますか。

 

本書は、難病ALSの発症から『AIと融合しサイボーグとして生きることを選んだ』科学者が、「人間とは何か」「死とは何か」を考えながら、可能性の限界に挑む現在進行形の自叙伝

 

SFでも、フィクションでもありません。
現在も淡々と進行している、ロボット科学者による”人類初の壮大な実験”の記録です。

 

全身が動かなくなる難病「ALS」。
徐々に機能を失う逆境に挫けず、科学者としての探究心、科学がもたらす未来への確信を胸に、既存概念をつぎつぎと打ち破っていきます。

 

・逆境に直面しても、粘り強く突破口を探り続ける”胆力”
・困難に直面しても、自分を信じて戦い続ける”持久力”

 

現代人に欠けてしまったものを思い出させてくれる感覚を覚えます。
にわかには信じられないストーリーだからこそ、「翻って自分はどうだ?」と考えさせられる内容です。

 

翻訳本の難しいところではありますが、読み慣れていない人には読みづらさを感じるとおもいます。
また、「サイボーグ化」「AIと融合」というキーワードにSF映画のような期待をしている人には「あれ?」となる内容かもしれません。

 

・「人間とは何か?」「死とは何か?」を考える哲学的要素
・自分の可能性を自分勝手に閉じてしまっていないかと自問する自己対話的要素
・自分の心に従って自由に現世を探究しようと喚起する自己啓発的要素

 

こうした要素に触れる本なのだと心に留めて読むと、いろいろなメッセージを受け取れるでしょう。
この、自らの体を実験台にした著者の壮大な試みがどうなっていくのか、今後の展開が楽しみでなりません。

 

さらに、自律型AIへと突き進む流れへの危機感やAI・テクノロジーとどう向き合うべきなのかなど。
このような科学に対する素養を深める一助にもなる一冊です。

 

◆「よりよく生きる」に限界はない!

NEO HUMAN ネオ・ヒューマン
ピーター・スコット-モーガン
東洋経済新報社 2021-6-25
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■【要約】15個の抜粋ポイント

わずか半年足らずのうちに、私はいつの間にか、知的障害を抱えた成人のような扱いを受けるようになっていた。
生まれて初めて、”障害者”の仲間入りをしたのである。
この事実を、少なくとも4カ月は受け入れられずにいた。
ようやく認める気になったのは、どうやらこれがほんの一時期の話ではすみそうになかったからだ。

 

実際に、障害者であることをカミングアウトしたところ、昔ゲイであることをカミングアウトしたときとは大きな違いがあることがわかった。
みんな総じて親切なのだ。

 

この出来事(注・暴走スクーターの接近事件)が分岐点だった。
私は知らないうちに、人生の重大なターニングポイントを2つも通過してしまっていたのだ。
1つは、持ち前の頭脳のおかげで、これまで周囲から少なくとも”一目置かれていた”私が、今ではただの阿呆も同然になってしまったこと。もはや私は、認識されるにも値しない人間なのだ。
そしてもう1つは、いまや自分の人生が、か弱いおばあさんの手を借りなければ道路ひとつ渡れないようなステージへと移行してしまったことだ。

 

神様、お願いです。
どうかこれ以上はやめてください!
追い詰められた私は、存在しないはずの聖なる存在に向かって、思わず懇願していた。

 

エルエスコリアル基準というのは、国際的なALSの診断基準の通称だ。
たとえば、上位運動ニューロンの脱神経に加えて、下位運動ニューロンにも3カ所以上の脱神経が認められれば、ALSと診断される。
ドクターはためらうことなく答えた。
「ええ、そのとおりです」

 

私たちが目指すのは、”人間である”ことの定義を書き換えることだ。

 

「ともあれ、やってみましょう」

 

「僕らは今、”AIが独自に発達する未来”に向かって猛スピードで突き進んでいる。なんの議論もなされていないし、まして誰も賛成していない。でも、勝手にそちらに向かっているんだ。これまでに、別のルートや別の未来が存在する可能性を指摘した人間はほとんどいない。このままでは、じきにそちらのルートに入るタイミングを失ってしまう。」

 

「もう1つの未来が選ばれる可能性は、どんどん低くなりつつある。とはいえ、少なくとも”AIとのコラボレーション”か”独立したAIの活用”のどちらかを、誰もが必要に応じて選べるような未来を導くことはできると思うんだ」

 

私は死の定義を曖昧にすることによって、古びたタブーの数々を打ち破ろうとしている。

 

「サイボーグの声と、サイボーグのアバターと、仮想現実(VR)の中で暮らすことと、その全部をAIでコントロールすること。この4つ以外に、君の”世界を変える計画”にはどんなものがあるんだい?」

 

「何が言いたいかというと、インターネットの一部やそこに接続されているモノが、最終的に僕の麻痺した体の代用品になればいいと思っているんだ。周りの環境に触れるというより、僕自身が環境の一部になっていくようなイメージだ」

 

「ルールを壊すという私たちの驚くべき特技は、ほかの何にも増して、文明を発展させる原動力となりました。
私たち人間は、相反する性質の特異なバランスの上に成り立っています。利己的な創造力と、利他的な抑制力。あるいは大胆な行動力と、本能的な危機察知能力。
こうした特性こそが、人類という種と、人間社会の本質を決定づけたと言えるでしょう。つまり、わざとルールを壊すことが、私たちを人間たらしめているものであり、どのルールを壊さずにおくかをみんなで選ぶことが、私たちを文明人たらしめているものなのです」

 

世界に変化をもたらしつづけるには、研究に携わる私たち自身が、何をどう研究するかを絶えず問い直し、進化させていかなくてはならない。
可能性の上限を常に更新し、絶えず自らをMNDおよび重度の障害にテクノロジーを適用する研究の最先端に位置づけなくてはならない。
ムーアの法則の威力を借りつつ、研究成果を一般ユーザー向けのツールに還元しなければならない。

 

幸いなことに、真に重要な宇宙の法則は3つしかない。
それ以外のすべてのルールは枝葉に過ぎない。
1.科学こそ、魔法への唯一の道である。
2.人類が偉大なのは、ルールをぶっ壊す存在だから。
3.愛はーー最終的にーーすべてに勝つ。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1791-1】「人間であるとは?」と自問して、浮かんだことを書き出してみる

【1791-2】行動/実行を悩んだときは、「ともあれば、やってみましょう」を口癖にする

【1791-3】「壊したいルール」と「守りたいルール」を書き出してみる

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】NEO HUMAN ネオ・ヒューマン
【著者名】ピーター・スコット-モーガン
出版社東洋経済新報社
【出版日】2021/6/25
オススメ度★★★☆☆
こんな時に生き方に迷ったときに
キーワード生き方サイエンス社会
【頁 数】464ページ
【目 次】
PART1 科学は魔法に通じる
PART2 ルールをぶっ壊す
PART3 愛はすべてに勝つ

 

この本が、あなたを変える!

NEO HUMAN ネオ・ヒューマン
ピーター・スコット-モーガン
東洋経済新報社 2021-6-25
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ピーター・スコット-モーガンさん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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