【書評:1343冊目】フェイクニュース(一田和樹)

【その情報、信じて大丈夫ですか?】
作家・一田和樹氏が、日本では「悪ふざけ」と捉えがちなフェイクニュースの真の姿を克明に解説する一冊。ネット上の世論操作は、もはや戦争兵器である現実に背筋が寒くなる。

■この本の紹介文

最近話題のフェイクニュース。
あなたは、どんなイメージをお持ちですか?

 

本書は、ネット上の世論操作は近年各国で新しい戦争のツールとして重要な役割を担っている状況を解説しながら、無防備な日本の現状に警鐘を鳴らす一冊。

 

アメリカ大統領選挙へのロシアの介入疑惑問題。
こちらに代表される”フェイクニュース”に関する話題を目にする機会が増えています。

 

世界各国では、フェイクニュースをつぎのように定義しています。
『ネット世論操作のひとつの方法と位置づけ、ネット世論操作を現代の戦争のツールのひとつ』と。

 

対して日本では、芸能人や経営者のSNS発信の”炎上”やあることないことを呟く”祭り”。
このように、一種の「悪ふざけ」としてのイメージが定着しているように感じます。

 

「戦争」と「悪ふざけ」。
この圧倒的な認識の齟齬に、サイバーセキュリティの専門家としての知見ももつ著者が警鐘を鳴らしている内容です。

 

つまり、”炎上”や”祭り”が起きるということは、フェイクニュースが蔓延する素地が日本にある証なのです。
すなわち、万が一、意図をもった勢力から仕掛けられたときに、国民を守る術がないのです。

 

フェイクニュースの脅威に対して、無防備な状態からどうやって脱するのか。
そのためには、まず現状を知り、何が起こっているかを理解することです。

 

理解を助けるのに必要な情報が、膨大なエビデンスにもとづき紹介されています。
日本の周りにある国は、フェイクニュースをすでに国家戦略として使いこなしています。

 

対応する法律1つすらない日本。
フェイクニュースに支配される時代が来る前に、まずは読みましょう。

 

◆操られないために・・・。

■本がわかる!15の要約ポイント

世界の戦争は軍事兵器を駆使するわかりやすいものから、総合的なハイブリッド戦に移行している。
ハイブリッド戦とは、軍事兵器だけではなく、国家のあらゆる活動を兵器化する戦争である。
経済、政治、宗教、文化、あらゆるものを兵器とし、相手国を支配し、操るために用いる。
宣戦布告もなく、多くの攻撃は通常の活動との区別もできない。

 

ハイブリッド戦においてSNS世論操作の重要度は増している。
その大きな理由としては匿名性が高く、戦闘のあらゆる局面で利用可能、成功した際には大きな打撃を与えられ、そしてコストとリスクが少ないことがあげられる。

 

すでに金融市場にターゲットを絞ったフェイクニュース企業が存在しているのだ。
政治と並んで金融はフェイクニュースの格好のターゲットになり得るので、今後も攻撃がなくなることはないだろう。

 

今のところ、SNS事業者による対策は事態の改善に役立っていないと考えられている。

 

事実が伝播するのは千人程度であるのに比べ、ウソは多いときは十万人まで拡散する。
拡散力において一〇〇倍、拡散速度は二〇倍である。

 

SNS企業はもはや政治や戦争と無縁ではいられない。
SNSそのものがすでに政治や戦争の中心にあるのだ。

 

世界四十八カ国でネット世論操作が進行中(2018年発表)

 

ゴシップ紙や陰謀論は情報操作を容易にする温床のひとつだ。
社会が健全でなければつけいられる隙も多いということだ。

 

フランスはEUの中でもロシアとの結びつきが、文化、経済、政治などさまざまな面で深く、その影響を受けやすい。

 

東南アジア各国は、アメリカなどの西側、中国、ロシア、近隣諸国、国内との微妙なバランスの上で政権を維持している。
ひとつの大国にべったり依存している国もなければ完全な独立路線をとっている国もない。
そしてほとんどの国は治安や政情に問題がある。
フェイクニュースやネット世論操作が拡がる素地があると言える。

 

長い軍政時代を終えて民主化したミャンマーを待っていたのはフェイスブックの悪魔だった。
(略)
ミャンマーで起きているのはネット世論操作ではなく、フェイクニュースの蔓延と暴走だ。
フェイスブックがもたらしたのは差別と民族浄化だ。

 

台湾には国内の政争でのネット世論操作と中国からのネット世論操作のふたつが存在する。

 

日本にはネット世論操作が狙う四つの脆弱性の全てがあり、悪化の傾向にある。
移民の増加、国内のボットやサイボーグやトロールの増加、北朝鮮や中国など周辺諸国との緊張関係、ゴシップや陰謀論の蔓延とメディア倫理の崩壊が起きている。

 

日本にはフェイクニュースとネット世論操作に対する政府組織がないのだから作るべきだ。
それをせずに資金力のある政権党が有利になるようにしている状況は是正されるべきだろう。

 

世界の多くの国で似非民主主義へのシフトが始まっている。
このまま社会や権威に忖度していると、どうなるかは東南アジアやロシアの状況を見れば一目瞭然だ。
日本はフェイクニュース大国となる条件を満たしている。
ネット世論操作で問われているのは我々自身が、このあとどのような道を選択するかである。

 

■これをやろう!3つの実践ポイント

【1343-1】正論のように拡散している情報に、反対意見をぶつけてみる

【1343-2】流れてきた情報ではなく、一次情報にアクセスする意識をもつ

【1343-3】政治・思想・宗教に関わる発信は極力行わない

 

■ひと言まとめ

※イラストは、イラストレーターの萩原まおさん作

 

■本日紹介した書籍情報

【書籍名】フェイクニュース
【著者名】一田和樹著者情報
出版社KADOKAWA
【出版日】2018/11/10
オススメ度★★☆☆☆
こんな時に教養を伸ばしたいときに
キーワード情報発信情報整理考える
【頁 数】272ページ
【目 次】
一章 フェイクニュースが引き起こした約十三兆円の暴落
二章 フェイクニュースとハイブリッド戦
三章 世界四十八カ国でネット世論操作が進行中
四章 アジアに拡がるネット世論操作 政権奪取からリンチまで
五章 日本におけるネット世論操作のエコシステム

 

この本が、あなたを変える!

 

一田和樹さん、素敵な一冊をありがとうございます\(^o^)/

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