【書評:1954冊目】なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか(ハワード・J・ロス)

【思い込みはなぜ発生するのかを知る】
バイアス研究の権威/ハワード・J・ロス氏が、『なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか』と題して、偏見や思い込みに限りなく捉われないための方法を指南する一冊。

■書籍の紹介文

思い込みで手痛い失敗をした・・・。
そんな経験はありませんか?

 

本書は、バイアスとは決して逃れられない人間の本能的な反応であると提起し、バイアスに限りなく惑わされず、フラットでいるための方法を指南する一冊。

 

人間であるかぎり偏っている。
こう断言されると、元も子もないと思ってしまいます。

 

ただ、言い換えれば、そういうものだと「共存」の道を探ればいいだけともいえます。
偏りに気づき、極力フラットでいられるための対処をすればいいからです。

 

ところが、一つ大きな問題があります。
それは、偏り(バイアス)の多くは『無意識』の状態で起きている点です。

 

つまり、「気づけない」危険性が非常に高いわけです。
ここが、バイアスの難しいところです。

 

気づけば対処できれば、気づけないことに対処できない。
この難題に斬り込んでいくのが本書です。

 

・バイアスとは何か
・なぜバイアスは人間に備わっているのか
・バイアスは人間の脳にどう作用するのか

 

こうしたバイアスの世界を、興味深い実例とデータを用いて解説していきます。
最後には、バイアスに惑わされず、限りなくフラットでいるための方法が理解できるように構成されています。

 

山場は、無意識にいかに気づけるか。
ここを超えると、共存の道が開けていきます。

 

◆人は、偏るのがあたりまえ。

なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか
ハワード・J・ロス 原書房 2021-10-15
Amazonで探す 楽天で探す

■【要約】15個の抜粋ポイント

私たちは生まれ育った文化から、生きるための独特の基準と規則をあたえられている。
その基準と規則は、「彼らとは違う」という生来のガイドラインに沿って定義されている。
それが内なる「ルールブック」の基礎となり、自分から見ると単純に他者が間違っているように見えてくる。
この自我同一性のまわりに個々人のアイデンティティが形成されるため、私たちは自分を「正しい」と思い、「他者」を「間違っている」、あるいは「欠けている」ものである、と見なしてしまう。

 

私たちのアイデンティティは「他者」との関係によって、たやすく定義され、「他者」に対する感じ方は、自分がどんな文脈にいるかによって変わる。

 

私たちは他者が話したり行動したりするのを見ながら、常に「空欄を埋めて」いる。
他者が私たちを見たり、話を始めたりするときにも、即座に空欄を埋める。
また、「彼らのような人」についての予想にもとづいて空欄を埋めもする。
固定観念がきわめて強力な理由は、ここにある。

 

●バイアスの10のパターン
(1)「選択的注意」と「不注意盲(変化盲)」
(2)「診断時のバイアス」
(3)「パターン認識」
(4)「価値観の帰属」
(5)「確証バイアス」
(6)「コミットメント・コンファメーション」or「損失回避」
(7)「自信過剰」
(8)「ステレオタイプ脅威」or「バイアスの内在化」
(9)「アンカリング・バイアス(焦点化)」
(10)「集団思考」

 

自分が毎日、さまざまな力学から生じるバイアスの激流の中で生きていると気づくことが重要だ。

 

私たちの誰もが、自分の考えを持っている。
だが、それは真実にどれだけ近いのだろうか?
だが、それよりも重要なのは、私たちが即座に抱く考えが最終的な「真実」を形づくることかもしれない。

 

人間には無意識のバイアスが深くしっかりと根づいていることを理解するなら、人が自分の偏向に気づいていないことと、偏向の有無や、ふるまいの動機が偏向のせいかどうかはまったく関係がないといえるだろう。

 

自分の集団アイデンティティを自覚しない場合、他者からは自分の力や特権がよく見えるのに、自分はまったく見えていないという状態に陥る。

 

自分が明示的にも黙示的にも力を握っている状況や場を、もっと自覚しなければならないということである。
自覚することによって、節度ある行動が取れるはずだ。

 

私たちは、自分が探すものだけを見て、知るものだけを探しているのである。

 

バイアスにもとづく同様のシステムが、3つの巨大で強力な文化システムにおいても表れる。
そのシステムは、私たちの日常生活に深く影響をおよぼしている。
つまり司法制度、医療制度、政治だ。

 

●6つの心得るべき点
1.バイアスは、人間の正常な働きであることを認識する
2.自己観察の力を育てる
3.建設的に疑ってみる
4.気詰まりと居心地の悪さを探求する
5.よく知らない、あるいは自分が偏見を持っている集団の人と関わる
6.フィードバックとデータを得る

 

自分自身を観察すれば、自分がいる状況を見きわめる機会ができるのである。
そのための要点を次に挙げよう。
それぞれの頭文字をつなげて「PAUSE(一時停止)」と覚えれば、すぐに思い出せるだろう。
◎注意を払う(PAY ATTENTION)
◎自分の思い込みを認める(ACKNOWLEDGE YOUR ASSUMPTIONS)
◎自分の見方を理解する(UNDERSTAND YOUR PERSPECTIVE)
◎違う見方を探す(SEEK DIFFERENT PERSPECTIVES)

 

「将来、再びこれについて決めることになったら、どんな情報がほしいだろう?」
そして、その情報を得られるかどうか試みるのである。

 

機会が許すかぎり、複数の情報元からデータを得よう。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1954-1】自分にも思いこみがあることを認める

【1954-2】自分の中の「正しい」を「本当に?」と確認するように心がける

【1954-3】情報収集は、複数の情報元から行う

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか
【著者名】ハワード・J・ロス
出版社原書房
【出版日】2021/10/15
オススメ度★★★☆☆
こんな時に考える力を身につけたいときに
キーワード思考発想力問題解決
【頁 数】328ページ
【目 次】
第1章 人間であるかぎり偏っている
第2章 考えていることについて考えてみる
第3章 バイアスの10のパターン
第4章 命と死と逮捕と無意識のバイアスについて
第5章 力を握っているのは誰か?
第6章 見えないバイアスに囲まれて
第7章 ギアをニュートラルに入れる
第8章 意識と気づきの育成

 

▼さっそくこの本を読む

なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか
ハワード・J・ロス 原書房 2021-10-15
Amazonで探す 楽天で探す

ハワード・J・ロスさん、素敵な一冊をありがとうございました!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

ページ上部へ戻る