【書評:1723冊目】食料危機(井出留美)

【日本はまだ本当の食料危機を知らない】
食品ロス問題ジャーナリスト・井出留美氏が、『食料危機』と題して、食料に対する危機意識のなさこそが”食料危機”だと警鐘を鳴らし、今知るべき食料危機の姿を解説する一冊。

■書籍の紹介文

目の前にある賞味期限が切れた食品。
あなただったら、どうしますか?

 

本書は、日本人は食料危機について知らなさすぎると警鐘を鳴らし、膨大な情報の分析と研究者へのインタビューを示しながら、今知るべき”食料危機”の姿を解説する一冊。

 

冒頭の質問、いかがでしょうか。
「捨てる」「廃棄する」という選択が真っ先に浮かんだ方は、必ず読んでください。

 

著者は、食料危機について、日本人には3つの足り”ない”があると憂います。
①食料確保に対する危機意識が足りない
②生き物の命から生まれた食に対する敬意が足りない
③死ぬまで一生必要とする食の知識が足りない

 

「ない」と書きましたが、「なさすぎる!(怒)」が正しい表現かもしれません。
それほど、日本の現状に危機感を持っていることが、全編からひしひしと感じられる内容です。

 

これは中学校の家庭科で履修する内容である
ところどころに出てくるこの表現に、個人的に胸が詰まる思いをしました。

 

それだけ、3つの足り”ない”の③なわけです・・・。
このように、自分の危機感がどれくらいなのかを知るのに役立つ一冊です。

 

ないものは仕方ありません。
きちんと身につけて、真に対応できる人間になっていくだけです。

 

本書の嬉しいところは、知識を積み込むだけではない点。
第5章に「アクション100」と100個の行動リストを掲載しているところです。

 

ここに載っている行動へ、日常の行動を1つ1つ置き換えていく。
当たり前のようにできるに連れて、危機に立ち向かう人間になっていくわけです。

 

遠い貧困国の問題ではありません。
あなたの足元で、確実に加速度的に進行している問題です。

 

まずは、この本を通じて知りましょう。
そして、読み終わったら行動を開始しましょう。

 

最後に。
『「食料」じゃなく「食糧」でしょ?』と思った方も、必ず読んでください。

 

◆今読むべき一冊。

食料危機
井出留美 PHP研究所 2020-12-16
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■【要約】15個の抜粋ポイント

国連WFP広報の我妻茉莉氏に飢餓の定義を伺ったところ、FAOの英文サイトにある言葉を引用して教えていただいた。
筆者も十分に納得できた記述だったので、翻訳して引用したい。
「飢餓とは、エネルギーを十分摂取できないことによって引き起こされる、不快感や痛みを伴う身体感覚のこと。活動的で健康的な生活を送るために、十分な量のエネルギーを定期的に摂取しないと慢性化してしまう。現在、約6億9000万人が飢餓状態にあると推定されている。FAOは、過去何十年もの間、世界の飢餓の程度を推定するために『栄養不足による疾病率』という指標を使ってきたので、飢餓を栄養不足と呼ぶこともある」

 

地球上に極度の飢餓状態の人が2億7000万人いて、食料不安を抱えている人が9億4000万人も存在している。

 

世界では約26億トンの穀物が生産されており、世界人口に平等に分配されていれば、一人あたり年間340キロ以上食べられる。
日本に住む人が食べている穀物は年間154キロである。

 

SDGsは「誰一人取り残さない」という理念を掲げている。
が、消費する先進諸国が低所得国に栽培させている換金作物や農産物に厳格な規格基準を設け、現地で廃棄処分させているのは、理不尽ではないだろうか。

 

全体として言えるのは、「食べ物が限られた量しかない」「めったに入手できない」と意識することで、明らかに購買行動や消費行動が変わり、あるもので賄おうとする工夫が生まれ、無駄や廃棄が減るということだ。

 

温暖化は、穀物の生産地に影響を及ぼす。
米国のスタンフォード大学が過去のデータを調べたところ、気温が平均2度上昇することで、小麦の生育期間が9日間短くなり、収穫量が2割減ったことがわかった。

 

●5つの提言から考える世界の食の未来
提言1:農地を拡大しない
提言2:今ある農地の生産性を高める
提言3:資源をもっと有効に使う
提言4:食生活を見直す
提言5:食品廃棄物を減らす

 

食品ロスの処理は、世界の食料生産は足りているのに飢餓が起きる3要因(気候変動・紛争・経済停滞)の気候変動に影響し、農畜水産物の生産に打撃を与える。

 

イスラエルの会社がスペインのスーパーマーケットで電子タグを活用して行った「ダイナミック・プライシング」の実証実験では、食品ロスが30%以上削減できたという成果が出ている。

 

(「3分の1ルール」「欠品ペナルティ」など…)
この商慣習の縛りをできる限り最小限にすることが、確実に食品ロスの削減につながる。
なぜなら、商慣習の多くは小売が課したものであり、小売に従わないとメーカーが取引できないから、致し方なく従っているからだ。

 

日本で行われている、ユニークな「おすそわけ」の例を一つ紹介したい。
おてらおやつクラブ」という、「おてらのおそなえものを仏さまのおさがりとしておすそわけ」する活動がある。
お寺のお供え物も、放っておけば、傷んでしまう。
その前に、食べ物を必要とする人へおすそわけしようという運動である。

 

ごみでないものを「ごみ」にしてしまっているのは人間なのだ

 

筆者は、単に食料の物理的な有無もさることながら、食料確保に対する人々の危機意識のなさこそ、真の日本の”食料危機”ではないかと感じている。

 

賞味期限とは「思考停止」ポイントだ。
食中毒が怖いから、「念のために」捨てる。
十分に飲食できる食料品を、企業も消費者も捨てている。
捨てることが織り込み済み。
消費者は食料品価格に間接的に織り込まれた廃棄コストを払わされているのに気づかない。

 

SDGsの専門家は、日本はSDGsに関して周回遅れだと評する。
島国だからか、他の国のことに興味がない。
目先のことしか関心がなく、今さえよければいい。
あるSDGsのシンポジウムで、あるメーカーは、欧州企業はたとえ価格が高くても認証紙を指定してくるが、日本の企業は「安ければいい」という傾向がある、と語った。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1723-1】賞味期限・消費期限の近づいた値引き商品から買う

【1723-2】買い物リストをつくってから買い物に行く

【1723-3】「買い物は投票」の意識をもち、未来に残したいお店や食品を選んで買う

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】食料危機
【著者名】井出留美著者情報
出版社PHP研究所
【出版日】2020/12/16
オススメ度★★★★★
こんな時に社会貢献を考えるきっかけに
キーワード社会生き方食生活
【頁 数】256ページ
【目 次】
第一章 食料危機の現状
第二章 食料危機の原因
第三章 日本の食料危機の歴史
第四章 食料を確保するためには
第五章 私たちができる100のこと

 

この本が、あなたを変える!

食料危機
井出留美 PHP研究所 2020-12-16
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井出留美さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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