【書評:2173冊目】世界は認知バイアスが動かしている(栗山直子)

【思い込みを甘くみるほどカモにされる!】
東京科学大学助教/栗山直子氏が、『世界は認知バイアスが動かしている』と題して、認知バイアスの主要理論を体系化しながら、認知バイアスと正しく向き合う方法を指南する一冊。

■書籍の紹介文

思い込みによって手痛い失敗をしてしまった・・・。
そのような経験をしたことはありませんか?

 

本書は、『「事実」ではなく「思い込み(バイアス)」に衝き動かされるのが人類だ!』と指摘し、思い込みを突かれてカモにされないために、認知バイアスと正しく向き合う方法を指南する一冊。

 

著名人が広告塔だから大丈夫だとおもった・・・。
詐欺まがいの商品やビジネスにひっかかった”被害者”が口にしているのを、ニュースで度々目にしますよね。

 

著名人が推奨している銘柄だから確実に儲かるとおもった・・・。
詐欺まがいの投資商品に飛びついて大損をした”被害者”が口にしているのを、ニュースで度々目にしますよね。

 

このように、「おもった」と「思い込まされる状態」に陥ってしまう。
ここに、『認知バイアス』の恐ろしさが潜んでいるのです。

 

情報社会となった今、だれでも簡単に情報にアクセスできるようになりました。
と同時に、多くの人が、だれよりも早く有益な情報を入手し、他人よりも有利な立場になりたいという欲求に駆り立てられています。

 

当然、その状況に巧みな手法を駆使し、”美味しいエサ”を垂らす輩も次々と出現します。
このとき、垂らされたエサに嬉々として食いついてしまうようでは、文字通りの”いいカモ”にされてしまいます。

 

しかし、反対の見方をすれば、巧みな手法を駆使できればビジネスに大いに活用することもできるわけです。
消費者の消費心理を刺激することができれば、大きな利益につながるからです。

 

それほど、『認知バイアス』というのは大きなパワーを秘めています。
ゆえに、正しく向き合う方法を確立しておくことがなによりも重要であると、著者は力説します。

 

正しく向き合うことができれば、情報に踊らされることはなく客観的な状態でいられます。
認知バイアスの知見を得ることで、自分は思い込みに踊らされず、思い込みに踊らされている他人を客観的に理解できるようになるのです。

 

そこを目指すためには、まず『認知バイアス』の本質をきちんと理解することです。
本書はそのために、主要理論だけでも70以上あるバイアスの世界を、実社会でイメージしやすいように体系化してまとめ上げられています。

 

『認知バイアス』を知らないことは、無防備な状態で戦場のど真ん中に立つのと同じ。
反対に、『認知バイアス』を理解することは、このうえなく強力な矛と盾を手にすることになる。

 

じっくり腰を据えて深掘りしていきたいテーマだと強く感じる一冊でした。
なお、下記の抜粋ポイントは、理論ではなく「すぐ実践できそうな行動」に焦点を当ててまとめてみました。

 

◆難しくも好奇心を刺激される一冊!

世界は認知バイアスが動かしている
栗山直子 SBクリエイティブ 2025-3-26
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■【要約】15個の抜粋ポイント

認知バイアスとは「思い込み」であり、「情報を処理するときに判断や記憶が合理的にできないために、ゆがんでしまう現象」である。

 

●認知バイアスを引き起こす4つの要因
要因①:思考のクセ
要因②:心
要因③:人
要因④:情報・モノ

 

人間には2つの思考経路があります。
ひとつが論理的に熟考し、判断する経路。
もうひとつが直感的、感情的に判断する経路です。

 

人は過去の記憶を勝手に改ざんします。
過去の出来事や予測についての記憶を後から知った情報によって変化させてしまいます。
(略)
そうした事態を避けるためには、結果論に陥らないように意識したり、別の結果はないかと自問自答したり、自分の当初の考えや予測を文書化したりして注意するようにしましょう。

 

