【書評:2177冊目】武器としての行動経済学(弓削徹)

【どう取り組めばいいの?が分かる一冊!】
マーケティングコンサルタント・弓削徹氏が、『武器としての行動経済学』と題して、身近に感じる事例を用いながら、現場での応用に主眼をおいて行動経済学の理論を解説する一冊。

■書籍の紹介文

誰にでもある、「買うつもりなかったのについ買っちゃった」という経験。
あなたは「なぜ買っちゃったのか」と原因を考えたことはありますか?

 

本書は、複雑で多岐にわたる行動経済学の理論を、身近に感じる事例を用いて解説しながら、”現場”での応用に主眼をおいて、行動経済学の実践活用法を解説する一冊。

 

「あるある!」。
読みながら思わず声に出して言ってしまうほど、誰にでも思いあたる”身近な”事例が学習意欲を駆り立ててくれます。

 

現場での応用に主眼を置いているので、当然ながら”売る側””仕掛ける側”のための本です。
ですが、”買う側”にとっても知っておくと役に立つと思わせてくれる実用性は、類書とは一線を画す優位性だと感じます。

 

いかに自社の商品を買ってもらうか(買い続けてもらうか)。
尽きることのない永遠の課題です。

 

この課題で一番厄介なところは、消費者は非常に移り気だということです。
あんなに喜んで買ってくれていたのに、ある日突然そっぽを向いてどこかに去ってしまう・・・。

 

「なぜ?」とお尋ねしても、「なぜ?と聞かれてもね・・・」の禅問答。
そう、一度決定したら同じように動き続ける機械と違い、人間は『感情』に行動を支配される生き物です。

 

理由はなくとも感情が許さなければ、いとも簡単に行動を変えてしまうわけです。
そんな”理不尽な仕打ち”にめげることなく、自社の商品を買ってもらわなければならないのです。

 

こうした不利な戦いの中で生み出された武器が『行動経済学』という学問。
感情や心理に左右される人間の行動・現象を、ルール化してまとめ上げようという野心的な試みです。

 

人間は、○○という状況下に置かれると、□□という心理が働き、△△という行動を取りやすい。
こうした発見を、1つ1つ武器に変えていくのが行動経済学。

 

ゆえに、学問体系は複雑かつ多岐にわたります。
結果、手持ちの武器が増え過ぎてしまって、いざ現場でうまく使いこなせないという問題が発生してしまいます。

 

これでは本末転倒。
どんなに優秀な武器も、現場で使い物にならなければ宝の持ち腐れでしかありません。

 

そんな残念なことは起こさせない、現場で使いこなせるように解説してあげたい!
そんな著者の熱意から誕生したのが、本書です。

 

どこまでも現場を意識して書かれているので、次項の要約は苦労しました。
なので、「あるある!」「わかるぅ〜」という箇所が1つでもあれば、ぜひ書籍を読んでみてください。

 

”売る側”にとっては販売戦略が、”買う側”にとっては消費行動が。
この本を読んだ前と後で、確実に変わることでしょう。

 

『感情』というつかみどころのない難敵を相手にしているからこそ。
この世の中は魅力的な商品やサービスで溢れているのかもしれません。

 

◆消費者としても販売者としても目から鱗のアイデア満載!

武器としての行動経済学
弓削徹 あさ出版 2025-4-15
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■【要約】15個の抜粋ポイント

BtoBといえども行動経済学は有効であり、その呪縛から逃れることはできないのです。

 

給与日本一で知られるキーエンスでは、顧客との接触時間を増やすことがKPIになっています。
実際に、「訪問回数が多いゆえ、何かあったときに真っ先に顔が浮かんだ」ということで相談やニーズの共有が実現し、提案・納品に結びつくケースは少なくありません。
もちろん、前提として同社ならではの高品位な提案があることは事実です。
しかし、物理的な密着営業がその土台となっていることは間違いなく、行動経済学をうまく取り入れた例だと私は思っています。

 

◆選択のパラドクス
行動経済学の視点で見ると、お客様の選択決定を促したり特定の商品を選ばせたければ、多すぎず少なすぎない選択肢を設定する必要があるということがわかります。
具体的には、2〜4の選択肢を用意し、選びたくないものを当て馬として入れておくということでしょうか。

 

◆両面提示の原理
ポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報もあわせて提供する、両面提示の効果が高まる条件としては、とうぜんのことながらデメリット(ネガティブな情報)が重大すぎないことが必要です。
(略)
「人気商品」であれば、先にポジティブ情報、あとでネガティブ情報の順番で。
これに対して、コモディティなど「関心が高くない商品」は、先にネガティブ情報、あとでポジティブ情報の順番とすることがコツです。

 

