【書評:2196冊目】「遅読」のすすめ(齋藤孝)

【読書とは知性の筋トレである!】
明治大学文学部教授・齋藤孝氏が、『「遅読」のすすめ』と題して、慌ただしい時代だからこそゆっくりと本を読んでほしいと説き、遅読の意義と効用、そして具体的な技術を解説する一冊。

■書籍の紹介文

本を読む速さ。
あなたはいつも、どんな速さで読んでいますか?

 

本書は、時間をかけてゆっくりと本が読めるようになるほど読書の質も教養も高まると提起し、遅読をすることの意義と効用、そして具体的な技術を解説する一冊。

 

著者が勧める「遅読」とは、単にスピードを落として読むことではありません。
一冊の本とじっくりと向き合い、気づきや心の変化を自分の内側へ沁み込ませるように読むことを指します。

 

スマホを手にしてからというもの、わたし達は情報をものすごい勢いで”消費”しています。
また、1クリックで情報を得られるため、あたかも物知りになったような”錯覚”に陥っています。

 

この”消費”と”錯覚”に脳が毒されてしまうと、本来持っているべき想像力や思考力、人間力が削がれる一方となる。
それでは、他者からの信頼の土台にもなる「自分の人格・教養」を磨けないと、著者は警鐘を鳴らしています。

 

「これからの時代はAIがあるから大丈夫だ」。
そんな声も聞こえてくるでしょう。

 

ですが、AIは所詮ツールに過ぎません(未来は分かりませんが)。
自分が望むような働きをAIに望むなら、きちんとAIに指示・命令をしなければいけません。

 

そのとき、想像力や思考力などの人間力が”差”を生みます。
ゆっくりとじっくりと本を読み込み、「自分の人格・教養」を磨き続けた人とそうでない人の”差”がハッキリと現れるわけです。

 

これは、筋トレとよく似ています。
キツい面倒臭いと鍛えていないと、いざというときに力を発揮できないのと同じです。

 

いざ知性や教養が必要となったときに、きちんと鍛えていないと発揮できません。
このとき、鍛えていなかったばかりに仕事上の成果を得られなかったと後悔しても遅いのです。

 

あなたが嘆き後悔することがないようにと、本書は書かれています。
筋トレ同様に、始めるのが早いほど得られる効果は大きくなることでしょう。

 

筋トレの種類がたくさんあるように、知性の筋トレにも種類はたくさんあります。
そのなかで、もっとも効果的に鍛えられるメニューとして、著者は「遅読」を推奨しています。

 

このことの意味を考えながら、解説を聞いてみてください。
「遅読」、とてもオススメです。

 

◆早く読むだけが読書じゃない!

「遅読」のすすめ
齋藤孝 SBクリエイティブ 2025-7-6
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■【要約】15個の抜粋ポイント

本を読むことを「自転車に乗ること」にたとえるなら、速度を変えるギアは、「速い(速読)」「普通(通常のペース)」「ゆっくり(遅読)」の3段階あると私は考えます。
そして、読む本に合わせて、ギアの速度をはっきりと使い分けています。

 

「遅読」とは、単に「読むのが遅い」とか「読むのに時間がかかる」ということではありません。
ページをめくる速度を少しゆるめて、そこに書かれた言葉や著者の息遣いに出会い直す、ゆるやかな旅のような読み方。
それが「遅読」です。
ゆっくりと読んでいくことで、作品の奥行きや重みに触れ、そこから自分の内面の奥底にある記憶や感情にまでたどり着いていきます。

 

遅読のコツをつかむためにおすすめなのは、古典、古文を読んでみることです。
たとえば、兼好法師の『徒然草』。

 

●遅読の効用
1.著者の思考の「型」、人格がしみ込んでくる
2.本の世界が体験として積み重なる
3.人生を支える言葉が見つかる
4.自分のペースで読める
5.学びと共に思考が深まる
6.「イメージ力」と「体験に引きつけて考える力」が磨かれる
7.自分だけの映画をつくることができる
8.存在しない世界を自由に旅できる
9.年月を重ねる中での自分の成長がわかる
10.読み直すことで作品のよさを「発掘」できる
11.AIを使いこなす「思考の粘り」が生まれる
12.ビジネスシーンで信用を得られる人物になれる

 

AIとの文字(テキスト)を使った対話では、結局のところ「読む力」「考える力」が問われます。
そう考えると、AIの活用でも、「読書の力」が土台となっているのです。

 

●遅読で使える7つの技術
①「ここで読む」場をつくる
②読む仲間をつくる
③SNSを記録に使う
④読んだことを「即アウトプット」で、自分のラインナップを増やす
⑤多色ボールペンは必須アイテム
⑥ドッグイヤーをつくる
⑦日付を入れる

