【書評:1689冊目】60分でわかる カミュの「ペスト」(大竹稽)

【理不尽な状況が問いかける”人間の選択”】
教育者・大竹稽氏が、『カミュの「ペスト」』と題して、難読の名著であるアルベール・カミュの代表作「ペスト」の要点を、マンガ形式で端的にわかりやすく解説する一冊。

■書籍の紹介文

ペスト。
この言葉を聞いたことがありますか?

 

本書は、フランスのノーベル文学賞作家・アルベール・カミュの代表作「ペスト」の内容について、あらすじをマンガ形式でなぞりながら解説する一冊。

 

ペスト、”黒死病”という表現で中世ヨーロッパの世界史で習ったことがあるとおもいます。
何度となく、人類を脅かしてきた感染症です。

 

有効な抗生物質がある現代では、ペストの致死率は10%以下。
しかし、それ以前の時代では、感染すればほぼ死が確定する恐怖の病でした。

 

この恐怖の災禍を通して、”人間”を描き出したのが「ペスト」という書。
見事に、いま、日本、世界を脅かしている「新型コロナウィルス」の災禍とオーバーラップします。

 

そのため、原著「ペスト」への関心がとても高まっています。
ただ、名著ではありますが超がつくほどの難解さで有名です。

 

興味だけで読むと、跳ね返されてしまいます。
そこで、あらすじとエッセンスを抽出して、マンガ形式で概要を紹介しようというのが本書です。

 

研究者でありながら教育者でもある著者だからか、とても完成度が高く、読みやすさと読みごたえのバランスが絶妙です。
カミュが問いかける「人間とは」という哲学的なテーマについても、うまく読者をリードしてくれます。

 

ペストという言葉をコロナに置き換えて読む。
すると、とてもタイムリーな内容におもえてきて、withコロナ時代に「自分はどう向き合うのか」を考える良い機会となる一冊です。

 

恐怖、行動制限の苦痛、先の見えなさによる苛立ち、不安、絶望・・・。
見えない敵との終わりなき戦いに直面したとき、人間はどうあるべきなのか。

 

今までも、これからも、終わることのない永遠の問答です。
正解はないけれど、きちんと自分なりの答えをもっておくことが大切です。

 

「ペスト」では、カミュなりのどう考え、どう動くべきかが示されています。
それをガイドに自分なりの答えを模索してみる、今は最適な時期なのかもしれません。

 

考える過程で本書に物足りなさを感じたら。
ぜひ、原著「ペスト」にもチャレンジしてみてください。

 

◆いま、読む効果が高い一冊。

60分でわかる カミュの「ペスト」
大竹稽 あさ出版 2020-7-5
売上ランキング(公開時):731
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■【要約】15個の抜粋ポイント

『ペスト』にはこんな一節がある。
「ペストという、未来も移動も議論も封じてしまうものなど、どうしたら予想できただろうか?彼らは、自分は自由であると信じていた。だが、天災がある限り、だれも自由になどなれないのだ」

 

ペストのような厄災は、得手勝手なエゴを暴き出す。

 

有り体に言えば、どれだけ気を配っていても、感染する人は感染してしまう。
なにせ、どれほど目を皿のようにしても、ペスト菌は見えないのだ。

 

「世間一般でそれがどういうものか知りませんが、わたしにとって誠実さとは、自分の務めを果たすことです」

 

「なぜ今なのか?」
「なぜこの街で流行したのか?」
「なぜわたしが感染して、あの人が感染しないのか?」
これらの「なぜ」に答えることはできない、それがペストの理不尽さだ。

 

「終わりのない敗北です」

 

「数十万の市民は、いつ終わるか知られない日々を、先に進んでいるという感覚もないまま、足踏みをしていた」

 

罪なき者にも与えられる無情な苦痛。
これほどまでに、罪なき者の断末魔を、まともに見つめたことは、なかった。

 

ペストは「極めて公平で実行力のある仕事」をするため、人々に平等をもたらすものだと思われるが、人間のエゴイズムによって不平等がますます強化されてしまったのだ。

 

「愛のない世界は、死の世界だ。牢獄の状態、なすべき仕事、任務を果たす勇気、それにもいつか、疲れ果ててしまうだろう。その時、求められるのは、慈しみであり、一人の人間の面影なのだ」

 

大通りをずいぶん離れてもなお、市民たちの喜びの声が聞こえていた。
だが、その時二人は、扉を閉めきった家の横を歩いていたのだ。
この扉の向こうでは、まだ苦しみが続いている。
「近づきつつあった解放、その顔には笑い声と涙が混じっていた」

 

ペストとの戦いで人間がなにを勝ち取れるか。
それは知ることと覚えることだ。

 

ペストによる追放と、結合への希求。
これがどのような意味を持つのか。
いや、意味があるかないか、それは大したことではない。
大事なことは、それによって人々の希望にどのような答えが与えられるかだ。

 

人々が常に欲し、そして時々手に入れられるもの、それは…。
「人間の優しさ」

 

わたしたちには、生まれながらに優しさが備わっています。
そんなわたしたちが「自由な人間」であることを望み、「自由な人間」として共に苦しみ共に戦い、未来を選択していく先に、平安があるはずです。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1689-1】自分の務めを考え、それを果たすことに集中する

【1689-2】日々、知ったこと、覚えたことを記録する

【1689-3】自分の中にある「優しさ」に自信をもつ

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】60分でわかる カミュの「ペスト」
【著者名】大竹稽著者情報
出版社あさ出版
【出版日】2020/7/5
オススメ度★★★☆☆
こんな時に心の平穏や導きがほしいときに
キーワード哲学社会自然科学
【頁 数】216ページ
【目 次】
マンガでつかむ『ペスト』
『ペスト』登場人物相関図
『ペスト』(原題La Peste)とは
あらすじでつかむ『ペスト』
各章あらすじ
解説 優しさの自覚と、自由な選択

 

この本が、あなたを変える!

60分でわかる カミュの「ペスト」
大竹稽 あさ出版 2020-7-5
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大竹稽さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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