【書評:1494冊目】遅刻してくれて、ありがとう(下)(トーマス・フリードマン)

【トップダウンからボトムアップへ】
ピュリツァー賞を3度受賞したトーマス・フリードマン氏が、『遅刻してくれて、ありがとう』と題し、上巻に続く下巻では、加速する時代の世界・社会のあり方を考察する一冊。

■書籍の紹介文

これからの社会。
どうなっていくのが、いいと思いますか?

 

本書は、加速する時代では、強権的なトップダウン型からコミュニティをベースにしたボトムアップ型へと社会のあり方を変化させる必要があると提起し、あるべき姿を考察する一冊。

 

上巻に続いて、下巻もとても濃い内容です。
トランプ大統領はなぜ生まれたのか、難民問題やテロ事件はなぜ起きるのか等、加速する時代が世界をどう壊しているのかが明らかになります。

 

特徴的なのは、『”母なる自然”に学べ』というメッセージです。
自然は多様性を保つことで生態系を強くし、それが地球規模で広がることで、より大きな生態系を安定させているのです。

 

翻って、わたし達人間社会はどうでしょうか。
多様性を拒絶する流れと多様性を拡散する流れが、激しく過激にぶつかり合っている状況だとおもいます。

 

では、どうすれば「急流が衝突し合い互いを破壊し続ける流れ」から「大河のようにすべてを許容した穏やかな流れ」へと変わっていけるのか。
あるべき姿を世界中の事例をケーススタディしながら、考察しています。

 

考察しながらも、1つの警鐘を鳴らしています。
テクノロジー、グローバリゼーション、気候変動とすべてが加速する時代、わたし達に残されている時間は非常に少ないと。

 

そこに、著者は1つの方向を示します。
信頼と協力の元につながる小さなコミュニティを中心としたボトムアップ型の社会です。

 

なぜ、著者はココにたどり着いたのか。
考えながら読むことで、一段と思考を深くします。

 

現在の世界の流れを理解できる良書。
上巻とセットで、必ず読んでみてください。

 

▼上巻はこちらでご紹介しています
【書評:1493冊目】遅刻してくれて、ありがとう(上)(トーマス・フリードマン)

 

◆加速する時代の社会論。

遅刻してくれて、ありがとう(下)
トーマス・フリードマン
日本経済新聞出版社 2018-4-25
売上ランキング(公開時):78,121
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■【要約】15個の抜粋ポイント

世界の一部でアメリカのパワーが縮小していることと、”市場”、”母なる自然”、ムーアの法則の加速による世界の大幅な改造が重なっていることが、私がポスト冷戦後と名付けたいまの時代の特徴になっている。

 

現在のテクノロジーとグローバリゼーションは、独裁的な社会を合意による社会に作り替えようとする”政治創造者(メイカー)”と、政府を打倒して宗教的もしくは思想的な圧政を敷こうとする”政治破壊者(ブレイカー)”の両方に、力をあたえる。
しかし、いずれも効果的に統治する能力が欠けている。

 

破壊者に関していえば、個人であろうと、ISISやアルカイダのような集団であろうと、抑止は不可能だ。
ただ、航空兵力、特殊部隊、ドローン、現地の軍隊を使って、彼らのさまざまな作戦地域で封じ込めて衰退化させることはできる。
しかし、結局のところ、それらが存在するコミュニティが彼らの主義主張を非合法化し、指導者を投獄するか殺害しない限り、完全に葬り去ることはできない。
外部からは衰退化を手伝えるだけで、彼らを最終的に滅ぼせるのは村人だけだ。

 

私たちは3つの”気候変動”が同時に起きている世界に生きている。
テクノロジーの環境、グローバリゼーションの環境、そして気候そのものと自然環境の変動が、同時に加速している。

 

自然界にライオン・キングはいない。
共通の利益のためにシステム全体を1つの種が管理するという考え方、つまり”支配権”の理念は、人間が創り上げた。
とはいえ、さまざまな種は自分たちに最適の場所や生息場所で共進化する。

 

個々の生態系と、もっと大きな全体のバランスを適切にして、両者がお互いを育てるようにすることは、自然界でも政治でもきわめて重要だ。
それをやるための鉄則は存在しないが、適切なときに適切なバランスがあれば、レジリエンスが生まれる。

 

あからさまにいえば、私たちは人類がいまだかつてなかったくらい神に似るようになった世界を創造した。
さらに、サイバースペースと呼ばれる広大な新領土がある世界を創造した。
そこには法律や価値観もなく、これまでとは違って神もいない。

 

私たちが種として生き延びるためには、あらゆる”コミュニティ”の概念を地球のあらゆる領域へ拡大しなければならない。

 

加速の時代にレジリエンスと推進力を生み出す理想的な政治単位は、健全なコミュニティだ。
コミュニティのレベルのほうが信頼を生み出しやすいし、信頼は柔軟性と実験を強化するからだ。

 

グローバルな相互依存が強まり、より多様なよそ者との密接な接触が増えているこの時代、お互いを理解するために築く橋はずっと長くなるだろうし、以前よりもずっと深い亀裂に橋を架けなければならない。
だからこそ、コミュニティ建設と、急増する多様な人口をつなぎとめる健全なコミュニティが、いっそう必要になっている。

 

意見の相違や考え方の違いはある。
それは肝心な点ではない。
健全な徴候なのだ。
肝心なのは、そういった違いに取り組んで前進できるようになるまで、テーブルを離れないことだ。

 

数多くの領域でイノベーションを加速させなければならないが、それは持続する協力と信頼があるところでないと実現しない。

 

世界が高速なとき、針路からそれたら、もとに戻るには、長い距離を行かなければならない。
市場、母なる自然、ムーアの法則がすべて高速で加速しているいま、些細なナビゲーションのミスは重大な結果を招きかねない。

 

加速の時代は、過度の自動化や移民や競争、そして無数の新しい考え方や社会的慣行の流れをもたらし、人口のかなりの部分が、よりどころを失ったと感じた。

 

勃興する市もあれば、没落する市もある。
だから、繁栄するコミュニティが開発した組織的なイノベーションを規模拡大し、できるだけ多くの地域に、できるだけ速くひろめることが、現在の政治の責務だ。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【1494-1】高速な時代を生きている自覚をもつ

【1494-2】自分の価値観にあったコミュニティを育む

【1494-3】意見・考え方の違いだけで、人付き合いを遠ざけない

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】遅刻してくれて、ありがとう(下)
【著者名】トーマス・フリードマン
出版社日本経済新聞出版社
【出版日】2018/4/25
オススメ度★★★★☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード社会グローバル教養
【頁 数】424ページ
【目 次】
3 イノベーティング(承前)
4 根をおろす

 

この本が、あなたを変える!

遅刻してくれて、ありがとう(下)
トーマス・フリードマン
日本経済新聞出版社 2018-4-25
売上ランキング(公開時):78,121
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トーマス・フリードマンさん、素敵な一冊をありがとうございます(^^)

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