【あの企業が大炎上したのはバイアスが原因だった?】
関西大学社会学部心理学専攻教授・藤田政博氏が、『リーダーのための【最新】認知バイアスの科学』と題して、企業事例を題材に、バイアスと意思決定を考察する一冊。
もくじ
■書籍の紹介文
「なんで!?」
そうツッコミたくなるようなニュースが、最近増えていると感じませんか。
本書は、抗いたくても抗いきれないバイアスの怖さを企業事例を題材に紐解きながら、リーダーとして理解しておきたい、意思決定におけるバイアスへの対処法を考察する一冊。
「バレるに決まってるやん!」
「そんな言い訳が通用すると思っているのか!」
「世の中をバカにしているのか!」
日本中がおもわず総ツッコミしてしまうような、事件や不祥事が増えているように感じます。
それも、名だたる有力企業や評価されてきた組織において・・・。
しかも、さらに引っかかるのが当事者の発言・態度・対応の内容です。
「本当に反省している?」「そもそも悪いと思っていないだろ?」と、ツッコミを怒りに変えてしまうような”悪手”が非常に多い印象を受けます。
こうしたことが、なぜ起こってしまうのか?
ここに「バイアス」という切り口でメスを入れるのが本書です。
バイアスとは、物事を現実とは異なる歪んだ形で認識してしまう現象のこと。
この存在を知り、どのような影響を受けるのか理解しておかないと、意思決定を歪めて取り返しのつかない事態を起こしかねない。
だからこそ、とくに意思決定の役割を担うリーダーに理解しておいてほしい。
著者のそのような熱意から、実際に起きた企業事例に絡めながら、30のバイアスと意思決定時の対処法を示していきます。
さきほど私は、さも事実のように「増えているように感じます」と述べました。
これも、バイアスによって”増えているように勝手に思い込んでいる(込まされている)”だけかもしれません。
それくらい、バイアスは身近に潜み抗いたくても抗えない厄介な存在だと著者は指摘します。
だからこそ、「人間はとにかくバイアスの影響を受けやすいんだ」と理解しておくことが重要なのだと説きます。
理解をしておけば、理性が働いてくれます。
「その判断、バイアスの影響を受けていないか?」とチェック機能が働いてくれるわけです。
これにより、完全に抗うことはできなくても、影響を受ける確率や範囲を小さくすることができます。
結果、「おい!」と総ツッコミを受けるような意思決定(悪手)をしてしまう危険性を遠ざけることにつながるのです。
内容は専門的ですが、とても分かりやすく完成度の高い書籍でした。
オススメです。
◆理解しておけば対処ができる。
リーダーのための【最新】認知バイアスの科学
藤田政博 秀和システム 2024-4-20
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■【要約】15個の抜粋ポイント
(人間の認識とは)周囲の世界についての仮説が自分の頭の中にあり、それを目や耳などから入ってきた情報と照らし合わせて、修正を重ねて認識していくのです。
もちろん、この修正がうまくいって外界にあるものと内的な認知が一致するところまでいけば問題ありません。
しかし、修正が途中で終わってしまうと、実際とは違った形で認知することになります。
それが認知の歪み、すなわち認知バイアスになります。
コストを掛けても結果がマイナスならば、たとえ行動することでそのマイナスが小さくなるとしても、やらないでおこうという思考が働きやすいということなのです。
日本人は、社会的アイデンティティを重視する傾向が欧米人よりも強いです。
また、自尊感情を高めるために、自分の集団がよいものであるという「集団高揚」をおこないます。
日本人は「自分は何者か」という問題の答えを「どこの組織に所属しているか」ということに求める傾向が強いのです。
楽観バイアス(いいことは起き、悪いことは起きないと楽観視すること)から完全に逃れることはできない、ということは忘れないようにしなくてはなりません。
そもそも、楽観的に考えたほうが生き残りやすいという考え方は、間違いではありません。
何でも悲観的に考えたら、精神的な不調に至ることだってあり得ます。
とはいえ、とくに「人の命を預かっている方」は、楽観バイアスには注意する必要があります。