 

自分のラインナップを増やすには、読んでわかったことや感心したことはすぐに人に話すといい。
自分の頭も整理できるし、引用の引き出しを増やして、活用することが大事です。

 

早くゴールにたどり着けばよいというものではない、そういう本の読み方もある。
それを体感するのが遅読だと思います。

 

言葉というものは、たとえ同じ内容であっても、読んだときの本人の状況によって、自分の中に入ってくる深さが変わってきます。
そこが読書の面白さでもあります。
表面的な意味をザッと洗いながら、波に乗ってスイスイと進むサーフィンのような読み方と、魚を突くための銛を持って、静かに深く海に入っていく潜水のような読み方があるとすれば、遅読は後者に当てはまります。
言葉を自分の中により深く入れていこうとする読み方が遅読の基本だといえます。

 

遅読には、全てのページをゆっくり読むだけではなく、「ここだ」と思った数十ページを、何度も繰り返し読むというやり方もあります。
この読み方と相性がよいのは実用書のたぐいです。
私は、まず全体をざっと読みます。
そして、「ここが肝だ」と感じた数10ページにしっかり線を引き、何度も何度も読みます。

 

●遅読に向いている本<入門編>
◎芭蕉全句集 現代語訳付き/松尾芭蕉
◎ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 おくのほそ道(全)/松尾芭蕉
◎おくのほそ道/松尾芭蕉
◎新訂 一茶俳句集/小林一茶
◎一茶句集 現代語訳付き/小林一茶
◎きまぐれロボット/星新一

 

●遅読に向いている本<遅読そのものを楽しむ編>
◎色を奏でる/志村ふくみ
◎一色一生/志村ふくみ
◎ゲド戦記(全6巻)/アーシュラ・K・ル=グヴィン
◎アラビアン・ナイト(別巻含む全19巻)/前嶋信次、池田修・訳
◎千一夜物語(全10巻)/佐藤正彰・訳
◎バートン版 千夜一夜物語(全11巻)/大葉正史・訳
◎クリスマスのフロスト/R・D・ウィングフィールド
◎そして誰もいなくなった/アガサ・クリスティー
◎オリエント急行の殺人/アガサ・クリスティー
◎江戸川乱歩全集(全30巻)/江戸川乱歩
◎須賀敦子全集(全8巻)/須賀敦子
(一部抜粋)

 

読書の時間を確保するとき、まずできるのは「時間を区切る」ことです。
たとえば「この時間からは読書モードに入る」とか「この時間帯はスマホをオフにして本だけに集中する」といったふうに、時間の枠を設定してしまうのです。

 

「遅読は散歩と同じ」とお話ししたとおり、気軽な気持ちで始めてよいのです。
「3時間以上読まないと読書じゃない」などと意気込むと、自分を必要以上に苦しくしてしまいます。
まずは軽く歩く感覚で、10分でも20分でも読んでみる。
そんなスモールステップの発想が大事です。

 

筋トレ系の決め台詞「筋肉は裏切らない」ではありませんが、毎日鍛えている人の足腰と、何もしていない人の足腰とでは、明らかに違ってきます。
鍛えていない人は急ブレーキでよろめくし、階段を上がるのにも息切れして耐えられません。
知性の足腰が脆弱だと、自分で価値や物事の判断ができず、間違った情報に流されやすくなるし、時間をかけて自分で考えることに我慢できなくなります。
つまり本を読むことは、知性を鍛えるための基本的なトレーニングなのです。
だから、読むのは少し面倒臭いのです。
しかし同時に、自分が鍛えられています。

 

■【実践】3個の行動ポイント

【2196-1】読書をするタイミングを決める(電車の移動中など)

【2196-2】読書を通じて「知ったこと」「心を動かされたこと」は積極的に人に話す

【2196-3】本書のブックガイドを参考に、目のとまった本をまずは1冊遅読してみる

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

■本日の書籍情報

【書籍名】「遅読」のすすめ
【著者名】齋藤孝
出版社SBクリエイティブ
【出版日】2025/7/6
オススメ度★★★★☆
こんな時に読む力を身につけたいときに
キーワード読書術教養思考
【頁 数】272ページ
【目 次】
序章 なぜ「遅読」が必要なのか
第1章 遅読とは何か
第2章 遅読をすると何が変わるのか
第3章 遅読の具体的な方法
第4章 遅読に向いている本とは
第5章 遅読力を鍛え、読書の質を高める

 

▼さっそくこの本を読む

「遅読」のすすめ
齋藤孝 SBクリエイティブ 2025-7-6
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齋藤孝さん、素敵な一冊をありがとうございました!

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