【書評:1967冊目】西洋アートのビジネス史(高橋芳郎)

【アートを知ることは、人間を知ることである】
株式会社ブリュッケ代表・高橋芳郎氏が、『西洋アートのビジネス史』と題して、アートの歴史を経済的価値の視点で紐解きながら、アートとビジネスの結びつきを考察する一冊。

■書籍の紹介文

アートとビジネスの関係性。
あなたはどんなものが考えますか?

 

本書は、”経済的価値”の観点からアートの歴史を紐解いていくことはビジネスにも通じると提起し、アートとビジネスの間に確かにある結びつきを考察する一冊。

 

バンクシーの絵画は約25億円。
これは、まさにアートの”経済的価値”です。

 

でも、あなたがアートを描いても”経済的価値”はありません(すいません)。
この差は、なぜ生まれ、どこで生まれるのでしょうか。

 

どんな画家も、最初はあなたと同じ無名の立場です。
現在は世界的に著名な画家が、現役当時はまったく無名で貧乏だったという話はよく聞きます。

 

そこから、どのような変遷を辿って”経済的価値”を持つに至るのか。
ここを、アートの歴史を紐解きながら考えることは、ビジネスを考える上でも有用である。

 

このことを著者は説いていきます。
ビジネス的視点からアートの歴史を紐解いているので、アートに不慣れな人でも読みやすい内容だと感じます。

 

アートを理解することは、人間を理解すること。
ビジネスを理解することは、お客様の心を理解すること。

 

「人間を理解する」という点で、アートとビジネスはつながっている。
この視点はとても新鮮であり、アートが一気に身近になるように感じます。

 

また、本書の内容を吸収することで「アート思考」への理解も一気に広がるのを感じます。
「しっかり勉強したな」という満足感を持って本を閉じられる一冊です。

 

審美的な美しさという価値に、いかにして経済的価値が付加されたのかを知る。
その歴史を紐解くことは、いかに0から1を生み出し、1を10にしていくのかというビジネスの本質を理解することにつながります。

 

普段と違った視点に触れてみたいな。
そんなときは、ぜひ本書を開いてみてください。

 

◆これは面白い!

西洋アートのビジネス史
高橋芳郎 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2022-12-23
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■【要約】15個の抜粋ポイント

現在の英語におけるアートは技術というよりも芸術という意味合いが強く、技術はギリシャ語のテクネ由来のテクニックに置き換わりました。
産業革命以降、手でつくるものが、科学的な技術と感性的な芸術とに分かれてしまったからです。
つまり、もともとは技術を意味したアートは、いつのまにか技術に対置される芸術を意味するようになったのです。

 

現代に生きる私たちは、つい現代の視点からものを見てしまうので、はるか昔からアートという制度が存在して人々を感動させていたかのように感じてしまいますが、絵や彫刻を鑑賞するようになったのも、美術館ができたのもルネサンス以降のことです。
私たちがラスコーの洞窟壁画を見て感動するような視点を当時の人は持っていなかったことでしょう。
アートという制度は歴史によってつくられたものなのです。

 

アートとは、その最も広い意味でいえば、人の手によってつくられて、作り手の意図が反映された創造物のすべてを意味します。
そのなかでも目で見て楽しむことができるもの、つまり視覚美術がアートの中心となります。
しかしながら本書では狭い意味で、西洋の美術史のコンテクストにのっとって、19世紀のフランスで花開いた、自由主義のなかで社会に認知されたもののみをアートとします。

 

ルネサンス期の画家は、19世紀フランスにおいてアートの概念が生まれる以前の人々ですが、今日の私たちが見てもアートと錯覚してしまうほどの技量を持っています。
そのため、ルネサンス以降の絵や彫刻は一般的にアートと呼ばれています。

 

ルネサンスが勃興したのはわずか人口10万人ほどの都市国家フィレンツェです。
(略)
フィレンツェの画家は、単に絵画を描くだけでなく、彫刻、金細工、建築、音楽、哲学、数学など、なんにでも興味をもって手を出しました。
その最たる者がレオナルド・ダ・ヴィンチです。

 

ドミニク・アングルの絵画《レオナルド・ダ・ヴィンチの死》は、芸術家が国王よりも優れた存在であることを示すもので、現代のアーティストへとつながるアート至上主義が生まれつつあったことを教えてくれます。
ダ・ヴィンチの死から300年を経て、アーティストはようやく理想の社会的地位を獲得したのです。

 

ルネサンス美術を終わらせる原因の一つとなったのが宗教改革です。
宗教改革とは16世紀に起きたキリスト教の教会の革新運動です。

 

ルーヴル美術館の開館は、芸術作品に絶対的な美を見出す契機になりました。

 

新古典主義とロマン主義との対比は、ルネサンスとバロックとの対比になぞらえて語ることもできます。
彫刻のようなデッサンを重視するか、光と影とドラマを重視するかの違いです。

 

もしフランス革命によって一般庶民にも教育の機会が与えられることで識字率の向上が起こらなければ、産業革命によって有産階級が誕生しなければ、あるいは活版印刷の発展と普及がなければ、ロマン主義絵画も生まれなかったといえます。
あるいは印刷技術の発展があったとしても、高級品であった紙が大量生産できるようになって安くならなければ、新聞や雑誌などのメディアも普及せず、ジャーナリズムもそれほど力を持たず、個人のブランディングを前提とする狭義のアートが19世紀に誕生することはなかったかもしれません。

 

すでにジャーナリズムにおいて、名前によって価値が高まる時代が到来していたところに、国策としての万博が開催されたことで、フランスにおいては他国よりもさらにブランドの価値が高まっていったのです。

 

画商の立場からしても、手の遅い寡作な画家より、旺盛に制作して作品を提供してくれる画家の方が売りやすいところがあります。
素早く描ける印象派の作風は、時代の要請にも合っていたと思います。

 

18世紀に、フランスやイギリスでアカデミーがつくられると、画家を取り巻く風景はまた一変しました。
アカデミーは、専門的職業人として画家の地位を押し上げましたが、その一方で、「高貴な画家は、商売などするべきではない」といった考え方が生まれて、画家と画商が分化していったのです。

 

現代のアーティストの祖先がマネだとするならば、私も含めて現代の画商の祖先はまさしくこのデュラン=リュエルであったということができます。

 

なぜアートへの関心が高い方はビジネスでも成功するのかーーーそれは、アートを理解することが人間を理解することであり、人間を理解している人こそがお客様に支持されるからではないでしょうか。
ビジネスでは、そのようなお客様の気持ちを的確に理解して対応するセンスが求められます。
それができる人はビジネスのどのような分野でも成功するでしょう。
そして、アートこそが、人間の情緒に対する理解を育むのに最適なツールなのだと思います。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1967-1】美術鑑賞を習慣にする

【1967-2】アートを鑑賞したら、感じたことを書き出す

【1967-3】【1967-2】を受けて、なぜそう感じたのかさらに深掘りする

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】西洋アートのビジネス史
【著者名】高橋芳郎著者情報
出版社ディスカヴァー・トゥエンティワン
【出版日】2022/12/23
オススメ度★★★★☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード教養発想力人間関係
【頁 数】350ページ
【目 次】
第1章 アートとはなにか?
第2章 ルネサンスに見るアーティストの誕生
第3章 ルネサンス以降のアートの変遷
第4章 メディアとブランドの誕生
第5章 画商の勃興とその発展
第6章 アートとビジネスの関係

 

▼さっそくこの本を読む

西洋アートのビジネス史
高橋芳郎 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2022-12-23
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高橋芳郎さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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