違う立場の人と判断してもらったり、アドバイスをもらったりすると、確証バイアス(自分の仮説にあった証拠が無意識に目につくことで、自説は客観的にも証明されていると感じること)はなくせずともストップを掛けてもらえるので、有効な対策になります。
今はリーダーとして活躍する方も、新入社員のころは「この会社、ここが変だな」と思ったことがあるかもしれません。
新人メンバーに少しでも戸惑いが見えたときは、会社のあり方を見直すチャンスです。
場合によっては新入社員と雑談するなどして、新鮮な目で見たときの違和感を思い出し、書き残すなりして、大事にしておくことをお勧めします。
このような対応が、同調バイアスの拡大を広げずに済む一助になるでしょう。
正しくない意思決定でも、よい結果になってしまうことはあります。
間違ったプロセスなのに、なぜか利益が出てしまうことはあります。
あるいは逆に、十分な意思決定をしたとしても、予想外にも結果が出ないこともあります。
そんなときに「別に手間暇を掛けて決定する必要なかった」と考えるのは、結果と過程を混同しています。
決定とプロセスは別物であり、プロセスも大事にしていきましょう。
貢献度の過大視は、自分がすごく貢献したという気持ちがあるときに、正確にどれくらい貢献したのかを数えてみることが対策に繋がります。
人間の感じ方をもとにした概念で事態を説明するのではなく、データから確率を計算して判断するべきなのです。
私たちの祖先は、サバンナ生活では永らく集団規範の中で生きてきました。
そのため、集団規範で許されていることは許されると判断します。
それを、社会規範に照らしていけないことだと判断するには、直感的判断を超えた理性的判断が求められます。
一人でもいいので、合理的な反対意見を言えるメンバーを会議に入れると、集団としての健全性が保たれます。
何が平均かを認識するには、ここで示したように統計の数字を持ってくるとよいでしょう。
信頼できる数字は何かについては気をつける必要がありますが、頭の中で何となく「平均はこれくらい」「普通はこれくらい」「自分は平均以上」という考えが本当かどうかが検証できます。
何かの活動や事業を始めるときには「なぜ自分がこの問題に取り組むのか」「自分は何のためにこの問題を解決するのか」と考えることになりますが、そのときにミッションから考える、つまり「自分に与えられた使命は何で、その使命との関連で言うと、この問題を解決することに貢献する必要がある」というふうに説明できると、首尾一貫した考え方を持てるようになります。
●問題解決5つのポイント
(1)分析単位を揃えよう
(2)慣習を特例扱いとしない
(3)「トンネルビジョン」を知る
(4)優先順位の認識が違っていた宝塚歌劇団
(5)最後までバイアスと戦う
都合の悪い数字や事実も、丁寧に追うことが大事です。
■【実践】3個の行動ポイント
【2123-1】些細なことでも、違和感を感じたら書き留めておく
【2123-2】自分の意見が明確なときほど、反対意見を言ってくれそうな人の話を聞く
【2123-3】自分の仕事や生活に関わる主な統計数字を把握しておく
■ひと言まとめ
※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作
■本日の書籍情報
【書籍名】リーダーのための【最新】認知バイアスの科学
【著者名】藤田政博
【出版社】秀和システム
【出版日】2024/4/20
【オススメ度】★★★★☆
【こんな時に】明日のリーダー力を磨きたいときに
【キーワード】心理学、問題解決、サイエンス
【頁 数】272ページ
【目 次】
第1章 なぜリーダーにバイアス対策が必要なのか?
第2章 実例から押さえておきたい重大(十大)バイアス
第3章 身近に潜む組織に悪影響な20のバイアス
第4章 意思決定を妨げる錯誤に要注意
第5章 バイアスや錯誤を把握して、ベターな問題解決を
▼さっそくこの本を読む
リーダーのための【最新】認知バイアスの科学
藤田政博 秀和システム 2024-4-20
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藤田政博さん、素敵な一冊をありがとうございました!
※当記事の無断転載・無断使用は固くお断りいたします。
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