【書評:2190冊目】ゲームチェンジ(大前研一)

【直ちにこの2つに取りかかれ!】
経営コンサルタント・大前研一氏が、『ゲームチェンジ』と題して、これからの日本は「真の観光立国シフト」と「教育の抜本的改革」にかかっていると提起し、具体的な方策を提言する一冊。

■書籍の紹介文

これからの日本の生命線。
あなたは、どの分野にかかっていると考えますか?

 

本書は、「真の観光立国化」と「抜本的な教育改革」が為されなければ、”失われた30年”は”失われた永遠”になってしまうと警告し、日本が今実行すべき具体的な方策を提言する一冊。

 

『厳しい状況のときほど、やるべきことを絞り一点集中しなさい。』
ビジネス書や自己啓発書を読んでいるとよく目にする、真理のような教えのひとつです。

 

この本もそうです。
暴れる第2次トランプ政権、続く紛争、増える自然災害(気候変動)、進む社会分断、・・・・。

 

政治も社会も経済も不安定化していて、厳しく難しい状況が続いています。
それゆえ、個人でも企業でも役所でも、何をどう手をつけていけばいいのだろうかと苦悩しています。

 

そうした状況下において、わたし達が一点集中すべきことは何なのか。
著者は、短期的には「真の観光立国化へのシフト」、中長期的には「教育の抜本的改革」だと強く主張します。

 

なぜ、この2つが「失われた○○年」を更新し続ける日本の突破口となるのか。
具体的に、この2つをどのように実行に移していけばいいのか。

 

膨大なデータからの”現状分析”と世界が認めた著者の”知性”。
これらをフル回転させた提言がまとめられています。

 

「地方創生政策などという無駄は即刻廃止し、真の観光立国政策によって地方を活性化せよ」
「躍起になっている半導体市場はせいぜい5〜6兆円、真の観光立国が叶えば50兆円市場だ」
「英語がわかっていない英語教師に、いつまで英語教育を任せる気なのか」

 

こういった、一向に衰えることのないエネルギッシュな”大前節”は本書でも健在です。
空気感や物言いで好き嫌いが分かれる著者ですが、提言の中身は無視できるものではありません。

 

厳しく難しく複雑化していく時代。
他人任せ政治任せでなんとなく生活できる、そんな余裕はいよいよなくなってきたことがわかります。

 

◆読んで考えておくべき一冊。

ゲームチェンジ
大前研一 プレジデント社 2025-6-30
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■【要約】15個の抜粋ポイント

「トランプ現象」は、単にトランプ氏個人の資質にとどまらず、アメリカ国民そのものの変質を映し出している。
私は、アメリカが「もはやかつてのアメリカではなくなった」と痛感している。
もはや世界の模範でも自由主義陣営のリーダーでもないし、その気概すらない。
国民の側も、品性も知識も知恵も欠いた、下品の極みのようなリーダーを再び大統領に選ぶほど変質してしまったのである。

 

日本はこれまで、安全保障も経済も、「アメリカ依存」という構図に甘えてきた。
だがそれが限界を迎えつつある。
これからは、日本が自らの戦略的選択によって生き残っていかねばならない時代である。
トランプ政権の再来は、そのことをより厳しく突きつけてくるだろう。

 

日本企業が生成AIで勝者となる方法は、「生成AIを使う技術」を磨くことである。

 

日本は民主主義国家で議会制を採っているため、政治的に安定した国であると思われているが、選挙で正しい政策や政策論争が行われないため、すべての政権が不安定になってきている。
日本だけでなく、政権の突然死が起こりやすい状況になっているのが、世界共通の傾向だ。
選挙を行えば、誰かが大統領や首相に選ばれるが、大衆が2〜3カ月でソッポを向くようになる傾向がどこの国でも出ている。

 

まず政府は「失われた35年」からの脱却を目指すことである。
そのためには、真の観光立国を目指すべきだ。
富裕層も含めて海外から呼び込み、50兆円の産業をつくるのが一つ。
そして、総額2000兆円にのぼる個人金融資産の活用。
「失われた35年」からの脱却は、この2つしかない。

 

