【書評:582冊目】「ドイツ帝国」が世界を破滅させる(エマニュエル・トッド)

【視点を変えると違う景色がある】
歴史人口学者/エマニュエル・トッド氏が、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』と題して、冷戦終結、欧州統合、ウクライナ問題を題材に、今後の世界を地政学的に考察する一冊。

■書籍の紹介文

世界の主導権を握っている国は?
こう聞かれたら、なんと答えますか。

 

本書は、これからの世界にとって最も危険な脅威は「強すぎるドイツ」であると提起し、なぜそう予見せざるを得ないかを地政学的に考察する一冊。

 

エマニュエル・トッド氏は、フランスの歴史人口学者・家族人類学者。
国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、ソ連崩壊やアラブの春などを次々に予言した人物。

 

冒頭の質問。
多くの人が「アメリカ」と答えるとおもいます。

 

著者も、それを肯定しています。
そのうえで、人口動態の観点からみると、アメリカは衰退局面に入っていると指摘します。

 

ウクライナ問題など、国際ニュースから伝わってくる昨今の緊張感。
これらは、アメリカの衰退により生じている”地政学的な歪み”が原因であると説きます。

 

そして、この”地政学的な歪み”で力をもっとも増しているのが、ドイツだと主張します。
その力は、もはや「ドイツ帝国」と呼べるほど拡大しており、このままいくとアメリカとも衝突しうるとまで論じます。

 

このように、かなり刺激な論調の一冊です。
国際社会を、アメリカを中心に考えがちな日本人には、かなり違和感を感じる内容だとおもいます。

 

ですが、この”違和感”を感じることが大切なのだと感じます。
世界には、日本やアメリカだけではなく、たくさんの国家があります。

 

それが複雑に絡みあって、「世界」はできています。
だからこそ、理解するためには、いろいろな国・地域に視点を置いて考える必要があります。

 

偏った見方をすると、思わぬ危機に対応できなくなるのと同じです。
なぜ、ヨーロッパのリーダーであるドイツを、「ドイツ帝国」と表現するほど脅威に感じるのか。

 

著者の主張を聞きながら、自分なりに考えてみる。
自分の教養を広げるのに有用な一冊だと感じます。

 

◆なぜ今、ドイツを恐れるのか。

「ドイツ帝国」が世界を破滅させる
エマニュエル・トッド 文藝春秋 2015-5-20
売上ランキング(公開時):18,793
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■【要約】15個の抜粋ポイント

①ここ五年の間に、ドイツが経済的な、また政治的な面で、ヨーロッパ大陸のコントロール権を握った。
②その五年を経た今、ヨーロッパはすでにロシアと潜在的戦争状態に入っている。
この単純な現象が二重の否認、つまり現実を現実として認めない態度によって見えにくくなっている。

 

アメリカシステムとは、ユーラシア大陸の二つの大きな産業国家、すなわち、日本とドイツをアメリカがコントロールすることだ。

 

今のところ、日本はドイツよりもアメリカに対して忠誠的である。
しかしながら、日本は西洋諸国間の昔からの諍いにうんざりするかもしれない。
現在起こっている衝突が日本のロシアとの接近を停止させている。
ところが、エネルギー的、軍事的観点から見て、日本にとってロシアとの接近はまったく論理的なのであって、安倍首相が選択した新たな政治方針の重要な要素でもある。

 

乳児死亡率(一歳未満での死亡率)の再上昇は社会システムの一般的劣化の証拠

 

オバマ大統領は、ロシアと自国の間の揉め事に決着をつけるべく彼を利用しようとするドイツの指導者たちによって、煙に巻かれてしまいました。

 

ロシアの大学では男子学生100人に対して女子学生は130人を数えるのですよ。
それがフランスでは115人、アメリカでは110人、そして……ドイツでは83人です。
ロシアは世界でも女性の地位が最も高い国の一つであって、スウェーデン(男子学生100人に対して、女子学生140人)に次いでいるのです。

 

中国はおそらく経済成長の瓦解と大きな危機の寸前にいます。
ロシアは一つの大きな現状維持勢力です。
アメリカとロシアの新たなパートナーシップこそ、われわれ人類が「世界的無秩序」の中に沈没するという、現実となる可能性が日々増大している事態を回避するための鍵だろうと思います。

 

ドイツ人たちは平和主義と経済的膨張主義の間で迷っている。
アメリカ人たちは帝国路線とネイション路線の間で揺れている。
そしてフランス人たちは、この混迷の中でどこに身を置けばよいか本当に分からなくなってしまっている。

 

ドイツにとって、ヨーロッパで覇権を持続的に保持する上での唯一の障害は、過去にそうであったように今日もやはりフランスだ。
経済の面でフランスが最終的に潰え去ってしまわない限りは。

 

フランス文化の偉大さは普遍的人間という概念を提示し、堅持するところにあるのですが、その大きな弱点は、ほかでもないその普遍主義のゆえに、さまざまに異なる社会を異なるままに分析する能力に欠けるという点にあります。

 

日本社会とドイツ社会は、元来の家族構造も似ており、経済面でも非常に類似しています。
産業力が逞しく、貿易収支が黒字だということですね。
差異もあります。
日本の文化が他人を傷つけないようにする、遠慮するという願望に取り憑かれているのに対し、ドイツ文化はむき出しの素直さを価値付けます。

 

ある種の人物たちが国家行政機構の上層部、アメリカの大企業、ブリュッセル、さらに今日では各国政府自体の間をどう行き来しているかを観察しさえすれば、金持ちたちがまんまと成功していることが分かります。
同じひとつの階級が市場と諸国家をコントロールしている以上、市場と国家の間の対立にはもはや何の意味もありません。

 

威圧されるがままになってはいけない。
高いレベルの教育とテクノロジーを具えた先進社会は、いま問題にしているような種類のシステム全体が崩壊しても後の社会に充分適応できます。

 

今日大陸全体に拡がる怒りのタネである単一通貨は、初めからヨーロッパなるものの否定だった

 

平等性の弱い社会ビジョンを持つドイツにとっては、財政赤字をEUが共同で引き受けるのは越えがたい障害に見える。
けれども、まだ手遅れにならないうちにあの国に譲歩させることはできたでしょう。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【582-1】BBCニュースをみる

【582-2】CNNニュースをみる

【582-3】NHKニュースをみる

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】「ドイツ帝国」が世界を破滅させる
【著者名】エマニュエル・トッド
出版社文藝春秋
【出版日】2015/5/20
オススメ度★★☆☆☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養グローバル考える
【頁 数】232ページ
【目 次】
1 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る
2 ロシアを見くびってはいけない
3 ウクライナと戦争の誘惑
4 ユーロを打ち砕くことができる唯一の国、フランス
5 オランドよ、さらば!
6 ドイツとは何か?
7 富裕層に仕える国家
8 ユーロが陥落する日

 

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エマニュエル・トッド 文藝春秋 2015-5-20
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エマニュエル・トッドさん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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