【書評:1535冊目】ハーバードの日本人論(佐藤智恵)

【日本人はどこから来てどこに向かうのか?】
作家・佐藤智恵氏が、『ハーバードの日本人論』と題して、ハーバード大学の10人の教授のインタビューを通して、日本人の起源・特徴・魅力などを学術的に考察する一冊。

■書籍の紹介文

日本人の魅力や特徴を教えてください。
あなたは、なんと答えますか?

 

本書は、遺伝学・比較政治学・宗教史など、ハーバード大学の10人の教授のインタビューを通して、日本人はどこから来たのか、どこに向かうのかを考察する一冊。

 

・周りの目を気にする
・和を乱さない
・規律正しい
・おもてなしの精神がある
等・・・。

 

日本人らしい魅力や特徴と聞かれると、こうしたことを挙げるのではないでしょうか。
果たして、これら日本人らしい魅力や特徴は、どうやって誕生したのかを深掘りしていく。

 

これが、本書のテーマになります。
テーマに対して、人文科学・社会科学・自然科学の専門分野をもつ教授陣の分析に触れることができます。

 

「なぜ、日本人にはお酒が弱い人が多いのか」など。
身近な「なぜ?」を本格的に分析していて、読む物としてとてもおもしろいです。

 

そして、気づかされます。
「日本人は世界的にみて珍しい存在なのだ」と。

 

各教授の「日本への”興味”が尽きない!」という姿勢も新鮮。
ハーバード大学で教鞭をとるような人達が、嬉々として日本を語っている姿にも驚きます。

 

翻って、わたし達は日本人をどこまで理解しているのか、いや、理解しようとしているのか。
この手の本の常套ですが、やはりこのことを考えさせられます。

 

嬉しいのは、日本人を考える際、どこから入っていけばいいかの情報が豊富なこと。
映画・アニメ・文学・美術など、多岐にわたっています。

 

ジブリ作品や東野東吾など、われわれがエンタメとして消費しているもの。
『その裏を覗いてみるだけでも、「日本人とは?」という本質が見えてくるんだよ』と、教授陣は語りかけてきます。

 

思わぬ掘り出し物に当たった。
そんな感覚になる一冊です。

 

◆あなたは何人?

ハーバードの日本人論
佐藤智恵 中央公論新社 2019-6-6
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■【要約】15個の抜粋ポイント

多くの日本映画の根底には「善の中には悪があり、悪の中にも善がある。たとえ悪者であっても、その行動を起こしたのには相応な理由がある」という考え方があります。
その理由は極めて人間的なものです。
そのため日本映画を見るときは、双方の立場をとても深く理解する必要があります。
こうした視点はほかの国の映画にはあまり見られないものなので、授業でも議論が盛り上がります。

 

IT起業家がアニメーションに夢中になるのは、ITビジネスの本質が「リミックス」にあるからだと思います。
情報をフラット化し、必要な情報を収集し、それらを組み合わせて、新事業をつくる。
ここにアニメーションとの共通点があるのです。

 

若冲(じゃくちゅう)の絵画を見てもらえば、日本絵画がどのように描かれ、どのような新しい技術が使われているのか、すべて説明できてしまうのです。

 

東アジアだけではなく、ヨーロッパ、アフリカ、オーストラリアの人々は皆、6万年前にアフリカを出た現生人類の子孫なのです。

 

縄文人がどこから来たのか。
これは私たち遺伝学者にとって大きなミステリーです。

 

健康な細胞を維持するのに不可欠な栄養素がタンパク質ですが、大豆には良質なタンパク質が多く含まれています。
(略)
日本人は味噌、醤油、豆腐、納豆など、さまざまな形に加工して摂取してきました。
世界中で日本人ほど大豆を食べる国民はいません。

 

世界中の民主主義国家を見渡してみても、「政策が最も支持されていない政党が選挙で勝ち続けていて、長期政権を維持している」という事例はほかにありません。
そういう意味でも、自由民主党はユニークな存在なのです。

 

自由民主党の優位を支えているのは、「小選挙区選挙に多くの議席が割り当てられている既存の選挙システム」「野党の分裂」「自公の連立」「低い投票率」の4つです。
この4つのうち、いくつかが変わらないかぎり、自由民主党の優勢は続いていくと予測しています。

 

日本のビジネスパーソンがまず取り組むべきなのは、ウィークタイズを増やすことでしょう。

 

トヨタの生産システムを可能にしているのは、継続して学習し、問題を解決する企業文化です。
その文化は全社員に浸透しています。
だからこそ、簡単に真似できないのです。

 

多くの日本の人々は、自分のことを無宗教だと思っているようですが、日常生活を見ていると、アメリカ人よりも宗教的な伝統をたくさん取り入れているのに気づきます。

 

日本人は伝統的に「ものには魂が宿っている」と考えますから、ものを大切にします。
この考え方は神道から影響を受けていると思います。
日本人にとって、ものはただの人工的な物体ではなく、生き物と同じように魂あるものなのです。

 

日本の終身雇用制も、江戸時代に由来するのではないかと思います。
武士は一生同じ藩の中で仕えなければならず、ほかの藩への「転職」などできませんでした。
270年間に及ぶ江戸時代の藩の雇用形態が、現代の日本企業に脈々と受け継がれているのです。

 

日本文学の視点は私たちにとってとても貴重なものです。
日本の作家の物語を伝える力、日本国外の人々にも共感されるような普遍的なエピソードを語る能力は、日本文学の真の強みでしょう。

 

小説が必ずしも社会問題の抑止力になるとは限りませんし、病気で苦しむ患者や家族の癒やしになるとも思いません。
でも文学にはこうした問題を世界に強く問いかける力があると信じています。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1535-1】伊藤若冲の画を観る計画を立てる

【1535-2】ウィークタイズを増やす

【1535-3】文学を読む

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】ハーバードの日本人論
【著者名】佐藤智恵著者情報
出版社中央公論新社
【出版日】2019/6/6
オススメ度★★★★☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード社会教養考える
【頁 数】294ページ
【目 次】
第1講義 日本人はなぜロボットを友達だと思うのか
第2講義 日本人はなぜ細部にこだわるのか
第3講義 日本人はどこから来たのか
第4講義 日本人はなぜ長寿なのか
第5講義 日本人は本当に世襲が好きなのか
第6講義 日本人はなぜ「場」を重んじるのか
第7講義 日本人のオペレーションはなぜ簡単に真似できないのか
第8講義 日本人はなぜものづくりと清掃を尊ぶのか
第9講義 日本人はなぜ周りの目を気にするのか
第10講義 日本人はなぜ物語の結末を曖昧に描くのか

 

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佐藤智恵さん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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