【書評:1670冊目】データで見る行動経済学(キャス・サンスティーン、ルチア・ライシュ)

【どうすれば、人は納得して動くのか】
行動経済学の権威であるキャス・サンスティーンとルチア・ライシュ両教授が、『データで見る行動経済学』と題して、ナッジを上手に活用していくための基本原則を解説する一冊。

■書籍の紹介文

ケータイはOFFに♪
上映中はお静かに♪
上映中は周りの方にもご配慮を♪
前の席を蹴らない♪
映画の上映前に流れるあのマナー告知をあなたはどう思いますか?

 

本書は、どのようにナッジを活用すれば、人々が選択に納得感を持ち、満足できるのかについて、全世界規模の調査から見えてきた「ナッジ」活用の基本原則を解説する一冊。

 

ナッジとは、
「強制や金銭的動機付け(インセンティブ)に頼らず、選択の自由を残しながらも、望ましい方向に誘導する、ちょっとした工夫」のことをいいます。

 

たとえば、レストランなどでのメニューのカロリー表示。
ただ表示しているだけなのに、自然と健康志向のメニュー選択をするようになります。

 

端的にいうと、これがナッジです。
わたしが、わたしの自由で、健康的なメニューを選んだと納得するように、”誘導”するわけです(政策として、国民の健康増進による社会保障費の圧縮が目的にあっても)。

 

では、どんなナッジであれば、人々は納得感を持ち、受け入れて支持をするのか。
これを全世界規模の調査から見えてきたデータをもとに、考察していきます。

 

特定の政策や意図のために、選択”させられて”いる。
こう思ってしまうようなナッジだと感じた瞬間、不快感と反発心しか生まれない。

 

反対に、
「習慣化したいけれど、面倒くさいこと」を難なく継続する、
「悪いことだとわかっているけれど、やめられないもの」を無理なく断つ、
このようなナッジだと感じた瞬間、それを享受したいという気持ちが生まれます。

 

この境界線はどこにあるのか。
どのようにアプローチをすれば、肯定的なナッジと納得させることができるのか。

 

ここに、行動経済学の世界的権威である著者が迫っていきます。
日常生活を振り返ると、どれだけ多くのナッジに囲まれているかを目の当たりにするでしょう。

 

ナッジのメリット・デメリット、可能性までを知ることができます。
政策やマーケティングなど、幅広いフィールドで活用できる”ナッジ”の世界を、ぜひ覗いてみてください。

 

◆ナッジは、社会のバロメーター。

データで見る行動経済学
キャス・サンスティーン、ルチア・ライシュ
日経BP 2020-4-17
売上ランキング(公開時):8,460
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■【要約】15個の抜粋ポイント

ここ数年間、行動経済学の知見や行動情報を活用した政策、そして「ナッジ」に関する研究が次々に発表されている。
「ナッジ」とは、「一人ひとりが自分自身で判断してどうするかを選択する自由も残しながら、人々を特定の方向に導く介入」といえる。
たとえば、リマインダーはナッジである。
看板もそうだ。

 

行動科学チームがある国は、オーストラリア、オランダ、フランス、カナダ、アイルランド、ドイツ、カタールをはじめ、何十カ国にものぼる。
(略)
コストを削減したいし、命を救いたい。
教育を改善したいし、貧困を減らしたい。
経済成長も刺激したい。
このような目標を達成するための「費用の負担が最小限ですみ、かつ、選択の自由が確保される政策手段」として、ナッジを活用した政策が真剣に検討されているのである。

 

命令や禁止が完全に正当な目的をもっているとされるときでさえ、人々は命令や禁止を拒否するのだ。
多くの人は選択の自由そのものをとても大切にしており、動機はよくても選択の自由が認められないと、多くの政策が拒否されるだろう。

 

●アメリカにおける「ナッジの評価」から見える2つの大原則
(1)アメリカ人は、その目的が不正だとみなすナッジ(宗教的・政治的偏向などを促すもの)に拒否反応を示す
(2)アメリカ人は、多くのアメリカ人の利益や価値観と一致しないとみなすナッジを拒否する

 

近年、アメリカ政府は数多くのナッジを採用、あるいは推進している。
たとえば、次の三つのようなナッジが採用されている。
(1)チェーンレストランでのカロリー表示の義務づけ
(2)タバコのパッケージへの健康警告画像の表示義務づけ
(3)貯蓄プランへの自動加入

 