政府は効果の上がらない地方創生にこだわるより、観光庁を観光「省」に格上げして、インバウンド消費を50兆円規模にするための方策を考えさせたほうが、よほど地域活性化の起爆剤となるだろう。
5000万人で1人100万円、1億人で1人50万円、日本で消費してくれたら、どちらのケースでも50兆円になる。
実際には、この組み合わせでいい。
これをどうしたら実現できるかを日夜考え、政策をつくっていく役所が必要なのだ。

 

オーバーツーリズムは現象であって、事実ではない。

 

ただ「若い人に来てほしい」と叫んでも、誰も来ない。
まず外から人が来て、次に富裕層が来て楽しんでもらえる環境が整えば、若い人も戻ってくるという順序である。

 

日本が真の観光大国になるために必要なのは「安全性」「交通の便」「食と宿」という3つの条件を満たすことである。
日本は安全性では、世界トップだ。
ただし、交通の便について、国内は問題ないものの東京、大阪、名古屋以外の地域は海外からのアクセスが悪い。
食については慣れると日本食が好きになる人が多いが、宿についてはまったく足りていない。
外国から来た旅行者が「泊まるところがない」と言って、カプセルホテルやラブホテルに泊まり、珍しいとインスタグラムで発信して喜んでいるが、あまり褒められた話ではない。

 

外国人観光客に地方で長期滞在してもらうための取り組みとしては、テーマ別の”巡礼”をつくり出すことが重要だ。

 

芸術やスポーツ以外にも、ゲームやアニメなど、日本が世界で誇れる分野で活躍する人材の多くは、文科省の枠の外で育っている。
日本はミシュランの星の数が世界トップだが、料理人の多くは中学校を出た後、親方の下で修行する。
文科省の埒外だ。
新しいフレーズに学ぶものは、学習指導要領で決めるのではなく、自分で見つけることが大切だ。
周りはそれをファシリテートするだけでいい。
そうやって育った人材が、生成AI時代をリードしていくのだ。

 

私は「実況中継による英語学習」を推奨する。
これは自分が見ていることや考えたことを「和文英訳」しないで、とにかく英語で口に出してみるというものだ。
「これって英語でどう言えばいいのかな」とわからないところが出てきたら、それをメモしておいて、後でネイティブの人に尋ねて言い方を覚えるのだ。

 

多くの若者は「これを勉強したい」「こういうことをやりたい」とスキルをブロック化している。
だから「○○大の卒業証書をもられる」と言っても響かない。
それよりも、「プログラミングができるようになる」「ゲームをつくれるようになる」「AIを活用したマーケティングができるようになる」といった細切れのスキル・ブロックを積み上げて仕事をこなしていきたいのである。
これからは勉強したいことや身につけたいスキルがあれば、年齢に関係なくさっさと学び始め、リスキリング(学び直し)を繰り返さなければならない時代であり、それに対応した教育が不可欠になる。
これは有名大学の「卒業証書」をもらうことを優先してきた工業化社会時代の学校教育体系とは180度異なる。

 

リスキリングの時代では、新卒を大量に採用して、ベテラン社員が教育するという、従来の手法では間に合わない。
外部から専門家を呼んできて直接教えないと、新卒を会社の古い鋳型にはめてしまうことになる。

 

現在の日本の最大の問題は、古色蒼然とした教育にある。
これが改善されない限り、「失われた35年」は、「失われた永遠」になってしまう。
日本復活の解決策は、極めてシンプルなのである。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2190-1】訪日外国人客に人気のスポットに赴き、なぜ人気なのか自分の意見をまとめる

【2190-2】生成AIを利用してみる

【2190-3】見たもの・感じたもの・考えたものを、積極的に英語で口に出してみる

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】ゲームチェンジ
【著者名】大前研一著者情報
出版社プレジデント社
【出版日】2025/6/30
オススメ度★★★★☆
こんな時に稼ぐ力を身につけたいときに
キーワード社会グローバル稼ぐ力
【頁 数】328ページ
【目 次】
巻頭言 「トランプ2.0」の100日
第1部 「世界の潮流」ー大激変する世界情勢
第2部 「観光立国論」ーインバウンドで50兆円を目指せ
第3部 「新・教育論」ー答えなき時代の教育のあり方

 

▼さっそくこの本を読む

ゲームチェンジ
大前研一 プレジデント社 2025-6-30
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大前研一さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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