人間は文字列や数列の始まりの部分を覚えていることが多いといわれています。
ですから、スピーチでも、大事なことは最初に持ってくるとよいとされているのです。
最初の部分の次に記憶に残っているのが、最後の方の数字でしょう。
これを親近性効果といいます。
最後に記憶したため思い出すのが比較的簡単です。
結果として、真ん中の部分や忘れやすく、思い出せない傾向にあります。

 

感情に過度に影響されないためには、今の自分の感情をそのままにせず、まず落ち着いて、自分を俯瞰してみることが重要になります。
メタ認知(自分を客観的に認知する能力)を働かせることを普段から鍛えておくことが認知バイアスの罠を避けるのには有効な手段になります。

 

(現状維持バイアスに陥らないための回避策)
まず、変化のメリットを考えるのが有効です。
結局、現状を変えられないのは、変えるメリットが大きい、多いと認識できないからです。

 

人はデフォルトを変更するときに「損失を感じたくない」という損失回避も働きますから、大きな不都合がない限り、人はデフォルトを受け入れやすいのです。
(略)
ですから、利用を促進したい制度であれば、それをデフォルトに設定して反対意見の人が申し出る仕組みにすればいいのです。

 

認知バイアスに陥らないためには、客観性、証拠を重視する姿勢が不可欠です。
証拠を確認したり客観視を心がける批判的思考を常に意識しましょう。

 

他人を評価するときや意見するときは、自分はどうなのか、たとえば若い人に忠告をするときは、自分の若いときはどうだったのかを、一度、冷静に振り返ってみることが必要なのかもしれません。

 

人が自己中心性を全く持たないのは不可能かもしれませんが、過剰な自己中心性は良好な人間関係を壊しかねません。
自己中心性から脱却するためには、当たり前に聞こえるかもしれませんが他人の気持ちを理解しようと常に心がけるしかありません。
また、他人は自分と同じことを考えているわけではないと想像力を働かせることも欠かせません。

 

人が何かを選ぶときには理由があります。
自分の選択を正当化する理由を求めます。
ですから、反対に考えれば、モノやサービスが選ばれるには理由が必要になります。

 

何かを買う際には極端な価格設定のものがあれば「これは、おとりかな?」と考えてみると、商品選びも変わってくるかもしれません。

 

●認知バイアスとうまく付き合う方法
・自分の偏見を知る
・すぐに決めない
・別の視点や反対の立場について考えてみる
・あまり少ない事例だけで判断しない
・他者の意見も聞いてみる
・直感を過信しない
・批判的思考の視点を持つ

 

弱点を持った私たちが正しい判断をするためには基本を忘れないことに尽きます。
個人にまずできることは、「それは本当か」と疑問を持ち、確認する習慣を身につけることです。
常に「それは本当か」の意識を持つことが、みなさんを誤った判断から救うことになるはずです。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2173-1】新しい取り組みを始める際は、「取り組む(変化する)メリット」を考えてみる

【2173-2】商品を選択する際、極端な価格設定のモノを見たら「これは、おとりかな?」と考えてみる

【2173-3】情報や意見に触れたとき、「それは本当か」と確認する習慣をもつ

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】世界は認知バイアスが動かしている
【著者名】栗山直子
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2025/3/26
オススメ度★★★★☆
こんな時に明日のマーケティング力を磨きたいときに
キーワード教養心理学社会
【頁 数】320ページ
【目 次】
プロローグ 世界は認知バイアスが動かしている
イントロダクション 認知バイアスの「キホン」と「本書での学び方」
CHAPTER1 思考のクセ
CHAPTER2 心
CHAPTER3 人
CHAPTER4 情報・モノ
エピローグ 認知バイアスとうまく付き合うために

 

▼さっそくこの本を読む

世界は認知バイアスが動かしている
栗山直子 SBクリエイティブ 2025-3-26
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栗山直子さん、素敵な一冊をありがとうございました!

※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。

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  1. 2025年 5月 07日

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