【書評:1602冊目】日本人論の危険なあやまち(高野陽太郎)

【「日本人は集団主義的だ」は、米国の対日戦略?】
東京大学名誉教授・高野陽太郎氏が、『日本人論の危険なあやまち』と題して、「日本人は集団主義的だ」という通説を学術的に分析し、潜む危険性を考察する一冊。

■書籍の紹介文

日本人は集団主義的である。
この通説、あなたはどうおもいますか?

 

本書は、「日本人は集団主義的だ」は典型的な”文化ステレオタイプ”だと指摘し、多くの学術的な研究をもとに、『日本人論』に潜む危険性を考察する一冊。

 

ステレオタイプ。
「日本人といえばおもてなしの精神」など「○○といえば◎◎」という情報です。

 

日本社会には、ステレオタイプが溢れています。
それらは、通説や常識となり、知らず知らずのうちに先入観として文化のように刷り込まれていきます。

 

島国という地理的要因やほぼ単一民族という民族的要因。
こうした要因が重なり、”文化ステレオタイプ”に毒されやすい国民性ともいえます。

 

その象徴ともいえるのが、「日本人は集団主義的だ」です。
もはや、ほとんどの日本人が疑うこともなく信じている”事実”のようになっています。

 

しかし、学術的な研究はこれを否定します。
確証バイアスがはたらくことで、常識だと社会全体が錯覚していると指摘します。

 

では、「日本人は集団主義的だ」はどこで生まれ、どうやって刷り込まれてきたのか。
日本とアメリカの歴史的背景を紐解きながら、そこに潜む危険性をあきらかにしていきます。

 

集団的な人もいれば、個人的な人もいる。
すこし考えれば「当たり前でしょ」ということが、”文化ステレオタイプ”に毒されると疑うというプロセスが働かなくなってしまうのです。

 

きちんと気づき、必要に応じて反証する力をしっかり身につけておく。
グローバル化が深化している現代社会では、とても重要なことです。

 

なぜなら、盲目的にいると、意図を持って刷り込まれた”文化ステレオタイプ”で被害を被ってしまう可能性があるからです。
そうならないための一歩を、本書からはじめましょう。

 

◆先入観に毒されないために。

日本人論の危険なあやまち
高野陽太郎 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019-10-19
売上ランキング(公開時):165,815
Amazonで探す Kindleで探す 楽天で探す

■【要約】15個の抜粋ポイント

日本人論では、日本人が集団主義的に行動する事例がいろいろと挙げられてきました。
そういう事例がたくさんあることは、紛れもない事実でしょう。
しかし、すこし気をつけてみれば、日本人が個人主義的に行動する事例も、たくさん見つかります。
これもまた、紛れもない事実なのです。

 

「日本人は…」という抽象論をするのではなくて、日本人を一人ひとり見ていけば、個性的な日本人は、いくらでも見つかります。

 

(研究実験の結果、)日本人の同調率は25%にすぎなかったのです。

 

経済統計を調べてみると、アメリカは、基本的には高関税政策をとってきた国だということが分かります。
高い関税は、「日本人の集団主義」とは関係がないのです。

 

日本経済の全体像を映しだすデータと突き合わせてみると、「日本的経営」も、「系列」も、「日本株式会社」も、現実とはほど遠いことが分かります。
そもそも、「日本経済は集団主義的だ」という議論は、しっかりしたデータから出てきたものではありませんでした。
個人的な見聞や伝え聞いたエピソードがもとになっていたのです。

 

「個人主義的だ」と言われてきたイギリスやカナダでも、「いじめ」は深刻な社会問題になっています。
「いじめ」は、「集団主義的な日本社会に特有の現象」ではないのです。

 

「集団主義」にたいする否定的な評価は、あきらかにアメリカの影響を受けています。

 

「日本人は集団主義的だ」という話を聞いた日本人はみな、戦争中のことを思い出したにちがいありません。
そして、「なるほど、そのとおりだ」と深くうなずいたことでしょう。
こうして、日本人にとって、『菊と刀』は「名著」になったわけです。

 

「日本人は集団主義的だ」という通説は、誰もが信じるようになりました。
そうなると、「誰もが信じている」というそのこと自体が、通説を守る働きをするようになります。

 

通説は「誰もが信じている」ので、どうしても「通説には、それを支持する圧倒的な証拠があるのだろう」と勝手に思い込んでしまいます。

 

通説を「誰もが信じている」ということは、通説が正しいことを保証しているわけではありません。
「先入観のなせるわざ」として、充分に説明のつくことなのです。

 

文化も、文化差も、不変ではありません。
主に状況要因の影響で、そこに他の要因も絡んで、ダイナミックに変化するものなのです。

 

無用な誤解や軋轢が生じないようにするためには、文化の違いを知っておくことは大切です。

 

「日本異質論」を背景にした「日本叩き」が猛威を振るうなかで、日本政府はつねにアメリカ政府の顔色をうかがうことを余儀なくされ、アメリカ政府は、口先だけで日本の産業の芽を摘むことができるようになりました。

 

怖いのは、確証バイアスです。
(略)
文化をきちんと比較するには、実証的な研究が不可欠です。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1602-1】通説などには、「本当にそうなのか?」と問う癖をつける

【1602-2】異文化理解のために、文化の勉強をする

【1602-3】「菊と刀」を読む

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】日本人論の危険なあやまち
【著者名】高野陽太郎
出版社ディスカヴァー・トゥエンティワン
【出版日】2019/10/19
オススメ度★★☆☆☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養社会グローバル
【頁 数】310ページ
【目 次】
第1章日本人論の核心 「集団主義」
第2章日本人論の危うい足元
第3章「個人主義的な」アメリカ人と比べてみると
第4章日本経済は集団主義的か?
第5章日本人論の言説を検証する
第6章なぜ「集団主義的な日本人」は常識になったのか?
第7章なぜ通説は揺るがないのか?
第8章文化ステレオタイプ
第9章文化ステレオタイプの罠

 

この本が、あなたを変える!

日本人論の危険なあやまち
高野陽太郎 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2019-10-19
売上ランキング(公開時):165,815
Amazonで探す Kindleで探す 楽天で探す

高野陽太郎さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

■お知らせ

▼書評ブロガーの読書術を公開中!

▼【聴いてね♪】書評ラジオ番組
「米山智裕のBook of the Week」

▼【仲間大募集中!】101年倶楽部

▼「いいね!」応援をありがとうございます!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る