◆カクテルパーティ効果
矢印の向き(主語)を変えるだけでいいのです。
商品を主役にするか、お客様を主役にするかで、お客様への届き方はまったく違ってきます。
これも絞り込みの一つといえます。
(略)
何かユニークなニーズを満たすニッチな部分やトンガリを持って強調するからこそ、検索に引っかかりやすくなりお客様に発見してもらえやすくなるのです。

 

◆デフォルト効果
人は疲れているときほど初期設定のままにしてしまいがちだといえます。
そこで、選択肢を提示する際に、こちらにとって望ましいオプションを初期設定とすることで、お客様の選択を誘導できる可能性があります。

 

◆フレーミング効果
「買い物客20人に1人の購入代金をすべて無料にする」というキャンペーンがあるとします。
これは実質的には「全品5%引き」と同等の割引率です。
しかし「5%引き」ではインパクトがありません。
ところが「20人に1人、お買い上げ代金がすべてタダ!」といわれると、とてもおトクなオファーとして響きますし、「もしかして代金が無料になるのなら、たくさん買わなければソンだ」というインセンティブまではたらきます。

 

◆ナラティブ効果
企業や商品の価値を伝えるには、物語として語ることが有効です。
物語は人の感情に訴えかけ、共感を育てます。
記憶にも残りやすく、購買意向(意欲)が高まるだけでなく、心情的な味方ができるような感覚があるのです。

 

◆システム1
選択の意思決定に際し、複雑であったり、不明の部分があると、人はシステム1を発動し、直感的な判断を下します。
例えば保険加入や携帯料金のプラン選択のように、検討項目が多すぎると、人は無意識に基準点を求めます。
そのときに、担当者が「80%のお客様がこちらのプランを選んでいます」とささやくと、「では、それにします」と意思決定しやすいのです。

 

◆ヴェブレン効果
●低価格にしてはいけない8つの理由
(1)利益を出せなくなる
(2)値引き競争で自社も他社も疲弊する
(3)安モノを売る会社と思われる
(4)安モノを求めて客層が低下する
(5)価格以外のウリが消え、お客様が価格で他社へ去る
(6)値引きしていくと従来の顧客が不満を抱く
(7)定価で売る努力や工夫が生まれなくなる
(8)クレームが増え、評価まで悪くなる

 

◆ゼロ価格効果
お客様がリスクに感じる不安を取り除くことを「リスクリバーサル」といいます。
返品無料として無償の返品や保証を提供すると、「失敗してもいいのだ」という安心感から購入へのハードルが下がります。
また、「返品可能」と明示すると、商品力に自信があるのだろうとも受け止められるのです。

 

◆端数価格
端数価格とは、198円、980円、29,800円などのようなキリのわるい値付けです。
これは、消費者が左端の数字に注目する傾向があるという行動経済学の知見によるものです。

 

◆コミットメント
人は、公言したことや他人に約束したことは実行しようとする傾向があります。
商談も例外ではありません。
つまり、お客様が自ら意志の表明(コミットメント)などをすると、そのあとの購買行動につながりやすくなります。
例えば、試食をしてもらった際に「もっと食べたい!」という言葉を引き出せれば、それが小さいながらも”コミットメント”となり「なら買わなくちゃ」となって購入してくれたりします。

 

◆ディドロ効果
あるブランドを購入して信頼感を抱いたお客様が「ディドロ効果(新たな商品を購入したことによって、それに合わせてほかの物も購入したくなる心理作用)」によって、ほかの物も同じブランドでそろえたいと考えることは少なくありません。

 

◆行動観察
基本は、行動を見たり、記録、分析することです。
お客様は商品をどのように使ったり、操作を間違えたりしているのか。
これをビデオカメラによる長時間の定点観測で捕捉する。
あるいは店頭で、どのように手に取り、買ったのか、棚に戻したのかを観る。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2177-1】買い物をする際、本書の中のどんな効果が使われている売り場なのか分析してみる

【2177-2】商品を購入した際、本書の中のどんな効果に影響されたのか分析してみる

【2177-3】「消費者の行動にこそ最大のヒントがある」ということを常に意識して仕事をする

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】武器としての行動経済学
【著者名】弓削徹著者情報
出版社あさ出版
【出版日】2025/4/15
オススメ度★★★★☆
こんな時に明日のマーケティング力を磨きたいときに
キーワード稼ぐ力アイデアビジネス理論
【頁 数】256ページ
【目 次】
プロローグ 個人にも!会社にも!「行動経済学」は役に立つ
第1章 売り方/商談
第2章 広告表現
第3章 価格決定
第4章 ブランド化

 

▼さっそくこの本を読む

武器としての行動経済学
弓削徹 あさ出版 2025-4-15
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弓削徹さん、素敵な一冊をありがとうございました!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

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  1. 2025年 5月 28日

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