(アメリカにおけるナッジへの評価)一般的な結論として、次の二点があげられる。
(1)大半のアメリカ人は、民主的社会が近年にとりいれているか、とりいれることを真剣に検討しているナッジを支持している
(2)選択アーキテクトの動機に不信を抱くときや、惰性や不注意のせいで市民の価値観や利益に反する結果になるかもしれないと不安を感じているときは、その支持は減る。特にアメリカ人が反対するのは、明確な同意なくお金などの大切なものを失うことになる結果を選択アーキテクトが生み出す状況である。

 

ヨーロッパ(デンマーク、ドイツ、ハンガリー、フランス、イタリア、イギリス)でも、アメリカと同様、ナッジの目的が正当であり、大半の人々の利益につながったり価値観と一致したりすると考えられるときには、過半数の人がそれを支持する可能性が高い。

 

6カ国のうち、イタリアとイギリスは今回テストされたナッジに対して特に好意的だった。
(略)
ハンガリーとデンマークは、一貫してナッジ全般にあまり好意的ではない。

 

●ナッジの”5つの教訓”
教訓1:さまざまな国の市民は、少なくとも近年に採用されているか、真剣に検討されている種類については、ナッジをおおむね支持している。
教訓2:男性の姓を自動的に妻の姓に変えるようにするデフォルトルールのように、大半の選択者の利益や価値観に合わないと感じるナッジを市民は支持しない。
教訓3:宗教的や政治的に偏向しているなど、目的が正当でないと感じるナッジを市民は支持しない。
教訓4:市民は操作に反対するが、サブリミナル広告のケースのように、操作を非常に狭くとらえている。
教訓5:きわめて意外なこととして、支持政党は、今回テストされたナッジに市民がどう反応するかを予測する因子としては総じて弱い。

 

ハンガリーと日本に関しては、政府に対する信頼の欠如で、本調査結果の全体像の大部分が説明できそうだ。
政府への信頼に各国でどの程度の差があるのか、あるいはその経済的な変化を見ていくことで、今回の国による差を手早く説明することができるだろう。

 

信頼を得るいちばんの方法は、信頼を得る努力をすることだ。

 

法律と公共政策については、「教育的ナッジ」と「非教育的ナッジ」を区別することが役に立つ。
教育的ナッジには、開示義務、リマインダー、警告が含まれ、人々が自分自身の行為主体性の力を高めることを特に目的としている。
非教育的には、デフォルトルールと順序効果の使用(メニューやカフェテリア方式の食堂など)が含まれる。
選択の自由を確保するように設計されているが、個人の行為主体性が高まるとは限らない。

 

●ナッジについての”7つの誤解”
誤解1:ナッジは人間の行為主体性をないがしろにしている
誤解2:ナッジは政府への過度の信頼がベースになっている
誤解3:ナッジは目に見えない
誤解4:ナッジは人を操る
誤解5:ナッジは行動バイアスにつけこむ
誤解6:「人間は不合理だ」というナッジの前提は間違っている
誤解7:ナッジが機能するのは周縁の問題だけなので、大きな成果はあげられない

 

人が何らかの権利(たとえば宗教の自由についての権利)や何らかの利益(たとえば財産に対する利益)を失うことがデフォルトに設定されているなら、自律性は損なわれているというべきだろう。

 

公共の福祉や社会全体の厚生を純増させなければいけないということだ。
また、最大化もしなければならない。
したがって、公共の福祉や社会全体の厚生を純増させるアプローチのうち、純増幅が最も大きいものでなければいけない。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1670-1】行動経済学の入門書を1冊読む

【1670-2】社会心理学の入門書を1冊読む

【1670-3】信頼を積み上げていく

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】データで見る行動経済学
【著者名】キャス・サンスティーンルチア・ライシュ
出版社日経BP社
【出版日】2020/4/17
オススメ度★★★☆☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード行動科学社会教養
【頁 数】288ページ
【目 次】
第1章 ナッジ導入における「世論」の重要性
第2章 アメリカ1調査結果のまとめ
第3章 アメリカ2調査から明らかになったナッジへの反応
第4章 ヨーロッパでの調査結果とナッジへの評価
第5章 ナッジに対する世界的な評価は定まっているのか?
第6章 ナッジの真実
第7章 教育的ナッジと非教育的ナッジ
第8章 ナッジについての7つの誤解
第9章 あらゆるナッジに適用されるべきわれわれの権利とは?

 

この本が、あなたを変える!

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キャス・サンスティーンさん
ルチア・ライシュさん
素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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