【書評:2058冊目】現代史は地理から学べ(宮路秀作)

【地理的視点が世界情勢を深く理解させる!】
代々木ゼミナール地理講師・宮路秀作氏が、『現代史は地理から学べ』と題して、地理がわかると世界情勢をより深く理解できると説きながら、地理的視点の磨き方を解説する一冊。

■書籍の紹介文

地理学と地政学。
あなたは違いを説明できますか?

 

本書は、地理的視点を持って世界情勢を眺めるとより深くありようが見えてくると提起し、地理学の考え方や地理的視点の磨き方を指南する一冊。

 

「歴史は勝者によって作られる」という表現を、あなたも耳にしたことがあるでしょう。
すなわち、歴史には、その時代時代の勝者によって都合よく語り継がれてきた側面が少なからずあるのです。
(現在でも、政治などで不自然な書類の破棄や改竄がニュースになったりしますよね)。

 

したがって、歴史の話をするときによく使われる「歴史的事実」という表現に、著者は違和感を覚えるといいます。
「歴史的事実」ではなく、「歴史的解釈」のほうがニュアンスとして正しいのではないかと。

 

とはいえ、「解釈」のレベルでは後世に伝える”歴史”として心許ない。
そこで「解釈」に、地理的条件という不変の要素を加味して、より「事実」に迫っていこうとする試み。

 

これこそが、本書のテーマである『地理学』です。
「事実」の積み重ねこそが”歴史”であり、「解釈」の積み重ねと混同してしまっては目が曇ると指摘します。

 

◎なぜ、中国は台湾に強硬姿勢をとり、日本を目の敵にするのか
◎なぜ、ロシアは兄弟とまで呼ぶウクライナに侵攻したのか

 

『地理学』の視点を学びことによって、日々のニュースで報じられている理由だけではない側面が見えてきます。
また、日本で報じられている内容だけを信じて判断するのは危ういことも、本書を読むとよくわかります。

 

紛争や国際問題が起こるには理由があります。
そして、その理由には必ず「地理的条件」が含まれています。

 

それらを見誤って、安易な意見形成をしてしまう前に。
『地理学』という視点を、持っておきたいものです。

 

◆世界の流れが見える。

現代史は地理から学べ
宮路秀作 SBクリエイティブ 2023-8-5
Amazonで探す Kindleで探す 楽天で探す

■【要約】15個の抜粋ポイント

地理的条件は、誰が何と言おうと動かしようのない事実です。
だからこそ、歴史を理解するために、その歴史の舞台となった場所の地理を知ることが欠かせません。
歴史を見る際に「地理」という視点を一つ介在させてみると、単なる「解釈」を超えた「事実」に近づくことができるわけです。

 

最終的に歴史をつくっているのは、感情のある人間です。
そして、まず地理的な事実にアプローチしてこそ、そのとき、その出来事における人間の感情のありようをも踏まえて歴史をより深く理解できるのです。

 

日本における「地政学」とは、地理学を戦争利用するために生み出された概念です。

 

地理学的に考察を深めるには、「陸」だけでなく「海」も見なくてはいけません。
台湾というほんの小さな島が要衝という宿命を背負ってしまっているのも、中国の「一路」構想のちょうど道のり上に位置しているからといえます。

 

ウクライナがさまざまな要件をクリアしてEUに加盟しようものなら、ロシアはEUと国境を接することになってしまう。
それは絶対に避けたいと思っているのではないでしょうか。
ウクライナはロシアとEUの緩衝国のままでいて欲しいといえます。

 

 

経済的に依存すると従属的な立場になり、依存先の利益に沿った行動しかとれなくなるというのは人間関係でも国際関係でも同じことです。
中国に多大なる経済的な借りのあるパキスタンもまた、中国に利するような政策を採らざるを得ない状況に陥っているわけです。

 

(冷戦期において)東側と西側とで「お互いオーストリアには積極介入しない」という紳士協定的な思惑が働き、そのなかでオーストリアは永世中立を選んだと見ることもできるかもしれません。

 

パレスチナ問題は、とかく「アラブ人とユダヤ人による民族対立、宗教対立」という点に落とし込まれがちですが、そこには「水資源をめぐる対立」が存在することも踏まえておく必要があると思います。

 

人間の空間認識は、その国のメディアによるところが大きいのですが、日本の報道機関の視野の狭さは今に始まったことではありません。
つまり、国内で報じられることだけを見ている限り、私たちの空間認識は広がらないといえます。

 

地図とともに他国の歴史を眺めてみることで、「宗教分布」という空間認識ができ、そして「民族自決(を求める人々)」という景観を獲得することもできるのです。

 

西アジアのカギとして立ち現れてくるのがサウジアラビアです。

 

寒すぎる時期も暑すぎる時期もなく、年間を通じて非常に人間にとって過ごしやすい地中海性気候。
この快適な気候環境が労働者や起業家を惹き付けたといえます。
そのなかに、たまたま優秀な人材がいたということでしょう。
そして優秀な人材が、また別の優秀な人材を引き寄せた。
こうしてサンノゼは多種多様な人々が集まる場所となり、ハイテク、イノベーションの中心地となりました。

 

中国の大豆需要を支えている国はどこかというと、ブラジルです。

 

「食わねば生きられない」という生物としての根源的欲求が、民主化運動の引き金になったというのもまた一つの事実なのです。

 

何事においても無自覚なまま生きるか、時には「この食べ物はどこから来たんだろう?」「その背景には何があるんだろう?」という小さな疑問を出発点に、地球規模の視野をもって己の生活を振り返ってみるか。
そこが、物事を見る目、考える力が鍛えられ、磨かれるかどうかの分水嶺になると思います。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2058-1】紛争や国際問題で報じられた場所を、世界地図で見る習慣をもつ

【2058-2】海外の報道番組を見る習慣をもつ

【2058-3】食品産地の地図と歴史をセットで確認する習慣をもつ

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】現代史は地理から学べ
【著者名】宮路秀作著者情報
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2023/8/5
オススメ度★★★☆☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード社会グローバル宗教
【頁 数】256ページ
【目 次】
第1章 なぜ「地理」から歴史を学ぶのか?
第2章 現代史の「要衝」を地理学で考える
第3章 現代史の「宗教」「民族」を地理学で考える
第4章 現代史の「経済」を地理学で考える

 

▼さっそくこの本を読む

現代史は地理から学べ
宮路秀作 SBクリエイティブ 2023-8-5
Amazonで探す Kindleで探す 楽天で探す

宮路秀作さん、素敵な一冊をありがとうございました!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る